テレビ・新聞・雑誌を10倍楽しむ。天気予報編
今回はテレビの天気予報に触れる。
NC9 倉嶋厚さんの思い出
お天気キャスターといえば、NHK「ニュースセンター9時」(NC9)で気象情報を担当された倉嶋厚さん(故人)を思い出す。こちらは、NC9の510スタジオにほぼ毎日顔を出していたのでよくお見かけした。倉嶋さんは鹿児島気象台長を最後に、気象庁を退官されていた。スカウトしたNHKのプロデューサーが「会心の人選」と自画自賛したほどの素敵な人だった。のちに、エッセイストになり、うつ病に悩まされるくらいだから、繊細な方だった。スタジオのクロマキー装置の前で解説するのはかなり大変だったようで、カメラの台座、キャスターの座る席の横など、至るところに筆で書いたカンペを貼って本番に備えておられた。
気象庁「御威光」の時代
1980年代の半ばまで、まだ気象庁の御威光は強かった。気象庁は国土交通省の所管となる。雑誌のイメージカットとして、地球に台風の渦状の雲がかかっている写真を使おうとなった。当時、気象庁で買うしか方法がなかった。こちらは新米だったので「おつかい」に行かされたのだが、やれ企画書をだせ、やれ雑誌をもってこいとか、ホトホト嫌になった思い出がある。
「天気予報自由化」の波来る
90年代半ば、経済で自由化の波が日本に押し寄せる。「天気予報の自由化」もあった。それまでも民間の気象予報会社はあったが、契約先だけにしかサービスの提供をすることができなかった。これが1993年の「気象業務法」大幅改正で解禁になった。不特定多数OK。国家試験である気象予報士試験の第1回は94年8月28日。受験総数2777人、合格500人、合格率18%だった。これまでの平均合格率は7%ほどだ。今年の4月時点の資格保有者は1万0693人。最初高かったのは気象の専門家が受験したためといわれる。実際にテレビに登場したのは95年になってからだ。
お天気関連3業種
テレビでは①気象解説者②気象予報士③気象予報官、がよく登場する。①気象解説者は資格が要らない。気象庁か民間気象会社の出してきた予報をそのまま伝える。お天気お姉さんはこの枠である②気象予報士は民間気象会社で予報業務をするかメディアで予報を行う。③気象予報官は気象庁に所属する天気予報専門の公務員である。退官してから気象予報士の資格をとり民間予報会社に就職する人もいる。日本気象協会という組織もある。一般財団法人であり、気象庁の天下りが多い。民間予報会社と基本的に業務は同じだが営利を目的にしていない。民間との一番の違いは、日本気象庁は「警報」が出せること。気象予報士が勝手に警報を出すと罰金刑になる。テレビの場合、台風など鬼気迫る状況になったら気象庁の記者会見を生中継するのが一般的だ。
気象庁サービスのスキマを狙え
予報インフラを持っているのは圧倒的に気象庁で、民間は足元にも及ばない。だから民間も気象庁のデータを基礎に使っている。そのうえ気象庁の情報はタダ。民間は契約料をとる。
気象庁は朝5時、午前11時、午後5時。1日3回予報を出している。民間はこれよりちょっと早く予報を出す。現在、朝4時頃からワイドショーが始まるが、ここでの予報は民間のことが多い。気象庁の前日夕方5時に出した予報では古すぎるということらしい。ちょっとはお金をかけているわけだ。
お天気お姉さんのお話は、ちょっととっておくことにします。