米国で2銀行経営破綻、「インフレ退治」利上げで国債暴落が原因か

 

バイデン大統領、即刻「預金全額保護」を宣言

リーマンショックの悪夢が一瞬蘇った。アメリカでシリコンバレー銀行(資産規模2090億ドル、米国16位、カルフォルニア)が3月10日、シグニチャー銀行(資産規模1103億ドル、米国29位、ニューヨーク)が12日,相次いで経営破綻した。バイデン大統領はすぐさま預金全額保護の演説を行い経済は小康状態を保っている。これにより安全通貨の「円」が買われ円高ドル安が進んだ。円高を嫌った株価は低迷し、米国債を保有する日本の金融機関に不安を感じている投資家も多い。

 

新興企業、特定産業が取引相手の中堅銀行

2つの銀行、資産規模からいって日本でいえば中堅どころの地方銀行辺りだろうか。取引先の特徴は、シリコンバレー銀行はIT新興企業が中心、シグニチャー銀行は暗号資産を扱う新興企業が中心だったそうだ。新興企業向けであり、特定の業種に偏っているわけで、危機管理が難しいともいえる。大手はバランスを大事にしていることが多い。この2行、資産のかなりを米国国債で持っていたという話だ。

 

経営破綻とFRB利上げ加速の因果関係は

放漫経営という言葉が聞こえてきそうだが、最大の原因はFRB(米国連邦準備制度理事会)の度重なる利上げに尽きるのではないか。米国のインフレ過熱はすさまじく、これを冷やそうとFRBは躍起だ。サービス物価上昇は止まらず、人手不足は一向に解消されない。パウエル議長は議会証言で〈更なる幅とペースでの利上げ〉をほのめかしたばかりだ。

 

金利と債券価格の関係をもう一度確認

ここでおさらいをしておこう。金利と国債の価格の関係である。計算しやすいように額面1万1000円の10年物国債で考える。10年先の満期になると1万1000円受け取れる債券だ。10年金利が0%であるならば現時点の取引価格は1万1000円になる筈だ。では10年金利が10%に上昇したとするとどうなるか。現時点での取引価格は1万となってしまう。つまり金利が上がれば国債は暴落することになるわけだ。

 

いきなり正念場 日銀・植田新総裁はどうする

いまはネットで多くの取引が行なわれるため、昔のように銀行の窓口にみんなが押しかける「とりつけ騒ぎ」にはならなかった。しかし危ないとの噂が流れただけで信用収縮はおこるものだ。この2行、金利上昇で「含み損」は出ていたものの表面化しなかっが、ここにきて預金が大量に引き出されるので現金を用意せねばならず、国債を売りに出た。こうなると「確定損」となってしまう。悪循環の始まりだった。

リーマンショック(2008年)のような大混乱には陥っていないが、続報を待ちたい。日本では金融緩和政策を貫いてきた黒田東彦総裁から植田和男総裁に交代しようという時期であり、なにか因縁めいたものを感じざるを得ない。

 

 

※前回の「放送法解釈変更」のブログ、付け加えておきたいことがある。

放送法のフェアネス条項(政治的公平の原則)必要性は、テレビが寡占メディアであることに存している。テレビ局が2000も3000もあったら誰もすべてをチェックできないし、極右あり、極左あり、右寄り、左寄り、そして中道なんて局もあったりして、メディア全体ではバランスが取れている、となる筈だ。これからは個人でも小組織でも発信できるツールが増えて多メディア化の一途を辿るだろう。そうしたら自然に問題は解決するのではないか。米国はフェアネス条項を外して30年以上が経つ。