10月値上げラッシュ。原因は円安ドル高・金利格差なのか

 

 

為替要因と供給要因、どちらが強いか考えてみる

きょうから10月。これからスーパーに行かれる方は値札が変わっていて驚かれるかもしれない。油、麺類、漬物までありとあらゆるものが値上がりしている。まず思いつくのは「円安が原因」ということだ。だが冷静に考えると例えば世界市場で見て①ドルベースで値段が変わっていないのに日本のマーケットだけで値上がりしている②そもそもドルベースでも値上がりしていて日本のマーケットはその分だけ値を上げている。このふたつのパターンがある。①は当然、為替相場(円安)に起因していて②は供給側(作り手)に原因がある。この二つの要因が複雑に絡み合っていることが多いだろうが。

 

サービス物価が上がらないと給料は・・・

ちょっと悪いお知らせからお伝えしよう。消費者物価は消費財物価サービス物価を合わせたもの。形のあるモノ(財)と運賃やホテルの宿泊代のような待遇(サービス)に対して払う対価の合計である。皆さんの給料(賃金)に直接影響を与えるのはサービス物価の方で、政府の統計によると、こちらはほとんど上がっていないので、そうやすやすと賃金は上がりそうもないとみていいだろう。

 

供給要因はウクライナ戦争にあり

閑話休題。②の供給側要因で思いつくのはウクライナ戦争である。ロシア産のエネルギー価格が上昇し、ウクライナ産の穀物も輸出がストップしている。

 

黒田日銀総裁とパウエルFRB議長の決断

今回の本題は①の円安の方だ。この原因は金利格差である。米国FRB(連邦準備制度理事会=パウエル議長)はFOMC(連邦公開市場委員会)を開くたびに大幅な利上げを敢行。インフレ退治のためである。一方の日本銀行(黒田東彦総裁)は金融政策決定会合を開き、金融緩和路線を続行すると発表した。こちららはデフレ脱却のためだ。日米の金利格差は3%以上になった。皆さんA銀行の隣にB銀行があって、B銀行の定期預金の金利の方が3%高かったら、どちらに預金しますか、という話である。

 

ついに9・22為替介入。その結果は

で、9月22日の「為替介入」となった。市場に冷や水をぶっかけて落ち着かせる試みだ。為替介入は財務省(鈴木俊一財務大臣)が決めて日本銀行が実務を行なう。黒田日銀総裁からすれば、金利を上げない政策を発表しておいて、ドル売り円買い(結果的に日本の金利を上げる)という伝家の宝刀を振るった。手伝ったの方が正解か。いずれにせよアクセルとブレーキを一緒に踏むような事態に至ったわけだ。今回は米国とは事前の交渉はなかったと言っているが、米国から不満が出なかったことを考えると、日本の正当防衛だと判断したのだろう。為替の乱高下の幅を小さくして経済の安定を図ったとみたわけだ。乱高下というわけではなく長期にわたって円安が続いている状況で為替相場を刺激したとなれば「国家の市場介入」とみなされ、ルール違反と世界からバッシングを受けることになっただろう。

今回の為替介入は「外国為替特別会計」(通称=ガイタメ・トッカイ)の外国債券(主に米国国債、円換算で2兆8382億円ほど=財務省発表値)を売って「円」を買ったらしい。この外債はいつ仕込んだ(買っておいた)ものかはっきりしないが、いまより円の価値が高かったころに買っておいたものだろうから売却益がかなり出たのではないかと勘繰っている。

 

いずれにせよ効果は一時的なものであった。