いまさら聞けない「103万円の壁」 手引書を読む前の基礎知識

 

世間では「103万円の壁」で騒いでいるがイマイチよくわからない

やたら「壁」の種類があるので整理する。解説記事では少ないもので6種類の「壁」があるようだが、ここは4つに絞る。詳しくは税の手引書を読んでいただくとして、今回はイメージを優先する。極端に簡略化しているのでマニュアルとしては不適切であることをお断りしておく。

「103万円の壁」「所得税」「控除額」の関係性の話。このblogの中心テーマとなる。

一方、ややこしいが「税額」と「社会保障負担」は「所得額」を基準にしている点では同じだが、直接の相関相手ではない。ただ家計の財布に響くことには変わりないので「所得額」と「社会保険加入義務」=「130万円の壁」にも少し触れてみたい。どの道、近いうちに議論になる筈だ。

 

税の発生の壁  103万円(誰でもこれ以上所得があるとかかる)

 

控除喪失の壁  103万円(大学生を扶養) 150万円(配偶者を扶養) 

 

社会保険(健康・年金)強制加入の壁    130万円(自分で保険料を払う)

 

それぞれの所得が「壁」以下だと、稼ぎ頭の税金が「控除」で安くなる、扶養されている側が社会保険料をかける必要がない、のメリットがある。家族単位で考えると「助かる」点で同じ。

 

法的扶養の定義(一般的には経済的に養っている親族のこと)

       税 ⇒家族は「扶養」だが、配偶者は「配偶者」という特別のカテゴリー(ここが配偶者のパート大学生アルバイトの決定的な違いとなる)。  

      社会保険⇒配偶者も家族も「扶養」で統一 ただ厚生年金では配偶者にだけ「第3号被保険者」があり、扱いに差がある。※自営業者、学生の国民年金、国民健康保険加入者は別制度

        

扶養家族    〇給与所得者に「配偶者控除」(配偶者)「特別扶養親族控除」(大学生)などの非課税枠が与えられる

                        〇給与所得者が加入している社会保険の組合が発行した家族用の健康保険証が使える(健康保険の相乗り)

        〇配偶者が厚生年金保険料を払っていると「第3号被保険者」として自分も保険料を払ったことになる

        (厚生年金の相乗り)

            

稼ぎ頭が働くと・・・

103万円の壁は、非課税枠を「超える」「超えない」の境界線となる。ここではサラリーマンと言っておくが、給与所得には「基礎控除」48万円「給与所得控除」55万円があるので扶養家族がいなくてもここまでは非課税(103万円の壁)。これを超えた分に税金がかかるわけだが最低税率は5%からだから大したダメージではないだろう。自分の稼いだ給与に課税されるイメージである。

 

扶養家族が働くと・・・

さて、扶養家族が稼いだ場合だ。103万円以上になると本人にも課税されるがそれは高が知れていて、稼ぎ頭の控除額への影響が大問題なのである。

 

配偶者が働きだした場合所得を150万円以内(配偶者の場合は103万円でないことに注意)に収めれば、稼ぎ頭のサラリーマンに38万円の「配偶者控除」が与えられる。配偶者がこれ以上稼いでも「超えた分だけ」にかかる税を自分で払うことに。

大学生がアルバイトした場合親であるサラリーマンの控除境界線は103万円のまま。通常の「扶養控除」(配偶者控除と同額)38万円に、大学生の場合プラス「特別扶養親族控除」25万円があり計63万円の控除が受けられる。しかし大学生のアルバイト料が103万円を1円でも超えると「扶養」からはずれ控除0円となる。つまり、いきなり63万円分がに課税されるわけだ。

税金や社会保険は「配偶者」をとくに優遇するようにできていることがわかる。

 

総選挙で大学生が国民民主党に投票したわけ

これで10月27日の総選挙で大学生の投票率が高く、「103万円の壁」撤廃を謳った国民民主党が議席を伸ばした理由がおわかりいただけただろうか。この課税最低限枠(控除最高額)103万円は1995年以降られていない。これ以前は物価スライド制で毎年調整していたのだが、日本がデフレ基調になったのでサボっていたわけだ。ところが最近の物価高だ。国民民主党は最低賃金の伸びを計算根拠にしていて178万円の数字を出している。累進課税方式をとっている所得税制システムで昨今のインフレは制度設計上、致命的といえる。

 

首長悲鳴!「物価スライド制」30年間サボったツケ

「租税法定主義」の国なので、国会にどんな法律案が出てくるか注目だ。現実には「減税政策」となる「控除額」引き上げであるが、最初に地方の首長から悲鳴が上がった。地方自治体でも連動して歳入が減るので予算編成が大変になるからだ。毎年見直していれば誰も騒がなかったのに、約30年分一気に精算するとなると大事(おおごと)である。この先、社会保険強制加入の「130万の壁」についてはさらに難航が予想される。