テレビを10倍楽しむ。バラエティはジャズのノリ編
スタ誕!から「中3トリオ」発進
「テレビ局とタレント事務所の力関係」―こんな言い方あるが、早い話、どちらがギャラを決めるか、である。テレビ草創期、ジャズミュージシャンの渡辺晋氏(故人)、その妻・美佐氏がタレントの地位向上もねらい渡辺プロダクションを設立。テレビ業界の歌番組やバラエティ番組を一手に仕切ったため、ギャラが高騰。日本テレビは「スター誕生!」に活を求めることになったようだ。山口百恵(ホリプロ)、森昌子(ホリプロ)、桜田淳子(サンミュージック=活動当時)の「中三トリオ」を生んだ。こうした場合、3人とも同じ事務所の方がマネージメントしやすい筈。しかし、当初ホリプロを希望した桜田だったがサンミュージックに落ち着いた。これには日テレの意向があったようだ。タレント事務所全体を管理下に置きたい局のバランス感覚というか深謀遠慮だったのだろうか。
新番組とギャラの意外な関係
タレントは局によって格付けが決まっている。一般的にはギャラが下がるということはない。経済学でいう「賃金の下方硬直制」のようなものだ。タレントに労働組合はないわけだが、局が強引にギャラを下げたという話は聞いたことがない。だから長寿番組に出ているレギュラー陣のギャラの総額は膨大で、制作費に占める割合も高くなる。それでも続くのは視聴率が高いか、一社提供などに見られるスポンサーの強いこだわりによる場合だ。
制作費に占めるギャラの割合を下げるには、番組を終わらせ更地にするしかない。新番組の意味合いは企画を新しくする以外に、ギャラを抑える意味合いもある。
ジャズの人材がバラエティの基礎に
バラエティの取材をしていて感じたことは、ジャズとクラシックの世界からテレビに進出した人材が多いことだ。渡辺晋氏は既に書いたが、「シャボン玉ホリデー」(日テレ)の井原高忠プロデューサーは慶應大学時代にバンドマンとしてジャズを演奏していた。レナウンCM「ワンサカ娘」の音楽を担当し「寺内貫太郎一家」(向田邦子脚本=故人、久世光彦演出 TBS)では主役を演じた小林亜星氏もジャズマン。井原氏の下で「11PM」(日テレ)司会を務めた大橋巨泉氏(故人)はジャズ評論家の肩書も持っていた。「今夜は最高!」(日テレ)のタモリさんもジャズに詳しい。「8時だョ!全員集合」(TBS)の音楽は東京藝大出の山本直純氏(故人)が作っていた。洒落が通じて新しい物好きのジャズマン。音楽の基礎ができているクラシック出身者。新しい曲を縦横無尽に扱い、短時間で仕上げるには、楽譜が読めることが最低限必要だったようだ。また、彼らのテクニックをもってすれば原曲がわからない程度まで編曲をして著作権料を回避する術も知っていた筈だ。世の中にはよく似た曲など掃いて捨てるほどあるのだから。曲を聴いて覚える従来の歌謡曲とはひと味違ったオシャレな雰囲気を番組にもたらすことにもなった。
バブル期、バラエティの収録スタジオでは「まいう」(上手い)、ギャラは「ゲー万デー千」(5万2000円)、「シータクでギーロッポン」(タクシーで六本木)とか、妖しげな言葉が飛び交っていたものだ。