涙目(導涙性流涙) | 島川はり灸院(院長ブログ)

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堺市ではり灸院を営んでいます。
各疾患別に治療例を紹介しています。
はり灸の話を中心に日記も書いていきます。

こんにちは。

ここ2,3日前から大阪、堺では秋風が吹きだし朝晩が少し涼しく

感じられます。

それに伴い体調管理が大切な時期であるとも言えます。

さて、今日は「導涙性流涙」といって通常、涙が何かしらの障害に

よって鼻の方に流れず目から溢れ出すといった疾患を紹介いた

します。

(患者) 女性、32歳、オペレイター、門真市在住。

(主訴) 導涙性流涙。

(症状) 毎朝、洗面所で歯を磨いている時に左目から涙が溢れ流れ

     落ちる。それ以外の時間帯は大丈夫との事。

(既往歴)

     3年位前に左側の顔面神経麻痺を患う。

     以来、左目から涙が溢れる状態が続いている。

     現在、お顔の歪みは気にならない位回復しているが重だる

     さが少し残っているとの事。

(愁訴) 腰痛、肩こり。

(初診) お顔の状態は左側の口角が右側に比べ少し下方へ弛緩

     していました。

     問診では涙以外の感覚器の異常は無いとの事。

(診断) 四診法を駆使した結果、肺、肝、腎に問題があると診て

     肺虚肝実熱症と診断いたしました。

(治療) 涙溢の原因の本丸と診られた肝熱を叩く事を目的に鍼を

     施しました。

     選穴は右復溜穴(腎経)、右陽池穴(三焦経)、右陽谷穴

     (小腸経)、左解けい穴(胃経)に補寫。

     術中、左右季肋部とお腹に診られた圧痛と抵抗が半減し、

     また、左腰部の痛みも7割方取れ肩こりも半減しました。

(3診目)治療開始から1週間経過。

      朝の涙の量が確実に少なくなってきているとの事。

(4診目)5日後に来院。

      日によって涙が溢れなくなる時が出だす。

(5診目)4日後に来院。

      朝の涙が全く出ない日が2日ほどあったとの事。

      涙の量も減り溢れることがない。

(10診目)治療開始から1ヶ月半が経過。

       この1週間の間、朝、涙が出ることは無く喜ばれていま

       した。

(11診目)2週間後に来院。

       この2週間、朝の左目からの涙が無かったので今回で

       治癒といたしました。

       脈状の方も9診目あたりから肝の血虚に変わっていま

       したので涙目の改善は時間の問題だと思っていました。

       また、左腰痛は完治し肩こりのほうも楽になられました。

(考察)  今回の疾患(涙目)は顔面神経麻痺からのものでした。

       そして、多くの顔面神経麻痺の治療で改善が見込める

       場合、お顔の歪み(弛緩)は比較的早く取れます。

       しかし、目(涙)、鼻(嗅覚)、口(味覚)といった感覚器に

       異常がある場合は改善されるまでに時間がかかります。

       または、予後がよくないケースがあります。

       ですので今回の患者さんには初めはお断りしました。

       お住まいが遠方だった事もあったので。

       しかし、うちの患者さんの紹介でもありとりあえず1回診て

       ほしいとの事だったので1ヶ月限定で引き受けました。

       1ヶ月の間に変化が無ければ治療を終える約束をもらいま

       した。 結果的に改善されてよかったです。

       病理的には肝の実熱が左目に影響していたと思われます。

       本来、体内では熱が何処かの部位で滞ると生理現象として

       水が熱のある部位に集中して冷まそうと働きかけます。

       ですので滞っている熱が捌かれないかぎりは涙溢の症状は

       無くなりません。

       膝が炎症を起こして水が溜まるのと同じ現象です。

       治療法としては補水寫火が功を奏した症例でした。

       

       おしまい。

 

       島川はり灸院

       http://www.shimakawa-harikyu.com/