裏金還流事件は年末に動くか? 鍵を握る「検察」ってどんなとこ

 

最初の勢いはどこに、安倍派5人衆は安泰の雰囲気

大山鳴動して鼠一匹、となるのか。例の自民党・安倍派の裏金還流事件である。安倍派5人衆に司直の手が伸びるのは必至と思っていたが、地元でしか知名度がないような議員の事務所に強制捜査が入っただけ。がっかりである。年末のお忙しい中、読んでいただいて恐縮だが、今回はどうも居酒屋の与太話になりそうだ。

 

看板ペンキ事件から30年余。検察に起死回生の一手は

東京地検特捜部が地方からの応援で100人体制を組んだと報じられた。全国で検察官は2000人くらい。エース級がひき抜かれてしまったので、地方勤務のお留守番役検察官は忙殺されているらしい。11月末、「第二のリクルート事件」とまで謳ったキャッチフレーズに国民の熱狂。あの騒ぎはどこにいったのか。いまのまま尻すぼみになると、1992年、検察庁の看板に黄色ペンキがかけられた事件を思い出さざるを得ない。東京佐川急便から金丸信・元自民党副総裁に闇献金がなされた件で、金丸氏側は上申書を検察に提出。罰金20万円の略式起訴で決着した。「ふざけるな」と怒った男性がペンキをぶちまけたわけだ。これに奮起した検察は金丸元副総裁をゼネコンからの裏金を脱税で摘発、政治生命を奪うに至った。面目躍如だった。さて今回、起死回生の一手はあるのか。

 

世論操作?検察の有力メディア「リーク作戦」

「検察のリーク」と言う言葉がよく使われた。口の悪い評論家は「A新聞は検察の広報機関」とまで言ってのけた。検察官は秘密保持厳守で口が堅いので、マスコミ各社の企業努力と記者個人の努力はいかばかりかと苦労が伺われる。それでも「検察のリーク」だと推察してしまう。私も記者だったのでなんとなくわかる。記者がデータを積み上げてターゲットに「あてる(事実関係を質す)」場合、記者の質問の仕方で、相手の答えが微妙に違ってくる。数字も変わってくる。言いたくないことを話すのだから人によって温度差がある。これがふつうだ。今回のように記事に出てくる数字や論調が横並びで揃っている場合はかなり怪しい。誰かが意図的に流している可能性が高い。

私も編集長から「まんまと作戦に引っかかったなあ」と指摘され、リークに乗るなと窘められたことがある。だが、抜かれたら抜かれたでこっぴどく怒られる。どっちもどっちだ。

 

「起訴便宜主義」の盲点 検察のさじ加減次第

なぜ検察はここまで強権を得たのだろうか。ちょっと法律のおさらいをしよう。民事訴訟は被害者が原告となることが一般的だが、刑事訴訟では被害者が原告になれない。原告は検察である。法治国家では「私刑」「復讐」が禁止されているのが普通だ。「月に代わっておしよきよ」はセーラームーンだが、検察は被害者に代わっておしおきをする裁判を求める(起訴=公判請求)ことができる唯一の機関である。さじ加減は検察にかかっている。法律の厳格な適用より、情状を考慮し検察が手加減を加える余地を残した法の運用を「起訴便宜主義」という。何事も独占が過ぎると害がでるので「検察審査会」ができたわけだ。それでも検察が起訴した刑事裁判の有罪率は99%。マスコミが注目する由縁である。

 

政治資金規正法では「形式犯」止まりの可能性大

今回の「政治資金規正法」違反では、「形式犯」と言う言葉もよく聞いた。刑事裁判では「形式犯」と「実質犯」がある。区別は、「法益」(法律によって守られる恩恵)が棄損されたかどうか。「形式犯」は具体的な被害者がいない犯罪ともいえる。今回の届出義務違反や身近で言えば免許証不携帯がこれにあたる。行政機関が絡む法律をめぐる裁判で「形式犯」が生まれるケースが多く、一般的に刑罰は軽い。ただこの法律があるおかげで事件事故の芽を摘む効果は計り知れない。ではあるが重い罪になりようがない。刑罰は軽いが政治家にとっては大問題で、起訴されれば「公民権停止」は免れず、当分選挙には出られなくなるのだから。

 

さて、年末、検察は隠し玉を披露するのだろうか。

 

今年もご愛読ありがとうございました。よいお年をお迎えください。