「岸田首相、ウクライナ電撃訪問」特ダネはNHK、日テレ 官邸リークの思惑は

 

村神様、奇跡の一発のご託宣?TBS速報テロップ

岸田首相のウクライナ電撃訪問は、WBC日本代表・村上宗徳電撃2塁打を放つ直前に伝えられた。3月21日午前11時半ころ(日本時間)、TBSの画面にニュース速報(テロップ)が流れた。日本×メキシコの準決勝が最高潮を迎えた時だった。

同日、岸田首相はゼレンスキー大統領と会談。支援の意向を伝えるとともに、5月のG7広島サミットにオンラインでの参加を要請した。

情報を総合してみると、ポーランドからウクライナ首都キーウに向かう特別列車に乗り込む岸田首相を映像で捉えたのはNHKと日本テレビだけ。スクープと言えばスクープだが、官邸が2社だけにリークしていた可能性が高い。官邸は要人の安全を第一に考えて情報を管理していたというだろうが、ハブられた社は面白かろうはずもない。禍根を残すことになった。

 

官邸リークの手法は検察「ゴーン逮捕」で実証済み

この手法は検察もやったことがある。日産の元社長カルロス・ゴーン氏が空港で逮捕されたとき朝日新聞の記者が同行していたのは有名な話だ。

こうしたことがあるので記者は、ネタ元になりそうな人たちのご機嫌取りに必死になる。検察幹部と記者たちの「賭けマージャン」が話題になったが、これも、いざというとき「ハブられない」ための根回しだったのである。

 

用意周到なお膳立て、岸田首相支持率アップなるか

首相の電撃訪問。せっかく行ったのに安全ばかり気にして全くニュースにならないのでは,行かないと同じになってしまう。支持率アップには大きなニュースになる必要があった。そこでメディアを連れて行くのだが、今回、官邸は2本(NHK、日テレ)釣りにしたようだ。翌22日に国会日程を入れないよう事前に要請していた形跡があるし、NHK、日テレのカメラが同じ位置から撮っていたこと、解禁時間を揃えていたことから考えても、かなり用意周到だったと思われる。

 

官邸が代表取材を選ばなかった理由

こうした場合、官邸は日本新聞協会(東京・日比谷)「代表取材」を要請することもできただろうが、情報が漏れることを恐れたということか。「代表取材」とは取材を最低限の人数にして、写真や記事を、代表をしてもいいと手を挙げていた社に配るシステムだ。

 

代表取材とは? ダイアナ妃初来日を振り返って

日本雑誌協会(東京・お茶の水)もこれと同じシステムを採用していた。1986年の英国ダイアナ妃初来日のときは協会あげての大イベントだった。私にとっても代表取材初体験で緊張したのを覚えている。宮内庁・外務省の混成チームが仕切っていたが、「ダイアナ妃」別冊をつくろうという出版社が多かったので、ダイアナ・フィーバーとなった。「アサヒグラフ」「毎日グラフ」といった写真週刊誌(画報なんて言い方もあった)がまだ元気だったころの話だ。余談だが朝日新聞は日本新聞協会所属だが、週刊朝日やアサヒグラフは日本雑誌協会の所属だ。

当時は写真の代表取材は、カラー1人とモノクロ1人の組み合わせが多かった。カラー写真はポジフィルム、モノクロは現像を必要としていた時代だった。写真分けは日本雑誌会館2階の事務室か会議室で行なわれたが、くじ引きで順番を決めて欲しいカットを切り出していくので各社で駆け引きがあったことを覚えている。

 

今回の岸田首相電撃訪問はインターネット時代でも各社の駆け引きがなくなっていないことを思い出させた。

 

※WBC決勝「日本×米国」は日本時間3月22日午前8時から米国・マイアミで行なわれ、3対2で日本が勝った。胴上げ投手となった大谷翔平はMVPも獲得した。優勝は14年ぶり。