ハロウィン登場の植田日銀総裁 長期金利1%めどはYCC解除の布石か
ドイツに抜かれGDP4位に転落 暗い経済ニュースばかり
どうもこのところいい経済ニュースがない。IMF(国際通貨基金)は、日本の2023年のGDPが世界4位になると予想した。米国、中国のトップ2につづくのは日本に代わりドイツになるという。GDPは「三面等価の法則」が働く数値で、「生産面」(付加価値)、「支出面」(需要)、「分配面」(所得)、どの切り口から集計しても同じ金額になる。実務的には米国ドルベースで計算している。
一番イメージしやすいのは、「人口×付加価値」=その国のGDPだろうか。これでいくと米中が独走するわけがわかるが、ドイツは日本より人口がかなり少ない。8300万人しかいない。日本病は重篤と言わざるをえない。
日米金利差考慮?「1%めど」は実体経済を追認した形
10月末、ハロウィンの時期に開かれた日銀の金融政策決定会合では、長期金利(この場合、10年物国債をいう場合が多い)の振れ幅を「1%めど」まで引き上げた。これまで0・5%めどで1%上限だったから、実体経済に金融政策をあわせた格好だ。米国は金利5%にしてもインフレ傾向が続いているので、金利差がこれ以上つくのは好ましくないと思ったようだ。これを「YCC(イールドカーブコントロール)解除」の助走とみる向きもあるにはある。
確認しておこう。債券市場は「発行市場」「流通市場」2種類
ここで債券市場のおさらいをしておこう。債券市場には「発行市場」と「流通市場」とがある。
「発行市場」は公募入札方式で、財政法5条適用
発行市場は新規国債を扱う市場で、国債の発行条件(利率、償還期限、価格)などを財務省が入札で決める。応札できるのは「国債市場特別参加者」と言われる大手の銀行や証券会社などで、これを「公募入札方式」と言う。財政法5条の、いわゆる「国債の市中消化の原則」が適用されるのはこちらの市場だ。
「流通市場」は市場原理のまま 買いオペもこちら
発行して市中銀行に渡ってしまったら、「価格」「金利」は市場の原理にさらされる。もっといえば日銀がいくら買い取っても合法である。こちらが「流通市場」だ。日銀が「買いオペ」を実施したというニュースがたまにあるが、これは「流通市場」の方である。ニュースで日々数字がでるのもこちらだ。規模的には「株式市場」より桁違いに大きい。
マスコミは「出口戦略」議論で持ち切りだが、日銀は慎重
マスコミは「出口戦略」はいつごろからかで、話は持ちきりである。方向転換は必ず大きなニュースになるので、マスコミにしたら待ち遠しいが、金融政策を預かる日銀・植田和男総裁にしてみたら国を誤らせるわけにはいかないので、ものいいも慎重になる。
実質賃金銀はこれまで17カ月連続でマイナス。転機としては、来年の春闘あけ、4月の「金融政策決定会合」が天王山か。長期金利だけでなく短期金利も方向転換するとなると、住宅ローンなど多方面に影響がでそうだ。