安倍派、集団指導体制へ。党本部支配の小選挙区制下で「派閥」はどうなる

 

「座長」って肩書、大臣ポスト交渉は大丈夫?

自民党の最大派閥・安倍派清和政策研究会、100人)は8月17日、総会を開き、集団指導体制というべき「常任幹事会」を設け、派閥の運営に当たることにした。「会長」は不在のままで、取りまとめ役は塩谷立・元文科相(73)。「座長」というヘンな肩書となった。岸田首相が9月に内閣改造と党役員人事を行なうため、泥縄式の対応とも見える。

 

下村氏VS「5人衆」、やっぱ安倍派も世代交代

安倍派執行部の下村博文・元政調会長(69)は、一気に世代交代が進みそうな「新体制」にひとり反対したが、「まだ総理総裁に色気があるんだ」という印象だけが残った。安倍派には「5人衆」と呼ばれる有力議員がいる。松野博一・官房長官(60)、高木毅・国対委員長(67)、西村康稔・経産相(60)、萩生田光一・政調会長(59)、世耕弘成・参院幹事長(60)だ。この5人は常任幹事会のメンバーに入りそう。

 

派閥の存在意義と掛け持ちの可能性を考える

そもそも派閥とは、「選挙資金」「選挙応援」「ポスト」が喉から手が出る欲しい議員の切実な思いから生まれた。政治学の本には【「55年体制」以降、中選挙区制が定着し、一つの選挙区に自民党の候補が複数立つケースが生まれた。まったく同じ政策というわけにいかないので、派閥によって差別化を図った。また、派閥からの選挙資金の多寡が当落を分けることになった】と書いてある。突き詰めればカネとポストに尽きるというになろう。ただ最近、新しい解説が加わった。【小選挙区の導入によって党本部が「公認」権、選挙費用、応援要員などで主導権を持ち、候補者の生殺与奪(せいさつ・よだつ)権を握りつつある】のだそうだ。

 

では派閥を掛け持ちすることは可能なのだろうか。安倍派の総会も木曜日だったが、派閥の会合は原則「木曜日の午前中」。身一つで2つの会議に出るのは無理なので不可能ということになる。「〇〇グループ」なんていう派閥のタマゴみたいな集団の場合は水曜日の会合が多いそうだ。

 

派閥、大きくなりすぎると分裂する理由

なぜ派閥が大所帯になると分裂するのか。単純で分かりやすいのはポスト(とくに大臣ポスト)がなかなか回ってこなくなる。政治記者たちの間では「派閥6人で1大臣」なんて相場観もある。一概には言えないが、大臣の数に限りがあるので大派閥は不利に働くこともある。

大臣の数は内閣法で決まっていて、通常は14とくに必要とする場合3増、これに時限的な「復興」「オリ・パラ」を設定しても、19が限度だろう。

あと考えられるのは、議員は何らかの業界団体の長をしていることがあげられる。もちろん政治資金を得るためである。同時に利益誘導の役目を果たすわけだが、大派閥だと利益が相反するケースが出てきてしまうのだ。

 

官僚派VS党人派、この争いは今後も続きそう

政治評論家によると、「5人衆」で首ひとつリードしているのが「西村」「萩生田」両氏であるという。顔では「イケメン」対「コワモテ」と対照的。経歴も、西村氏が「灘高」「東大」「経産省」の官僚系。萩生田氏が「早実」「明大」「八王子市議」党人系

別の派閥の話だが、岸田文雄首相は池田勇人首相を源にする、大蔵省の親睦会「宏池会」の会長だが、自身は官僚経験がない(父親は通産官僚ではあった)。ここのところ「政高官低」の傾向のようだが、この流れは変わるのだろうか。