膝痛⑥ | 島川はり灸院(院長ブログ)

島川はり灸院(院長ブログ)

堺市ではり灸院を営んでいます。
各疾患別に治療例を紹介しています。
はり灸の話を中心に日記も書いていきます。

こんにちは。

今日は私が多く診させてもらっている疾患の1つである膝痛

の症例を紹介いたします。

(患者) 男性、57歳、堺市。

(主訴) 左側の膝痛。

1ヶ月前から左膝に痛みが現れる。動作時痛で起き上がる時

や歩行時に激痛が走るらしい。

整骨院や整形外科で左膝の治療を受けられています。

(愁訴) 両側の耳鳴り、腰痛など。

(初診) 左足を引きずって来院されました。

左膝の患部の所見は発赤と熱感があり右膝と比べて腫脹が

目立っていました。 かなり痛そうであった。

問診で左膝を痛めた原因を聞きだそうとしたのですがこれと

いった外傷も無くはっきりとした原因が掴めませんでした。

(治療) 四診法の結果、肝の陰虚証と診断しました。

ギックリ腰など筋肉の負傷時によく見られます。

全身調整を施した後、左膝の患部の熱感が引いていなかった

ので患部の痛みの強い所に置鍼、その周りに寫的に散鍼を行

い1回目の治療を終えました。

(2診目) 前回の術後、階段の上り降りが少しスムースにでき

るようになり左膝の痛みも若干マシになっているとの事。

左膝の腫脹や熱感に変化は診られませんでした。

治療は左膝の熱感のある外周りと内外膝眼穴に知熱灸を施し

ました。 熱感が少し引きました。

(3診目) 腫脹が引き左膝の痛み半減する。歩行も少し楽。

熱感少しだけマシ。

(4診目) 歩行時の左膝の痛み7割方取れていましたので痛み

止めのお薬をストップしてもらいました。

そして、今回から患部に皮内鍼を施し様子を見る事にしました。

(5診目) 痛み止めのお薬を止めてからの左膝の状態は痛み

自体は前回と変わらないが左膝全体が重だるいらしい。

腫脹は完全に無くなり右膝と比べても遜色がなかったです。

しかし、熱感は未だに残っている状態。

(6診目) 左膝の重だるさは日に日に取れてきているとの事。

痛み止めのお薬を止めれて喜んでおられました。

しかし、左膝の熱感が引かない以上は本当の意味で改善され

ているとは言えません。

そこで、今まで湿邪に対処していたのを風邪と寒邪の対処に

切り替え治療を行ないました。

術中、左膝の熱感が引いていきました。

(7診目) 左膝の痛みはほぼ無く歩行もかなりスムースに行

えるようになったがまだ少し歩行がぎこちないとの事。

熱感は半減していました。

ただ、脈が風寒の陽実に変わっていました。

そこで一応「カゼの症状がありますか?」と問診しましたが「あ

りません」と言われ少し考えてから風寒で治療を施しました。

左膝の熱感無くなる。

(8診目) 前回の後、右側の耳鳴りが小さくなりそれが持続し

ているとの事。

歩行や左膝の痛みはほぼ負傷前の状態に改善されている。

今回も風寒で治療を行ないました。

術中、右側の耳鳴りが小さくなったり元に戻ったりと変化が見ら

れました。

そこで「左膝はほぼ完治していますが、もう少し治療を続けると

耳鳴りも取れるかもしれませんよ」と売り上げ協力を申し出たの

ですが「いえ、膝が治ったのでけっこうです」と断られました。

もう少しこの患者さんの病理状態の変化を見ときたかったのです

が致し方ありません。

(考察) 今回の症例は私の中で初めから何か引っかかる物があ

りました。負傷してから医療機関に通い左膝の腫れや熱感が1ヶ

月も引かない状態での肝の陰虚(筋肉の捻挫や挫傷)は考えにく

かったからです。

風寒の邪は熱や腫れを起こします。

治療経過は内の病(内風外寒)から外の病(風寒)に変化して治っ

ていったと言えるでしょう。

つまり、「病来た道帰る」。

これは大正から昭和初期にかけて活躍された鍼灸の大家故澤田健

氏の名言です。

症状が改善されるにつれ前の症状が出てきて治っていくと言う事です。

今回の患者さんのケースも同様で病の初期は風寒の邪が身体に中り

耳鳴りなどの陽実の症状を現していたのでしょう。

そして、陽実の状態が改善されずに病理状態が変化して内の病へと

移行してしまったのです。

ですから、今回の症例に限らず病は初めの状態の内に治しきらないと

いけません。

病が次ぎの段階に移行すればするほど完治までに時間がかかります。

また、予後がよくないです。

おしまい。

 

島川はり灸院

http://www.shimakawa-harikyu.com/