不記載候補、原則公認から「一部非公認」転換 総選挙直前なにが

 

朝日新聞で言えば、10月4日朝刊「裏金議員を原則公認へ」から7日朝刊「裏金議員一部は非公認」と打ち換えた。1面トップの記事である。一見「誤報」レベルの方向転換だが、容認を意図する自民党に、国民の怒りを喚起する狙いもあったように見える。実際、朝日のシナリオ通りに世の中は動いた。

 

電通、旧「九連」調査で自公過半数割れ 焦った石破執行部

この豹変、実のところ自民党が密かに行なった選挙区情勢調査で自民・公明両党を足しても過半数割れの予測が出たからだという。過半数割れなら石破首相即退陣となるだろう。特別国会の首班指名までもたどり着けない。自民党の調査は、テレビ・新聞の世論調査よりもよく当たることで知られている。実務的には、かつて電通で「第九連絡局」(通称=きゅーれん)と言うところがこの任に当たっていた。いまは部署名こそなくなったが、同じことをしているセクションがある筈だ。この特徴は、安定選挙区は無視、激戦区だけ猛烈緻密に調べる。余計なところにカネをかけない作戦をとる。全国万遍なく調べないと記事にならない全国紙とはもともとの発想が違うわけだ。

 

宣伝効果を数字で出す統計学 電通の強さの秘密はここ

なぜ電通なのか。そもそも広告代理店と言うところは世論調査と統計分析の牙城なのだ。組織的にはCM、看板、ポスター、キャンペーンなどを企画・制作するクリエイター部門と、スポンサーを見つけてくる営業部門が花形とされる。この両者の段取りをつける業務部門もあるが、こちらは地味な存在だ。一般企業の宣伝部からすると、この広告(宣伝費)を出したら、このくらい売り上げが伸びるという数字が欲しい。そうでないと経営会議で通らないからだ。こういった商品にはこんな宣伝をするとコストパフォーマンスがいいですよ、などと言うこともあるだろう。ただ、広告効果の予測・数値化は素人では不可能とされ、広告代理店に丸投げの企業も多い。こうした分析ノウハウを選挙予測に応用するのだ。

ここで注目されるのが「統計学」である。統計学では「ゴミを入れるとゴミが出てくる」の格言がある。いいサンプルを使って適切な質問をしないと結果を間違える。コスト的には必要にして最低限度のサンプル数で納めることも大切だ。

 

ビデオ・リサーチ社は最低数サンプル調査で高精度の視聴率

電通の100%子会社で「ビデオ・リサーチ」という会社がある。テレビ視聴率(ラジオの聴取率も)を調べる専門の会社だが、そのサンプル数は我々が想像しているより遥に少ない。それが「1を聞いて10を知る」統計学の魅力なのだ。ここは統計学専攻の優秀な学生をリクルートすることでも知られている。

 

激戦東京7区はテレビ局集中の港区 取材の草狩場か

広告代理店は新聞社と比べれば「イデオロギー性」は無視できるほど低い。だからここの世論調査は余計信頼度が増す。石破政権が180度といっていい方向転換をしたのは、大手広告代理店のアドバイスもあったのだろう。

中でも東京7区には参議院から鞍替えした、元テレビ朝日アナウンサーの大物女性候補が立候補している。東京7区には港区が含まれる。港区はテレビ東京キー局5社中、4社がひしめいている。近場であり取材費のかからない激戦区で、おまけに、この女性候補「テレビ映り」いい。今回の総選挙の注目選挙区ともなりそうが、調査によると楽勝と言うわけにはいかないらしい。