1・23国会開幕で注目の日銀人事案。大ラス黒田総裁締めの政策

 

黒田総裁ラス前、金融政策決定会合の不思議

注目されていた日本銀行の金融政策決定会合が1月17、18日両日開かれ、黒田東彦日銀総裁金融緩和政策の続行を宣言した。昨年12月20日、10年国債金利〈0%〉に振れ幅+-0・5%とした事実上の利上げから一転した感じだ。黒田会見以降、株式相場は堅調となったが、外国為替市場で円は乱高下している。

 

イールドカーブの是正議論はどこに

昨年12月、振れ幅を拡大した措置について黒田総裁は「イールドカーブの是正」を理由としていた。どういうことかというと、短期債券より長期債券の方がリスクをとるので金利は高くなるのが普通だ。この返済期間と金利の関係を点で結ぶと右上がりのスムーズな曲線になる(イールドカーブ)。2カ月物から40年物まで色々な国債があるが、全体的に金利は上昇基調だった。ところが日銀が10年物国債にだけこだわり「指値オペ」など低金利誘導を行なったため、曲線が「10年」の目盛ところだけボコんと凹んでしまった。これを直すためと説明していたのだ。

全く凹みは解消されないままだったが、今回の政策決会合後の会見では、これにつて詳しい言及はなかった。

 

債券の金利と価格の関係は「婚活市場」と似ている

債券市場で日本国債の金利は上がりつつある。ということは国債の価格が下がっていることだ。

しつこいようだが、債券の価格と金利は逆数の関係にある。これを説明する。フェミニストのわたしとしては嫌なのだが、ほかにいい「例え」が思いつかないのでお許し願いたい。

その例えがこれだ。美人は世間で人気がある。評判は上がる一方だ。不美人はイマイチ人気がない。男たちは美人と結婚したいので「身ひとつ(持参金なし)でお嫁にきてください」と言い寄る。ところが不美人は誰も振り向いてくれないので、こちらから持参金をつけましょう、ということになる。

価格と金利の関係はこれと似ている。金利は持参金のようなものである。

 

物価高の中の日本国債の値打ちは

国債の人気がなくなって価格が下がり金利が上がる理由は色々考えられる。あまり発行しすぎたため希少性がなくなった。債券市場に日本国債より魅力的な債券商品が増えたなども考えられるが、一番の理由は物価高ではないか。日本国債はどう考えても金利はほかの債券より低い。魅力は元本保証というところにある。元本保証といっても額面に対してというだけで、インフレになって金利より物価があがれば実質は目減りしていることになる。日本のインフレは40年ぶりの水準だ。

 

「共通担保資金供給オペ」って何?

また、今回の政策決定会合で「共通担保資金供給オペ」という新手の操作を行なうと発表した。いままで国債は政府が発行して民間金融機関がまず買い取り、さらにこれを日銀が買い取る手法が主だった。

今回の措置は、日銀に国債がたまり過ぎたので、民間金融機関に「そのまま国債を持っていてください、そのかわり国債を買う資金は超低金利で融通します」というものだ。国債より低い金利の融資が受けられるので、民間金融機関は国債を買った時点で利益が確定する理屈だ。国債を売ったり買ったりして「差損」を出す心配もないのだ。

これってリクルート事件のとき、リクルートコスモスの未公開株を引き取ってもらうため、その購入資金までE社長が提供していた構図と似ていなくもない。

 

とにかく黒田総裁任期中は金融緩和路線でいくということだろう。1月23日からの通常国会には、日銀の総裁・副総裁の人事案が内閣(岸田政権)から提出される。

 

【追記】 日銀は1月23日、共通担保資金供給オペの手始めとして民間金融機関に約1兆円の融資(5年償還)を行なった。このため5年物国債が買われ価格が上昇(金利が低下)した。これにつられて10年物国債も価格が上がった(金利が低下)。この時点では日銀の思惑通りとなった。