テレビを10倍楽しむ。日本学術会議とメディア編
視聴率的に苦しい学者騒動
あるワイドショーのプロデューサーと電話で話した。
「日本学術会議はあきまへんわ。数字出まへん。他のネタ探しますわ。『桜を見る会』と同じ赤旗ネタ、共産党ネタでも、あかんですわ」
東京人がへんな関西弁を使うのは「お手上げ」状態を笑い飛ばそうとしている証拠である。
日本学術会議が推薦した学者のうち6人を菅(すが)内閣が任命しなかったと言う話だ。政府の方針に批判的だった学者を外したのなら「政治的弾圧」に当たるとの見方。一方、別に特別公務員でなくても研究はできるはずで箔をつけさせるために税金を使うのはおかしい、行政改革の一環で組織ごと廃止してしまえ、民間で十分だ、と言う意見も出ている。
結構深掘りできるネタのように思えるが、ワイドショーの中心視聴者層である主婦にウケが悪いらしい。確かに学者の話よりも花見の方が身近な話題には違いない。そこで朝のワイドショーから日本学術会議ネタは撤退を迫られることになった。
スポンサー対応に苦慮
最近の番組作りは、コーナーをたくさん作って、コーナーの視聴率を分析しながら、その改廃を繰り返す事が多い。視聴率が振るわないからといって番組ごと打ち切りにしてしまうと、現在ついているスポンサーへの説明が大変であり、新番組にして出直すにしても新しいスポンサーがすぐ見つかる保証もないからだ。大御所のMCがいる番組など、恐ろしくて「最終回」などと迂闊に打てない事情もある。
事件を追うな、人を追え
もうひとつ言えるのは日本学術会議騒動に登場する人物のキャラが弱いことも挙げられる。森友学園騒動では籠池泰典(かごいけ・やすのり)さんと言う天下無敵のキャラが存在した。1980年代は「疑惑の銃弾」「ロス疑惑」で三浦和義氏(故人)にスポットが当たり、「ワイドショー特需」の現象が起こった。「疑惑の銃弾」は「文春砲」の先駆けだった。
テレビ業界に伝わる格言に「事件を追うな、人を追え」がある。テレビというメディアをよく言い当てているように思う。
菅総理の国会答弁はいかに
今回外された学者の中に加藤陽子氏が入っていたのには、結構驚いた。東大の先生だが、なかなか珍しい女性の歴史学者で、著書も多く、歴史好きの中にはファンも多い。加藤氏をあえて排斥6人組の中に入れたのは、かなり確信犯的な匂いを感じる。菅内閣の国会答弁はどうなるか見ものだ。
臨時国会は、菅総理のベトナム、インドネシア歴訪のあと10月26日に開会する。