彼は、言葉を出せなかった。しばし沈黙の後、
「何とか言えよ!フザけんなよ」
物凄い剣幕で彼女は隆一を罵る。
「何とか言ってみろよ!!」
彼は、少しプチンとキレて、自分が伝えたいことを伝えることにした。
「あのなあ、俺だってなあ、困ってんだよ!ちょっとは考えてみろよ!世の中信じられない訳分からねーこといっぱいあるだろ?俺は結華が好きだけど、結華がすぐに怒って関係を切ろうとする癖をやめてほしいんだよ!もっとゆっくり落ち着いて話そうぜ、なあ?俺だって訳分からねーんだよ!」
逆ギレした彼に、少し動揺する彼女。さらに彼は言う。
「さっき、俺が言ったことは全部本当だよ!俺もとんでもない状況でテンパってんだよ!ここに俺たちの娘がいるけど、正直なあ、俺だって信じられねえわ!もう、電話してもケンカになるから、メールで話すぞ、いいな!!」
うわあっ…、彼女は彼の毅然とした男らしさに惚れ直すのだが、彼は電話を切ってしまった。
…そうよ!その本気の隆くんがイイの!好きなの!
すぐに電話をかけ直す。すぐに出る彼。
「もう、電話はしないって言っただろ?」
彼の冷たく激しい言葉に、結華は
「ねえ… 」
と甘い声で囁く。彼は、何だ?という感じである。彼女は続けて囁く。
「ねえ…、怒ってる時の隆くん、正直言って大好き。
やっぱり、別れるのやめようよ。ねっ」
カラスがカアカアと春の空を飛んでいった。
また、事態は突然好転し始めた。
少女は、よくわからないといった顔で、この口論を見守っている。

