読売スクープも幻? 日銀、金融緩和続行でひらく日米金利格差

 

日銀「政策に変更なし」、FRBさらに政策金利上げか

日銀は9月21、22日、金融政策決定会合を開き、当面、現在の金融緩和政策(低金利政策)を維持することを決め、植田和男総裁が発表した。

これに先行する形で19、20日に米国で開かれたFRB(連邦準備制度理事会)主導のFOMC(連邦公開市場委員会)は、政策金利を据え置いたものの、年内にもう0・25%上乗せする用意があることを示唆した。

 

読売、植田総裁インタビューで言質?やりとりを推理

9月9日付・読売新聞朝刊の植田総裁のインタビュー・スクープ、「条件が整えば金融緩和政策、年内にも終了」はどうなってしまったのかと思わざるを得ない。この記事で円安が収まりかけ、債券市場の長期金利はじわじわ上がり、株価は落ち着いた値動きとなった。

この記事を読んだ時の私の印象は「上手く言わせたな」であった。おそらく読売の記者はインタビュー中に年内に出口戦略をとることは「絶対あり得ませんね」「100%ないですね」と畳み込んだ筈だ。植田総裁は学者としても知られるが、社会科学系の学者は「絶対」とか「100%」とかいう言葉を極端に嫌う。であるから「条件が揃えば年内にも」とリップサービスをしたのではないかと思う。

 

1ドル150円ならば財務省、為替介入の可能性も

FRBのタカ派戦略と、日銀のハト派戦略。好対照となり円安ドル高は一層すすむだろう。米国ではCPI(消費者物価)の急激な上昇が収まりつつあり、そうかといって景気も後退していないので、パウエルFRB議長は「してやったり」の気分でいるのではないか。

「物価の番人」日銀にしてみれば、円安による輸入物価の上昇が日本のCPIを押し上げている最大の原因と分かっていながらも、「為替対策のための金融政策ではない」が筋論ではある。為替政策は財務省の仕事なのだ。

だとしたら1ドル150円を覘いたあたりで財務省が動くのではないかとの観測もでている。為替相場で裁定取引のようなことをして利ザヤを稼いでいる投資家にとって、為替介入は大変恐ろしい一手となる。

 

じわじわ上がる債券市場の金利、待たれる賃金上昇局面

日銀の思惑をよそに債券市場の金利はじわじわ上がる傾向にある。賃金が上昇傾向にあるなかでの金利上昇は問題ないのだが。サラリーマンにとって「夢のマイホーム」はまたまた遠ざかってゆく。

日銀の金融緩和政策の転換は来春の「春闘」の結果次第とみていい。「着実な賃金上昇を伴う経済環境でのインフレ率2%」が出口戦略のキーワードだ。岸田首相が音頭をとっての「管制春闘」ではそこが知れている。企業の本気度が注目される。