テレビを10倍楽しむ。新時代への足音編

 

このところ気になるニュースが続いた。

 

9月15日 NHKが受信料収入(7100億円、予算総額は7300億円)の上限2・5%としていたインターネット同時配信のための投資。この2・5%枠を撤廃する素案を発表。具体案はこの先、中期経営計画で示すとした。

 

9月16日 菅義偉(すが・よしひで)総理大臣が誕生。ケータイ料金の値下げに意欲を見せた。

 

9月29日 NTTが関連会社NTTドコモをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社にすると発表。

 

10月12日 ノーベル経済学賞に「電波オークション理論」、米国の2教授に決定。

 

10月16日 総務省有識者会議で、NHKが制度改定を提言。「テレビ受信機を設置した場合、当局への届出を義務化して欲しい」

 

 

これは全部、公共の電波をどう使うかという問題に関連している。

 

ちょっと解説が必要かもしれない。

 

 

NTTグループのひそかな戦略

NTTがNTTドコモを完全子会社にするとどうしてケータイ料金が安くなるのか。NTTドコモはもともとNTTの子会社だが、ほぼ民間企業の性格を持っている。もし政府の意向でケータイ料金を下げると、利益が減るので株主が騒ぎ出す可能性が大きい。株主は目先の利益の最大化を求め、配当が多くなることを望んでいるからだ。下手をすると株主が訴訟を起こす恐れさえある。これがNTTの傘下に入る。NTTは株式会社だが、筆頭株主は国(日本国)であり、ケータイ料金を下げる国の方針が、そのまま株主の意向というわけだ。

 

 

ノーベル経済学賞はノーベル賞じゃない?

もうひとつノーベル賞について。ノーベル経済学賞は、ノーベル財団に言わせると他の賞と一線を画すという。どちらかというとスウェーデン銀行協会賞の位置づけになるそうだ。具体的にどう違うかというと、日本人がノーベル賞を受賞した場合、一般の賞の賞金は非課税だが、経済学賞は課税対象になるらしい。

 

 

電波オークションってなんだ

今回の経済学賞は米国スタンフォード大学ポール・ミルグロム教授、同大ロバート・ウィルソン名誉教授2名。受賞理由は「電波オークション理論の確立と貢献」である。10月12日付の朝日新聞の見出しは「オークション理論で貢献」。この見出しでは「ヤフオク」のような競争入札の理論のような感じがしないでもない。実は米国で実際に行われた入札で、公共財としての電波をどう割り当てたかが評価された。

朝日新聞が「《電波》オークション」と見出しにしなかった(本文中には出てくる)のには、系列テレビ局への配慮が滲み出ている。「電波オークション」という響きは、既存のテレビ局から電波を取り上げ、他所に叩き売るイメージが付き纏う。どこの先進国もそんな物騒な手法をとるはずもなく、合理的で穏便な理論なのだが、日本ではあまり馴染みがない。

 

さて、この基礎知識ができたところで、次回からテレビ、インターネット、ケータイの共存について見ていく。