雑誌を10倍楽しむ。スクープ を狙え編

 

 

話がシモの方向に向いてしまったので、本筋に戻しましょう。今回はどうやってスクープ をとったか種明かしをしたいと思います。

 

 

特オチは記者の命取り

サラリーマン記者にとっては他社に「特ダネ」を取られるより、自社の「特オチ」の方が怖い。特ダネはスクープ のことだが、特オチは他のメディアが揃って書いているのに自分の媒体だけが1行もその事について触れていない状態をいう。編集部門の上層部はこれを何よりも嫌がる。怒られるくらいですめばいいが、短期間に繰り返すと地方か子会社に飛ばされる記者クラブの弊害が指摘されて久しいが、改善されないのは、仲良意識過剰による「特オチ防止互助会」の役割があるからとも言われる。

不思議なもので、特オチをすまいと広報など記者の溜まり場にジッとして様子を窺っているとかえって抜かれる事が多い。いいネタを拾いにあっちこっち出ずっぱりの方が結構安泰なものだ。攻撃は最大の防御なり、とは記者の世界にも通じる。

 

 

ネタがない時は視点を変える

特ダネを書く記者は媒体ごとにほぼ決まっている。どうしたわけか同じ人が書く。いわゆる特ダネ記者として、防御に当たる広報からも、ライバルの記者たちからも一目置かれている。こうした記者は、人の懐に飛び込むのが得意で、話を聞き出すのが上手いこともあるが、目のつけどころがいいという素質もある。

昔、どうしてもネタが取れないまま締切日を迎えた。苦し紛れに八丈島の役所に電話をしてみた。離島への電話が便利になったと新聞の片隅に載っていたからだ。

大河ドラマ、朝のテレビ小説のVTRが放送3日遅れの船便で届くこと、島民は「11PM」のような大人向けのバラエティを見たがっていること、近く始まる衛星放送を楽しみにしていること、などなど生々しい声を聞く事ができた。この記事はデスクに褒められた。怪我の巧妙だったが、エッジの利いた話題だけがスクープ というわけではない

 

 

秘密兵器は「戸締り大作戦」

あまりいい作戦とは言えないが、唯一後輩記者に教えた方法がある。特ダネ用に入稿を後ろに引っ張れるページがあるのだが、その締め切りの限界点に当たる日(ライバル誌と発売の曜日が同じなので締め切りも同じになる)。溜まり場にいる全社の記者たちに「そろそろ社に上がろう」と誘って、みんなで駅までぶらぶら歩く。他社の記者たちが電車に乗ったのを見届けたところで、テレビ局に取って返し、温めていたネタをお偉いさんに当てていく。夜、人気がなくなり静まりかえった部屋で、一息ついているプロデューサーたちは意外と口が軽くなっているものだ。

この作戦は編集部に戻るのが夜中になるのが欠点でデスクには不評であった。「お前は局の戸締りまでしてくるのか」と文句たらたらだったが、いいネタが入ると「来週もこの調子でよろしく」となる。

 

 

若手よ。飲み会にたまには行こう

こうした裏技は編集部で教えるわけにいかないので、後輩を飲みの誘うのだが「エ〜。また先輩の手柄話聞くんですか〜」とあっさり断られることも多かった。どの世界でもワザの伝承というのは難しいものである。