「もしトラ」から「またトラ」 米大統領選に学ぶメディアリテラシー
最高齢トランプ氏当選、初の女性大統領はお預け
「もしトラ」が「またトラ」になった。現地時間11月5日に行なわれた米国大統領選挙は共和党のドナルド・トランプ氏が勝利した。戦った民主党のカマラ・ハリス現職副大統領は翌夕、敗北宣言。意外とすんなり決着がついた。ただ日本の開票スピードに慣れていると「なにモタモタやっているんだ」と苛立ちを感じた方も多かったのでは。
トランプ氏の就任時78歳7カ月は最高齢記録。「出戻り」じゃなく「返り咲き」は2人目だそうだ。1期やっているので任期は4年のみとなる。「女に任せられるか」ジェンダーのガラスの天井はまだ米国でも存在するということか。
メディアがハリス民主党応援団になった理由
予想では接戦が伝えられたが、トランプ氏は全選挙人538の過半数(270)を獲りあっさり勝負あり。圧勝だった。予備選中、米国でも日本でも、メディアが圧倒的なハリス贔屓なのが見て取れた。トランプ氏寄りは「FOXテレビ」だけで、氏が他局のテレビ討論を逃げ回ったのは「罠」にかかるのを恐れたからだろう。メディアの原点が「権力の監視」にあったことからも、リベラルを好む傾向がある。日本でも地上波テレビの解説者(おもに大学教授)はハリス氏応援団のようだった。私も記者をしていたがリベラルのふりをしていないと出世もままならない雰囲気があった。メディアは少し反省して現実を見なければならないのかもしれない。
米国メディアのオーナーは実は「右寄り」の説
もう少しメディアの話をしよう。「ワシントンポスト」は、日本で言えば「朝日新聞」に当たるリベラルのご本尊的存在。ウォーターゲート事件を報じてニクソン大統領を退任に追い込んだクオリティ・ペパーだが、実質的なオーナーはAmazonの創業者ジョフ・ベソス氏。紙面はリベラルだがどこまで本心か疑わしいところだ。
正々堂々とトランプ氏を応援したのが電気自動車「テスラ」の創業者で「Twitter」を買収したイーロン・マスク氏。いまは「X」で「ポストする」というようだが。化石エネルギー復権を叫ぶトランプ氏に手心をお願いするためか。政治に色気があって「猟官運動」に出たとみる向きもある。一方で、マスク氏の家族にLGBTの人がいて、この問題に寛容な民主党を忌み嫌っているとのヘンな説もあるのだが。
とにかく経営者・資本家にとって、法人税を安くするのが「いい政治家」であることは間違いない。
日刊新聞紙法、軽減税率適応で自由なき日本の新聞
余談だが、日本の新聞社は明治時代にできた法律「日刊新聞紙法」の下に置かれているので、資本の移転や譲渡が厳しく制限されている。乗っ取られる心配もないが、これだけ部数が落ち込んでも競争原理が働かないため経営が合理化されないマイナス面もある。その上、消費税導入の際、政府に泣きついて軽減税率を適応してもらったことから、日本の新聞は「毒饅頭」を食べたとも言われている。まあ、どこの国のメディアもフリーハンドでモノが言えることはあり得ないが。
伝統的イデオロギー、スポンサーからの圧力、コンプライアンス。このバイアスを理解した上で、「メディアリテラシー」が必要のようだ。