土曜国会で24年度予算成立 「予算審議80時間ルール」で与野党の駆け引き

 

112兆円の大型規模、自然成立に持って行った与党の執念

2024年度予算案は3月2日(土)、衆院本会議に緊急上程され自公両党の賛成多数で可決された。憲法の規定で参院送付から30日で自然成立するため、23年度中(3月31まで)の成立が確定した。予算案は112兆5717億円で、昨年を下回ったものの110兆円規模となった。

金曜の国会が長引き日付が変わって土曜日という例は見たことがあるが、端から土曜日の真っ昼間スタート。こんな国会審議は初めてだ。「予算審議80時間ルール」と言うのが暗黙の了解だから、2月29日時点で69時間じゃ、野党も引くに引けなかったということなのだろう。与党の方も北陸地震を人質にとったようなものだったのだが。

 

30日ルールの数え方 参院は何のためにあるのか?

憲法60条の予算における衆院の優越だが、「30日」をどう数えるかと言うと、衆院可決の当日を1日目とする。今回は3月2日可決だから、土日ももちろん数えて、3月31日でぴったり30日目となる。どうにかして、土曜日、休日出勤してでも決めたかった理由がそこにあるわけだ。これで暫定予算を組む手間が省ける。

いくら遅れても参院があっさり可決してくれれば年度内楽勝なのだが、参院での野党の意地もあるから、そうはいかない。年度内成立には「3・2衆院決着」が絶対条件だったわけだ。

まあ参院も3月31日前には本会議採決をするはずだ。自然成立はまずい。そうしないと「参院不要論」が巻き起こるからだ。

 

閣議決定でほぼ決まり 予算の意味するところは

今回の予算案、23年12月22日に閣議決定されていた。私の知る限り、閣議決定された予算金額が1円たりとも国会審議によって動いた試しはない。そのくらい内閣の予算編成権というのは絶対権力なのだ。だから何かの「試み」に予算がついたとなると、国のお墨付きが出たという意味になる。1回予算がつくと、めったに絶ち切れになることはない。

 

予算の取り合いは口座開設を願う営業マンと同じ

これで思い出したことがある。私の勤務していた出版社には、毎日多くの製紙会社、印刷会社、製本会社などから営業マンが来ていた。どうにか伝手を辿ってきた新規参入組もあった。彼らが口にするのは「1000円の仕事でも御の字です」。それじゃ商売にならんでしょと最初思っていたが、かれらの狙いは小さな取引でも経理のパソコンに振込先として登録されることにあった。口座開設は必須で、これでグッと営業がかけやすくなり大口取引に繋がるというのだ。突破口と言うものはそういうものらしい。

 

誰も表立っては言わないが「24年度予算」は、政府・財務省辺りではすでに過去の話となっている。議論は25年度に向けての「骨太の方針」に向いているようだ。

 

【参考】

憲法第60条

予算は、さきに衆議院に提出しなければならない。

2 予算について、参議院と衆議院が異なった決議をした場合に、法律の定めるところにより、両議院の協議会を開いても意見が一致しないとき、又は参議院が、衆議院の可決した予算を受け取った後、国会休会中の期間を除いて三十日以内に、決議しないときは、衆議院の議決を国会の議決とする。

 

衆院の優越

○法案の議決(参院否決でも戻して3分の2で再可決)

○予算の先議と承認(通過30日自然成立)

○条約の批准(参院認めずともOK)

○内閣総理大臣の指名