いまさら聞けない。「デフレと闘う」日本銀行の金融政策

 

 

「日銀は政府の子会社」はある意味正しい

知っているようで知らないのが「日本銀行」ではなだろうか。安倍晋三元総理が「日銀は政府の子会社」だと言って物議を醸している。日銀総裁の人事権は事実上、内閣が握っているのであながち的外れではないだろう。人事案は衆参の議院運営委員会で承認されると就任となる。国会同意人事といわれるシステムだ。総裁1人、副総裁2人、審議員6人。この9人が多数決で日本の「金融政策」を決めている。

総裁は財務省系と日銀プロパー系の「たすき掛け(交代制)人事」となる慣例がある。来年4月まで任期がある現在の黒田東彦(くろだ・はるひこ)総裁は財務省系である。

 

 

日銀は「金融政策」、財務省は「財政政策」の役割分担

日銀が「金融政策」財務省が「財政政策」を担当する。「金融政策」は世の中に流れるおカネの量と金利を調整する、「財政政策」は国家予算の配分を調整する。

 

 

QQEで世の中におカネをばらまけ

日銀は2013年から「QQE」と言われる金融緩和政策をとって「デフレ脱却」を悲願としてきた。QQEは「量的・質的金融緩和」と訳されるが、「量的」とは国債の買い付け、「質的」とはETF(株価連動型投資信託)等の買い付けを意味し、世の中に大量のお金が出回るようにした。

 

マイナス金利ってどういうこと

2016年、これに日銀は「マイナス金利政策」という奇手を加える。一般の銀行は国債を買い取ってもらったときなどのために日銀に当座預金口座を持っている。ここにおカネを入れてもらい、記帳してもらうわけだ。われわれの感覚だと「当座預金」は「手形」を振り出すために銀行にお願いして開設してもらうもので、都市銀行などは中小だとなかなか相手にしてくれない。もちろん金利はつかない。この当座預金の日銀版である。ちなみに個人が日銀に口座を開設することは出来ない。

日銀の口座預金の金利は3層構造になっていて、このうちのひとつ「政策金利」の部分だけマイナス金利を適用した。預けた側が手数料を払うというわけのわからない理屈になるので最初混乱が見られた。しかし、あとの2層がゼロ金利かプラス金利なので、実際、手数料を払ったケースはかなり少ないのではないかと推察している。ただこれが低金利誘導にすくなからず役割を果たしたようだ。一般の銀行は日銀当座預金口座におカネを放置しておいても仕方ないので企業に貸し出す筈であった・・・。一般の銀行にしたら利ザヤが減り「いい迷惑」的政策だったことは間違いない。

 

 

「イールドカーブ・コントロール」って何ですか

2016年、もうひとつ、日銀は「イールドカーブ・コントロール」という金融政策をとっている。イールドカーブは聞き馴染みがないかもしれない。短期の債権から長期の債権まで順番にならべると金利がだんだん高くなり、右上がりになる形状をいう。ふつう半年もの国債より、10年もの国債の方が金利は高くなる。10年先まで何が起こるかわからないのでリスクを考えれば当然である。この短期金利と長期金利のバランスを絶妙にとる金融政策である。

長期金利は国の経済基盤や勢いなどなど複雑な要因で決まるのでそうそう動かないが、短期金利はちょっとしたニュースにも敏感に反応して、時には長期金利を追い越してしまう。これは「逆イールド」と言われるもので、景気減速の前触れの現象とされている。

 

こうした日銀の低金利誘導によって、まず一般の銀行同士がおカネを短期に融通し合う「無担保コール市場翌日物」の金利が下がり、これが世の中の金利全般を押し下げてゆく。「コール」はご近所さんに「声をかける」のイメージかもしれない。金利が下がればお金が借りやすくなり、投資が活発となってデフレを脱却できるというシナリオだったのだが、なかなか景気は一筋縄ではいかないようである。