日銀総裁・総理・大蔵相、全部経験した高橋是清。FRB議長から財務長官はイエレン女史

 

 

物価高・円安で日銀に存在感。流行語が次々

この物価高と円安で日本銀行の存在がクローズアップされている。「異次元緩和」「マイナス金利」「黒田バズーカ」は日銀由来の流行語となった。日銀の設立は1882年。大蔵大臣(財務大臣)の許認可法人で、根拠法は日本銀行法である。1998年、日銀法改正で、政府からの独立性が増した。中央銀行と財務官庁の関係を人事面からみてみる。

 

 

高橋是清は裏白紙幣のアイデアマン

日銀総裁と財務大臣(大蔵大臣)両方した人を調べたら高橋是清氏がいた。その容貌から「だるま宰相」と言われ総理大臣まで上り詰めた人物である。その後、財務大臣に転じた。1927年、昭和金融恐慌の際には、取り付け騒ぎを回避するため、完璧な印刷では時間がかかり過ぎるとみて片面だけの札を刷って銀行の店頭に積ませた。これが「裏白紙幣」(200円札)である。アイデアマンであった。この高橋是清氏は第7代日銀総裁の経験を持っていた。それから政界に転身したわけだ。のちに「2・26事件」(1936年)で右翼の青年将校に殺されてしまう。

 

高橋是清氏は東京・日暮里の「開成学園」の創立者である。現在の岸田文雄首相はここから早大、経済安全保障担当の小林鷹之大臣はここから東大に進んだ。

 

 

FRB議長・イエレン女史は労働経済学者

アメリカに目を転じると、中央銀行であるFRB(連邦準備制度理事会)議長と財務大臣にあたる財務長官の両方やった人がいる。現在、財務長官のジャネット・イエレン氏だ。FRBでは現任のパウエル議長の前任者であった。イエレン氏は旦那さんがノーベル経済学賞をとっていて夫婦そろって経済学者。女史は労働経済学が専門で失業対策のエキスパートである。

 

 

ユダヤ人とウォール街の歴史的結びつき

彼女はポーランド系ユダヤ人である。FRBに人材を輩出してきたウォール街にはユダヤ人脈が根強く残っているといわれる。ユダヤ人は、キリスト教社会では片隅に追いやられ職業選択の自由もなく、卑しい仕事とされた「金貸し」などの金融業に追いやられた。この辺りは英国の大作家シェークスピアの『ベニスの商人』に登場する「シャイロック」に見ることができる。金融業の何たるか、そのノウハウを蓄積したユダヤ人は、宗教的理由よって、またドイツのヒトラーによるホロコーストを逃れて米大陸に渡ることになった。

 

 

ポスト黒田東彦総裁。次の日銀トップは誰だ

現在、参院選真っ只中だが、7月10日の投開票が行われた後には2023年4月に向け日銀の総裁人事を巡る駆け引きが始まる筈だ。下馬評にあがっているのは雨宮正佳・現副総裁。人呼んで「日銀のプリンス」である。対抗馬は中曾宏・大和総研理事長世界的な知名度を持つ。穴馬は浅川正嗣・アジア開発銀行総裁。財務官経験者である。財務官は財務省国際局長の後に、よく就く大きな役職。「事務次官」「国税庁長官」「財務官」は財務省三羽烏である。