「半導体って何?」これだけ知っていればドヤ顔できます【原理編】

 

IT社会のコメ 株式市場をひっぱる半導体市場

今回はちょっと毛色を変えて現代用語の基礎知識である。「IT社会のコメ」とわれる『半導体』を考える。現在、株式市場を引っ張っているのが半導体銘柄という事実もあってのことだ。

 

「導体」「絶縁体」そして「半導体」、まず素材から

半導体という言葉について。電気を通す『導体』、これはおもに金属である。電気を通さない『絶縁体』、これはゴムやガラスなどがあげられる。これに対して電気を通したり、通さなかったりするのが『半導体』である。この性質を持つ物にシリコンやゲルマニウムがある。通す・通さないは、刺激というか条件に依る。例えば、温度、圧力、不純物の混入などが刺激にあたる

 

電気「通す」1,「通さない」0。演算機の2進法に応用

この電気信号の「通す」「通さない」を人為的にできないかと考えた研究者がいた。それというのもコンピューターの情報処理は2進法によって行われるからだ。「0」か「1」の組み合わせで、すべての言語、計算(演算)が処理されている。「通した場合」を1、「通さない場合」を0、の信号とする。例えばキーボードで入力した電気信号を、ものすごい速さでスイッチングして、瞬時に0と1の組み合わせで表現してくれたら、コンピューターの性能は飛躍的に向上するだろう。このスイッチング装置が「半導体」である。ちょっと注意が必要なのは、「素材」のことも、「装置」のことも『半導体』という言い方をすることだ。

 

莫大な設備投資が必要な半導体工場 その原理は

多くの半導体はシリコンを素材としている。米国の半導体のメッカ(聖地)が「シリコンバレー」といわれる由縁である。純度を高めたシリコンをボンレスハム状にしてスライスする。これがシリコンウエハーである。これに酸化被膜をつけ、感光材を塗る。3層構造になるわけだ。

回路図のフィルムを間において、ものすごく強い光をあてると、回路図の形で、上の2層が溶ける。回路となる細い溝状のスジにイオンを塗りつける。これが電気の通り道になる。この強い光を当てるのが「露光機」といって150億円くらいする。半導体部門が「金食い虫」と企業で嫌われてきたのは、この装置のおかげである。イメージ的には、子供の頃、太陽光を虫眼鏡で集めて黒い紙を焼いた感じか。これを人為的に起こさせる装置である。印刷に詳しい方なら「刷版」をつくる工程に似ていると言えばわかるかもしれない。

 

2ナノ・メートルのせめぎ合い、遅れる日本企業

現在、このスジの細さが「2ナノ・メートル」で進歩してきている。ナノ・メートルは10億分の1メートルである。昨年できた日の丸半導体会社「ラピダス」の北海道工場はこのレベルを目標にしているそうだ。熊本に工場ができて注目を集める台湾の「TSMC」はすでにクリアしているのだが。ミゾが細い方が小型化できるので、大量に組み合わせてもスペースをとらない道理である。

 

分業化進む 工場を持つ、持たないは企業戦略

原理的には以上だが、実際の半導体商品になるまでは、分業化が進んでいる。話題の米国「NVIDIA」(エヌビデア)は企画・設計しかしない。生産工場を持たない「ファブレス」という業態である。一方、TSMCは企画・設計図をもらって受注生産だけを行なう「ファウンダリ」(英語では鋳造所の意味)という業態。TSMCのモーリス・チャン社長は「ノーブランドであること」を社是としている。安全保障戦略でいくと、なかなかの策略家とみることもできる。

 

国際政治や安全保障の主役になりつつある半導体の今後については機会があったらお話ししたい。