架空歴史座談会 その二・新選組最強の剣士は誰? 第三回 完結
出 席 沖田総司 新選組一番隊隊長(1842?~1875)
永倉新八 二番隊隊長(1839~1915)
斎藤 一 三番隊隊長(1844~1915)
司会:嶋 丈太郎
最強の剣士は?
司会 有数の戦闘集団として知られる新選組、入隊希望者は多いのですか?
沖田 多いです。いえ、この一年でずいぶん増えました。ところが、腕前の方
は、どうも(苦笑)。竹刀を持っただけで分かりますからね。
永倉 沖田君から見れば、誰でも未熟者だよ。
斎藤 いや、まんざら捨てたもんじゃない。文久から一貫して活動してきたから分かるんだが、
まだまだ人材はいます。燃えるような眼の侍、侍でなくても、闘志溢れる面魂の漢がね。
永倉 闘志があっても、腕前の方がないと困るよね。
斎藤 それは、隊内で鍛えれば良いんですよ。永倉さんが先頭になって。
永倉(苦笑)
斎藤 まだまだいるんですよ、強いのが。油断していられないよ。
沖田 天下は、流動的ですから、新選組の出番は多い筈ですよね(軽く咳)。
司会 お加減、如何ですか?
沖田 (手を振りながら)いや、すっかり良くなったんですよ。あっ!土方さんがお帰りだ。
(ややあって、「副長が巡察からお帰りです」)
永倉 あれが、さっきの「お忍び巡察」ね。
(廊下で隊士と土方の会話「お疲れさまでした」「今、帰った」などあり)
斎藤 入隊希望者が多ければ多いほど、素質のある人間も多いわけだから、内心、手合わせが
楽しみなんですよ。
永倉 一(はじめ)さんが舌を巻くようなのがいるのかい? そうは思えないがなあ。
斎藤 いるんですよ、ごく稀に、達者なのが。この間も、三本やって一本取られたことがあった。
沖田 本当?
永倉 一さんは、やさしいから。手加減して、入隊してから締め上げようと考えてるんじゃない。
斎藤(本気になって)そんな事ないですよ。
沖田 あのね、永倉さん、斎藤さん。私は、こう思うのですよ。誰が一番強いのか? というのは、
意味がないのではないのかって。
遡れば、芹澤さん、山南さん、服部(武雄)さん、藤堂さん・・・錚々たる剣士もいたでしょ。
(しんみりと)みんな亡くなりましたけど。もちろん、近藤先生、土方さん、永倉さん、斎藤さんなど、
現在でも、粒ぞろいではあるわけですが・・・。。
永倉 抜けてるよ、沖田君。君だ!
沖田 (照れて)いえ、いえ。ですから、強いのは、新選組なんだって。縁あって入隊して、磨きあって
強くなる、そんな集団なのでしょ。だから、誰が一番だ、二番だっていうのは、余り意味がないって。
斎藤(考えて)俺もそう思う。腕に自信はあって試衛館の食客になったけど、まあ、みんな強いんだ!
永倉(遠くを見る目で)あの頃が懐かしいなあ。俺はよく・・・
沖田(遮って)だからね、強いのは「新選組」なんだと。
司会 「新選組ブランド」ですね。
一同 えっ?
司会 いえ、(慌てて)組の名前を更に高めよう、ということですね。
斎藤 沖田君に同意します。
永倉 俺もだ。
沖田 有難うございます。では、一番強いのは新選組としましょう。
ところで、斎藤さん、永倉さん。近藤先生と副長、立ち会ったら、どっちが強いと思います?
斎藤(真剣に)道場でかい? それとも?
沖田(笑わずに)同じじゃないんですか?
永倉 まてまて、穏やかじゃないぞ、その話。
沖田 最近、街中で切り結ぶ回数も減っているし、第一、幹部が第一線で戦うなんて一年近く
ないですからね。
司会 道場では、どうです?
斎藤 土方さんの方が上だな、間違いなく。
永倉 近藤さん、まだ肩が治りきってないんだろ?
沖田 まあ、本当のことはおっしゃらないんですよ、強情だから(笑)。
斎藤 土方さん、道場では敵なしだよな。沖田君を除いては・・・。
沖田(むきになって)そんなことないですよ。
永倉(司会者に)あなた、沖田の三段突き、知ってるでしょ?
司会 ええ、拝見したことはありませんが。
永倉 あれは、凄いよ! 防げないんだ、俺も。
斎藤 確かに。あれを防ぐには、ちょっとした工夫がいるんだ。
永倉(興味津々で)どんな工夫だい、一さん? 教えてくれよ。
斎藤 今度ね。
司会 蒸し返しますが、最強の剣士は沖田総司、ということになりますが。
沖田 その話しは終わったんでしょ。(殺気を含んだ声で)怒りますよ!
(気まずい沈黙)
斎藤 まあ、まあ。(司会者に)あのね、剣を極めた人間はね、必ず得意な型があるんだ。
逆の言い方をすると、得意な型や、得意な技を持てないと、上達しないんですよ。
永倉 その通り!
斎藤 だから、沖田は突き、俺は抜き銅、新八さんは面打ち、局長も副長も、それぞれが
「この型になったら負けない」というのがあるんだよ。
司会 なるほど、なるほど。
沖田 新八さんの面打ち、二、三日は残るんですよね。痛みが。
永倉 総司、何を言う、俺の甘い打ち込みなんぞは、いつも簡単にかわしている癖に。
斎藤 まあ、新選組に入ろう・・・と考えるほどの者なら、剣の腕前は並じゃないから、
あらかたの新入隊士はね、自分の「型」や「技」は持っているんですよ。
沖田 新人の自信を木っ端微塵に砕くのは、だいたい斎藤さんの役目なんですよね(笑い)。
永倉 確かにそうだ。その通り。その中から素質のありそうな者を選んで、鍛えあげる、と。
沖田(機嫌を直して)そうすれば、より強い新選組が作れますよね。
司会 長い時間ありがとうございました。楽しいお話しを伺えました。
永倉 そうだ、今日の夜の巡察は二番隊なんだ。あんた、俺と一緒に行かないか? 俺の
そばにいて、どんな具合に市中見回りをしているのか見るといいよ。
沖田 そうしなさいよ。危険はないですよ、いざとなったら永倉さんが護ってくれますから(笑)。
司会 では、ぜひ、ご一緒に。本日は、長い時間お話しを伺えました。本当に有難うございました。
了
慶應五年(1869)一月十五日
京 不動堂村屯所にて
● 紫紺倶楽部と落語会のご案内
紫紺倶楽部は明治大学駿河台キャンパスの小~中教室で2007年から続けている
トークイベントです。「戦後の世相」「歴史」「ビジネス」そして「ことば」、この4つを
主要テーマにして進めています。このまま続けると、来年秋頃には200回に到達
できるのでは・・・などと考えています。
◎ 紫紺倶楽部のご案内
もうすぐ夏休みも終わります。来月から年末までのご案内を。
第194回 9月21日(日) 会場・リバティタワー7階
映画を語る120分 その8
ゲスト : 田中秀和さん (映画会社広報担当)
第195回 10月19日(日) 会場・リバティタワー7階
世界の中の日本 ~楽観主義で行こう~
ゲスト : 塚 本 弘さん (元ジェトロ副理事長) :
第196回 11月16日(日) 会場・リバティタワー9階
長嶋茂雄を語る
進行役 : 嶋 丈太郎 紫紺倶楽部主催者
長嶋茂雄さんの思い出を伺い、秘蔵の品(グッズや写真など)を
拝見する機会を作りたいと考え、開催します。主催者は長嶋さん・
巨人軍と多少の関わりがあった者として、当日エピソードをご披露
したいと思います。
なお、残念ながら謝礼のご用意はござぃません・遠方の方はメール・
手紙をお寄せいただければ、当日、会場で主催者が読み上げます。
ささやかな規模での催しですが、ご案内いたします。
下記までご連絡いただければ幸いです。
紫紺倶楽部および落語会のご予約・お問い合わせは
紫紺倶楽部 主催者
嶋 丈太郎 まで
shimajyo.oripro@nifty.com
携帯090-1702-5076