ジャニーズ、性加害認める。日本メディアが沈黙していた本当の理由
景子氏引責辞任、東山氏「雇われ社長」に就任も前途多難
ジャニーズ事務所の騒動に触れなくてはならないだろう。元マスコミの一員としては自分ことを棚にあげるという挙に出るしかない。
踏み込む前に事実関係をおさらいする。ジャニーズ事務所は、9月7日、記者会見を開き、創業者ジャニー喜多川氏(2019年死去)が未成年者への性加害を行なっていたことを認めた。現社長の藤島ジュリー景子氏は引責辞任。後任に東山紀之氏をあてる。景子氏は株式の100%を引きつづき保持したまま代表権のある、「社長」のつかない「オーナー」。東山氏は「雇われ社長」になった。「ジャニーズ事務所」の屋号は存続する。
英BBCが突破口、「都市伝説」が「現実」になった日
ことしの3月英国公共放送BBCがドキュメンタリーで取り上げたことで「都市伝説」が「現実」となった。利害関係のない海外の権威ある媒体が扱ったことが突破口だった。被害者の悲鳴が一挙に生の声となり、これを「後追い」する形で日本のマスコミが報じることで、世論の風となっていった。
体験談!ジャニーズ事務所を敵に「僕たちの1年間戦争」
「再発防止特別チーム」が問題を深刻にした原因のひとつとして「メディアの沈黙」を上げている。どうして騒がなかったのか、そこに「利益」という禁断の果実あったからに他ならない。ひとつ体験談をお話しする。新入社員の頃。私の勤めていた出版社は映画作りが盛んで、どちらかというとそちらの方が有名だった感さえあった。夏休み期間中は書き入れ時だ。このときジャニーズ事務所の映画もかかるということで、劇場のとり合い、若者たち(観客)の奪い合いになった。社長同士が宣戦布告してしまと、社員はこれに殉じざるを得ない。
ジャニーズ事務所はインタビューをはじめ一切の協力を拒否。雑誌を抱えるこちらは部数の落ち込みに直面した。社長同士が和解するまで約1年、あのしんどさを忘れることはできない。当時は、「花の82年組」といわれるアイドル・ブームがあって、これに救われた。そのくらいジャニーズ事務所と喧嘩をするすると,ひどいしっぺ返しを食らうわけだ。
噂では知っていた?濃淡あるがホントは誰も知っていた
性加害について「噂では知っていた」と事務所関係者が述べているが、これはマスコミにも当てはまる。大抵の新聞・雑誌は「ジャニーズ担当」、「B担」と言われる、その事務所専門の編集者か記者を置いていた。「ジャニーズ担当」は名前のままだが、「B担」はBのつく芸能事務所の担当で、そこの社長は暴力団関係者と通じているという噂があり、癖のあることでも有名だった。専門の担当者を置くということは編集部の中枢部では「特殊な事情のある芸能事務所」と認識していた証拠でもある。よそ者が搔きまわして欲しくない秘密があったことになる。
喜多川氏のスター「審美眼」は性癖から来たものか
もうひとつジャニーズ事務所に感じていた不思議な感覚を吐露しておく。それは事務所が抱えるタレントの数と売れた人の数の比率である。「千三つ」という言葉があるが、1000人に3人くらいしかものにならないのがこの世界である。いろいろな芸能事務所の社長と話す機会があったが「売れると思って事務所に入れるのだが、期待と結果、その予想は外れるもの」なのだそうだ。ジャニーズ事務所の成功確率は異常ともみえた。これが創業者の「性癖」からくる「審美眼」のようなものなのか。この辺りがわからない。
「神聖」性、「処女」性、タレントの生命線をどう維持するか
ジャニーズ事務所復活のカギは、景子氏が記者会見で言ったひとことにあるような気がする。「いま人気ものになっている人(タレント)はこういうことがあったから売れたのではなく、自らの努力で成功したことをわかってほしい」。そうなのだ。メディアで彼らを目にしたとき、この「性被害者」という潜在意識が先に立つかどうかなのだ。
人気タレントが結婚した途端に落ち目になることがあるように、客とタレントとの間には「仮想恋愛」が存在している気がしている。ジャニーズのタレントも例外ではないだろう。その根底にあるのは、言葉が足りないかもしれないが「神聖」性、「処女」性のようなものではないかとも思う。
テレビ業界、世界のプラットフォーマーはどう動く
被害者への補償と救済、心的ケアが上手くいけば、一筋の光が見えるかもしれない。ここまで来ると国連の人権委員会が「ビジネスと人権」の概念でさらに追及することだろう。日本のテレビ局がどこまでドラスチックに対応を変えるか、ネットフリックスのような世界的プラットフォーマーがこの事態をどう見るか、注目である。