あわや大チョンボの関税交渉と両院総会で石破首相「嫌な予感」
全品15%加算なんて「聞いてないよ」の関税騒動
「全品15%関税上乗せ」か「15%以下は関税15%で、元々それ以上なら据え置き」か。米大統領令と日本政府の説明の食い違いに、もしや「石破外交の大チョンボか」と思いきや、米国の単純ミスでけりがついた。それも「石破おろし」が吹き荒れるであろう8月8日「自民党両院議員総会」の直前の騒動(8月7日発動)だった。参院選後の「議席確定臨時国会」(8月1日~5日)は、通例セレモニーだけで終わる筈が衆参予算委員会の集中審議つき。野党から日米関税交渉の内容が文書化されてないと詰めの甘さを指摘されていたが、その危惧が現実になってしまった、と一瞬思った。日本政府もわざわざ「藪をつついて蛇を出す」ことはないと口約束に留めたに違いない。まあ日本にしてみれば国勢を左右する一大事だが、米国からすれば約70の国・共同体と交渉しているわけで、その上ボスの言うことがコロコロ変わるので、事務方も振り回されたのだろう。8月7日まで戻って『遡及効』※となるそうだが、いつ大統領令を訂正してくれるか今のところ不明だ。
総裁選前倒しに方向づけした両院総会の才媛議長
一難去ってまた一難は石破首相。8日の「自民党両院議員総会」には衆参297人の内253人が出席した。旧盆の政治家は地元に帰って夏祭りでカラオケ大会に参加し顔を売りたいところだが、8割以上が自民党本部8階ホールに集結した。両院総会会長で議長を務めたのは参院・有村治子氏(54)。この人、国際基督教大学卒。米国でMBAを取得、マクドナルドの人事部にいた才媛。高市早苗氏が総裁選の出たときの推薦人にも名を連ねたが、現役アナウンサーが「声の質と仕切りの上手さは天下一品」と讃えるほどの司会上手。マスコミ非公開になった瞬間、惨敗原因の総論から「総裁選前倒し」の是非に議題を絞っていった。こうなると衆参議員と47都道府県連の過半数に達するか、自民党総裁選選挙管理委員会に意思確認してもらうしかない。
森山幹事長辞任へ 菅政権末期の役員人事を彷彿
いまいち盛り上がりに欠けたのは、参院選敗北の総括を8月下旬に出した段階で森山裕幹事長が辞任するので、森山氏に「おんぶにだっこ」できた石破首相はもたないだろうと誰もが思っているからだ。野党人脈に太いパイプを持ち、ほとんどの根回しをしてきた森山氏なしの石破政権はあり得ないとみているわけだ。『小泉進次郎幹事長』のマスコミ辞令もあったが、この泥船に乗るかは微妙。どのみち9月には党役員の1年の任期が切れるので、何人かリクルートしなくてはならない。さて党勢回復につながるような人材が入るかどうかだ。
かつての菅義偉政権末期。幹事長を萩生田光一氏(安倍派)に要請するも、派閥のトップの安倍晋三前総理からストップかかり不成立。結局、人事ができず、菅氏が総裁選不出馬を決めた記憶が生々しい。
粘るに粘った首相だが「石破包囲網」は確実に狭まりつつあるようだ。
※「遡及効(そきゅうこう)」 法律や契約が過去にさかのぼって適応されること。
一方、刑法では新しくできた法律で、当時適法だった行為を罰することは出来ない「刑罰不遡及の原則」などということばもある。