「商品券スキャンダル」石破首相で参院選突入したい野党の思惑
「国会修正」で予算成立へ 増額修正は憲政史上初
国会が混迷している。その①
まず「予算修正」がある。3月4日に衆院を通過した2025年度予算案だったが、参院に回ってから石破首相が「高額療養費」の限度額引き上げを断念した。その分、予算が膨らむ。衆院可決の予算を参院で変更する場合「国会修正」と「政府修正」、二通りの方法がある。「国会修正」は与野党協議を経て双方納得なら成立となる。ただし憲法86条が謳う【内閣の予算提出権(予算編成権)】【国会の予算決定権】の主旨を損なわない程度に限る、という制約がある。金額的には大して増えないので「国会修正」でいけそう。「国会修正」は過去4回あったが、すべて減額修正。今回、増額修正となると憲政史上初めて。
ちなみに「政府修正」は内閣が予算案を一から出し直すパターンだ。やたらと時間がかかる。
衆院で当初予算案に賛成した日本維新の会が与野党協議で一転反対に回ると、3月4日に衆院通過した最初の予算案(高額療養費の限度額引き上げあり)が4月2日に自然成立(衆院の優越)してしまう。日本維新の会は「石破商品券スキャンダル」と「高額療養費限度額据え置き」どちらに重きを置くか難しい判断を迫られる。
「内閣不信任案」提出はあるか 衆院選?新首相誕生?
国会が混迷している。その②
「内閣不信任案」を提出するか。石破商品券スキャンダルに関して衆院で野党が不信任案を提出する下地は十分。「内閣不信任案」動議はどの審議より優先される決まりがあるので、予算修正協議より先に採決が行われる。ここでもたもたすると、「高額療養費限度額引き上げ」を含む最初の予算が自然成立してしまう。もし不信任決議案が提出されれば、衆院は自公「少数与党」に対し多数野党なので、可決の可能性大だ。そうなると首相は10日以内に「衆院解散」か「内閣総辞職」を選ぶことになる。「解散」でいこうとすると、衆院は昨年10月に選挙をしたばかりで議員は半年で失職となるので嫌がる人が多いだろう。「内閣総辞職」となると国会で新しい首班指名が行われる。そこで石破首相より人気者が選ばれると、野党は夏の参院選がやりづらくなる。
朝日26%、毎日23% 危険水域だが絶望的でもなし
国会が混迷している。その③
「石破内閣支持率」の低下だ。自民党に好意的な数字が出るNHKの世論調査で31%。先週末には自民党に厳しいメディアで実施され、朝日新聞26 %(前月比-14%)、毎日新聞23%(-7%)の結果が出た。「危険水域」といわれる数字だが、「絶望的」というまでいっていない。かつて森喜朗首相のとき6%以下の「絶望的」数字が出たことがある。このとき小泉純一郎首相に交代して一転、支持率80%超になり参院選大勝。野党にしたら嫌な思い出だろう。
日本維新の会・吉村洋文共同代表は「石破首相の行為(商品券スキャンダルのこと)によって予算案の内容が変わるわけではないので、予算に対する態度は変わることはない」とコメント。与野党協議では再々修正予算案に賛成の構えだ。
不人気「石破自民党」で参院選突入を狙う野党。「商品券スキャンダル」で追い詰めすぎて辞任でもされたら、それも困るということだろう。
《衆院の優越》
より直近の民意を反映した「院」であることによる。衆院議員は任期4年だが「解散」があるので過去平均2年ちょいで選挙となる。参院は解散なしの任期6年(3年ごと半数改選)だから、衆院の方が選挙を通して現在進行形の「国民の意思」を映し出すとされている。衆院の優越は①予算②条約の批准③首班指名④法案審議(戻り3分の2で再可決)がある。とくに「予算」は衆院通過から30日で自然成立する。衆院可決の予算を参院で修正するのは極めて異例。
参院修正での予算を通すには「国会修正」と「政府修正」の2つの方法がある。憲法86条の主旨である「内閣の予算提出権(予算編成権)」「国会の予算決定権」に支障を与えない程度なら与野党協議で修正できる。これが「国会修正」である。他方、あまりにも大掛かりな修正の場合は「政府修正」として内閣が予算案を出し直すことになる。