旧優生保護法は違憲立法で人権侵害!なぜ半世紀放置されたか

 

最高裁大法廷、画期的判決。免責時効20年の壁も破る

旧優生保護法(1948~1996)は、法案可決自体が「違憲立法」であり、遺伝疾患者等への不妊手術の強制は《自己意思決定権》(憲法13条)、《法の下の平等》(憲法14条)にも反しているとして、最高裁大法廷(裁判長=戸田三郎長官)は、7月3日、国に賠償を命じた。免責時効20年とされてきた、この手の案件の判例を覆して、原告の請求権は存続しているとした。画期的な判決となった。

 

ダーウィン「自然淘汰」理論、欧米植民地主義を正当化

素人目からすると、あまりにも理不尽である、こんな法律が約半世紀に渡って存在したこと自体に驚かざるを得ない。元をただせば「優生学」に行き着く。これがヨーロッパの白人による植民地支配を正当化する根本思想であったことは、容易に想像がつく。ナチス政権のヒトラーによって先鋭化し、米国に渡って「断種法」として定着した。19世紀、ダーウィンによって書かれた『種の起源』における「自然淘汰」の法則は、この思想を科学的に証明する格好の材料とされた。

 

戦後人口爆発、食糧危機の予感が政府にあったか

欧米のマネをしたがる日本、終戦間もなく議員立法で「優生保護法」は成立している。終戦の旧日本兵の引揚で人口爆発が起こった頃で、政府の危機感は半端でなかったことだろう。「食糧危機」の予感は十分あった。当時はマルサス『人口論』がベストセラー。《食糧は倍数でしか増えないが、ヒトは乗数(幾何学的)で増える》。だから食糧危機は必ず来るというやつだ。経済学を専攻した学生には「人口論」は必修単位であったような気がする。そのくらい深刻に考えられていたのだ。いま「少子化対策担当大臣」がいるくらいだから、先進国では当てはまらないが、地球規模でみると食糧は足りなくなる方向のようだ。食糧は限られた〈優秀〉な人間に与えられるべきと思ったのではないか。

 

避妊・堕胎手術の合法化、結果的に母性保護に?

この法律が長く存続してしまったもうひとつが、「避妊手術」「堕胎手術」の合法化(医師の判断による)が、結果的に母性の保護につながったとことだと思う。それまでの非合法下、アンダーグラウンドの闇業者による堕胎で命を落とした女性がいかに多かったことか。強制避妊手術と母体保護堕胎手術がセットで「合法」のステージにあがったともいえるのだ。

大きな人権侵害に気づいた政府は1996年、強制避妊手術条項を削除、堕胎手術に「経済的理由」も認めるという方向転換を行なっている。

 

被害者高齢化、特定と通達で政府の本気度をみる

ただ、被害者が高齢化していること、内緒で結婚されている方も多くおられるのではないと想像でき、国家賠償が急がれるべきは当たり前と思う。だが、その方の特定、連絡の仕方など、国に課せられた難問は多い。