どうなるホンダ・日産経営統合 2026年8月持ち株会社設立へ
ホンダの日産救済劇に見えるが買収の形は取らず
ホンダと日産自動車は12月23日、経営統合の協議に入ると正式に発表した。2026年8月の持ち株会社設立を目指す。経営不振からホンダと組むのではないかと噂の絶えなかった日産だったがついに発表となった。アナリストによれば自力だけで経営を立て直すのは無理だという。株式市場関係者には「ホンダの日産救済劇」に見えたようで、助けてもらった形の日産株が買われ、ホンダ株が下げた。主導権はホンダが握るようで、取締役の数などに差をつける。販売台数世界3位の規模となる。ただ、企業の合併劇は傍目からみるほど単純ではなく、人間味溢れる愛憎劇が出てくるため、破談の可能性は十分ある。
「国家的」「スケールメリット」産業と言われる由縁
『自動車』は「国家規模」「スケールメリット」の産業と言われる。
そもそも自動車は1台3万点程の部品を使うそうだ。ひとつの部品を3社に分けて発注すると考えても9万社の下請け部品メーカーが存在することになる。
自動車を持っていなくてもバスやタクシーは利用するし、トラックで運ばれてきた品物をコンビニで買い、通販では軽のワンボックスワゴンが段ボール箱を運んでくる。国民的産業なのだ。
スケールメリットとは「規模拡大が有利に働くこと」をいう。自動車会社で言えば、100億円かけて開発した技術を1万台の新車に搭載するだけか、10万台に使うのか、と考えるだけでご理解いただけると思う。
台湾の鴻海(ホンハイ)工業がTOBに出る可能性
年末迫っての発表劇となったのには台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業の影がチラつく。「シャープ」につづいて、「日産」買収に動く可能性大とされてきた。ホンダ・日産のトップは「根も葉もない噂」と一蹴しているが、業界では公然の秘密となっている。記者会見が開かれてしまっては、鴻海側は水面下の交渉を諦め、正面切ってTOBをかけるしかなくなった。もし鴻海が高値で日産株を買い取ると宣言した場合、現在の日産経営陣は「ホンダと経営統合した方が将来的にお得ですよ」と株主に数字をあげて説明する必要が出てくる。それに経産省が「経済安全保障」の観点から口を出す可能性もある。USスチールの自動車版である。
世界的EV離れの潮流 中国、欧州、米国で顕著
世界的な「EV離れ」の潮流も見逃せない。中国はEV補助金を打ち切ったし、ヨーロッパではEVの技術的難題を解決するのは無理と諦めたメーカーもある。そして米国でのトランプ大統領誕生である。化石燃料大好きの為政者が来年1月20日から登場するのだ。
持ち株会社設立 ディーラーで両社の車が買える
今回の統合協議ではホンダが日産を一方的に買収する方式をとらない。「持ち株会社」を作り、ホンダ・日産が事業会社としてぶら下がる形だ。まあ三菱自動車もくっつく可能性もあるが。こうした場合、ブランド名は残ることが多い。ディーラーではホンダの車も日産の自動車も買えることになるだろう。それにしても今回の統合劇、助けを求めるしかない日産と、二輪でしか儲からないホンダの消極的選択と診る人もいる。もし統合が実現しても「ダイムラー」と「ベンツ」、「日産」と「ルノー」のような成田離婚、熟年離婚も考えられる。