株価、バブル景気以降の高値水準。1ドル140円台、「円安」は日本の救世主なのか

 

32年ぶりの高値更新で日本株に世界が注目

このところ円安が進み今朝の時点(6月24日)で1ドル143円近く。日経平均株価はバブル景気以来32年ぶりの高値水準で、昨日(6月23日)の終値で3万2781円だった。株価は投資家それぞれの将来展望が大きな要因になるため一概には言えないが、米国の株式相場が堅調なことが最大の原因だろう。米国株で儲けた投資家の目が日本の株式市場に向くのは当然のこと。そもそも日本の株は世界標準でみるとかなり安い、そこにこのところの円安だから余計お買い得というわけだ。「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏が日本株に目を付けていると噂が出て、それならば買ってみようとなったのも一因ようだ。税収は過去最高。賃上げブーム、物価高も彼らにしてみたら好材料なのであろう。

 

FRBは利上げ一休みだが「含み」あり、日銀は金融緩和変えず

株式については変動要因が多すぎて素人では手に負えない。経済理論で説明しやすい為替相場の方を見てみる。植田和男日銀総裁が初めて臨んだ金融政策決定会合(6月13日)では金融緩和路線の継続が決議された。一方、米国の中央銀行FRB(連邦準備制度理事会、パウエル議長)は6月14日、FOMC(米連邦公開市場委員会)を開き、22年3月から続けてきた利上げを一時中止した。この1年3カ月で上げた金利は5%で、歴史に残る金融引き締めとなった。ただ投資家にしてみたら米国の中堅銀行が3行あいついで破綻したので、高金利政策は天井を見たと思っていたので当然のこと。ただ驚いたのは、パウエル議長が記者会見で、今年中にあと0・5%ほど金利を上げるとほのめかしたことだ。22日の米国上院の銀行委員会でも利上げの念押しともとれる証言をしている。これで日米金利差が広がるとみた投資家は円売りドル買いにでた。

 

日米の貨幣供給量を比べてみると「相場」が見える?

ではどのくらいのドル円相場が適当なのか。経済学者の中でも意見は分かれる。「貨幣」の役割に力点を置く「マネタリスト」と呼ばれる学派がある。かれらに言わせると「インフレは単なる貨幣の現象にすぎない」、つまり世の中に出回っている貨幣の量で景気は調整できると考える。世の中に出回る貨幣の量が多くなればインフレになり、少なければデフレになるだけで、それ自体に大した意味はないという学説である。為替相場は両国にそれぞれ流通する貨幣の「希少性」の対比に他ならないというシンプルな理論に行き着く。

この説でドル円相場を考えると、中央銀行のコントロール下にあるマネタリーベース日本と米国で比較すればいい事になる。マネタリーベースとは、世の中に出回っている「お札」の合計と、日本でいえば市中銀行が日銀に置いている「日銀当座預金」(日銀から引き出した時点でお札になる)の合計を足したものだ。FRBにもこれに相当するドル供給システムがある。

 

マネタリストいわく為替相場は「1ドル122円」程度が適当?

いま日本のマネタリーベースは670兆円くらい。米国のそれは5・5兆ドルくらい。均衡させるには、単純に割り算して1ドル122円辺りが適当となる。マネタリストの多くは、現在の140円台は明らかに円安であり、これが株高を生んでいる原因とみているようだ。将来的に円高に振れるとみている。日本の産業構造は円安向きに出来上がっているといってもいいだろう。

 

本当にパウエル議長は、不景気になるリスクをとりつつ利上げをしてインフレを退治するのか、これに対し、植田和男日銀総裁は金融緩和路線を継承していくのか注目される。