カナダは米国51番目の州、パナマ運河返せ トランプ氏暴言【続編】
「現職受難の年」に始まった世界政治の右傾化
トランプ政権誕生まで1週間になった。今回もまたけっこう計算ずくと思われる「毒舌」についてである。就任は1月20日。
前提として、世界の政治の大きな潮流を見ておきたい。昨年2024年は全世界的に選挙イヤーだった。70を超える国と地域で国政選挙があり、「現職受難の年」とキャッチコピーがつく結果となっている。既得権益を継承する現職政治家に対する不満が一挙に爆発した。大衆の持つ不満の矛先が向かったのが「移民」だった。SNSの盛り上がりもあって批判は先鋭化し、投票先としては極右政党に向かった。
トルドー首相退任 選挙に負け、暴言を浴びて
これが世界政治のトレンドのようだ。カナダ現職トルドー首相も退任の方向だ。選挙に負けて困っていたところに、トランプ氏から25%の関税をかけると脅され「アメリカの51番目の州」になれと小馬鹿にされたからたまらない。もう辞めるしかなくなった。このニュースを聞いたとき、先輩記者から「アメリカがくしゃみすると日本は風邪をひく」「日本はアメリカの51番目の州」と日本政府の米国追随を皮肉る「婉曲表現」のようなものを教わったことがあった。あら51番目の指定席がカナダに取られる、変な寂しさを感じた。
パナマ運河「閘門式」は莫大な米国の投資で作られた
つぎはパナマ運河返せ、である。脱線するが世界3大運河をご存じだろうか。①スエズ運河(1869開通)エジプト、地中海⇔紅海、水平式②パナマ運河(1914開通)パナマ、太平洋⇔カリブ海、閘門式③キール運河(1895開通)ドイツ、北海⇔バルト海、閘門式。なのだそうだ。世界の「3大○○」はいい加減の極みで、何を根拠にしたのかわからないものが多いのだが。
ここで言いたのは開通に当たって米国が莫大な資金を投入しながら、反米運動にあってパナマに運営権を渡してしまったということだ。「閘門(こうもん)」は難しい漢字が使われているが、「水位が調整できる水門」を意味する。つまり船に山越えさせることができる運河なのだ。ダムを何個も並べて作り、最初のダムに船を入れて海水を注入。浮かび上がったら2番目のダムに船を移す。この繰り返しだ。聞いただけでカネがかかりそうな施設だとおわかりいただけると思う。一方の「水平式」は陸をほじくり返して海と海をつなげるだけである。
付近の5港のうち香港資本2 トランプ氏の危機感滲む
穀物、石油などの資源、機械、繊維商品など海運が中心で圧倒的にコストが低い。空路、陸路は小量しか運べず割高になる。米国は東海岸と西海岸、海際に大きな都市があるので大量に商品を運ぼうとしたら船便でとなる。南アメリカ大陸南端のホーン岬回りが嫌ならパナマ運河を使うしかないわけだ。パナマ運河の利用者は80%が米国。2位は中国で15%くらい。まず「通行料が高い」ことが気に入らないトランプ氏。それと、運河に入る前に港に寄港するのが船の常識らしいが、パナマ運河付近の港5か所のうち2か所が香港資本で中国の影がチラホラしている。
中国に取られたらそれこそ「覆水盆に返らず」とトランプ氏は思ったようだ。