N国・立花党首、名誉棄損容疑で逮捕 争われる真実相当性
口裏合わせの恐れ、ガーシー元議員想起で身柄拘束か
兵庫県知事のパワハラ騒動をめぐる内部告発文書にからみ、ことし2025年1月に自殺した竹内英明・元同県議(当時50)に対しての名誉毀損容疑で、県警は11月9日、N国党の立花孝志党首(58)を逮捕した。逮捕=身柄拘束をするには、証拠隠滅か、逃亡の恐れがあるとの裁判所の判断が必要。今回は、①立花党首が県警関係者か記者などから情報を得ていた場合に、その人物と口裏を合わせるのではないか(証拠隠滅)の恐れがある。②N国党のガーシー元議員が逮捕を逃れるため海外から帰国しなかった(逃亡)ことを想起させた、ことが考えられる。立花氏が直前にドバイ旅行をしたことも逃亡を連想させたのかもしれない。
死者への名誉棄損で「刑法」有罪ならおそらく戦後初
日本では、名誉棄損は「刑法」にも「民法」にも存在する。親告罪のため竹内氏の奥さんが刑事告訴し、6月に受理されていた。例えば、米国で言うと名誉棄損は「民法」のみに存在する。ことの善悪よりも、訴える側と訴えられた側の折り合いをつけることを目的とする「英米法」の思想が色濃く出ているように思う。それ以上に、政治的要素の強い案件が多いため国家権力(検察)が口をはさむべきではないとの考えがあるのだろう。ちなみに「大陸法」(独・仏系)は善悪を重んじる法体系とされる。つぎの章でも触れるが死者への名誉棄損で「刑法」の有罪判決が出ればおそらく戦後初となる。
歴史学者が「暴露」しても名誉毀損にならないわけ
生きている人と死んでしまった人とでは、「名誉棄損」の適応が違うことも大きな特徴。「名誉棄損」罪とは、故意にその人物の評価を下げることを目的とした行為を罰する法律だ。生きている人のことを「あの人は不倫しています」と触れ回った場合、不倫の事実があってもなくても「評価を故意に下げたのだから」要件は満足する。わざわざ「暴露」する必要もないとなるわけだ。これが歴史上の死んでしまった大物となると話は違ってくる。資料を漁っているうちに、例えば不倫の事実が出てきたとする。話の流れ上、不倫とするが、要は評価を貶める事実が出てきたとする。これを歴史学者が発表した場合、おそらくセーフだろう。学問として公共の利益になると考える人が多いからだ。
ただの捏造か、信じるに足る情報だったのかが争点
立花党首がSNSに投稿した、竹内氏は翌日逮捕される予定だったから自殺したんです、のような話は事実誤認で、立花党首本人も認めているから争われないようだ。だが、氏はこの情報をどこからどうやって入手したのかは大きな焦点だ。その時点で真実と信じるに足る情報だったのか(真実相当性)。一方で、自分で捏造したことも考えられるわけだが・・・。聞いた話を信じきってSNSで発信したのか、「ウソだろう」と思っていたが貶めるために格好のネタとなると思ったのか、こうした点も争点になりそうだ。