テレビを10倍楽しむ。音楽番組編
ミュージシャンのテレビ離れの原因
今回は音楽番組を見ていきます。
音楽業界はレコードからカセットテープ、C D、そしてネット配信と媒体が劇的な変化を遂げた。これに伴い番組の作り方も変わった。
音楽担当記者(余談。どうした訳か音楽担当記者と宮内庁担当記者は自分たちを高級な人間だと思っている節がある)によると、ミュージシャンたちは「『都合の良い時だけテレビを利用する』などの有り難くない非難は避けたい。大抵、こうした人たちは売り上げに結びつくファンではない。テレビに〈借り〉を作って、不祥事の時にテレビカメラの前に引っ張り出され、釈明せざるを得なくなるのは嫌だ。自分のメッセージを伝えるにはライブやコンサートに限る」と思っているらしい。
テレビ用縮尺サイズ「ワン・ハーフ」
歌番組で記憶に残っているのは「レッツゴーヤング」(1974―86)である。NHKホールで公開収録していた。収録の日はNHK本館1階の社員食堂(1階、5階、13階の3カ所に社員食堂がある)で、アイドルたちがヒラヒラの衣装のままラーメンをすすっていたものだ。かつてテレビの音楽番組には「ワン・ハーフ」と言う言葉があった。1番の後に大サビを歌って終わりと言うテレビ用コンパクト版だ。尺に制限があるので致し方ない。これがミュージシャン離れを招いたと言う指摘もある。ゴルフ好きのテレビマンが名付けたのだろう。
バックダンサーはどこに消えた
かつての音楽番組にはバックダンサーがつきものだった。「レツヤン」は「サンデーズ」と言うオリジナルメンバーだったが、お馴染みはスクールメイツだろう。キャンデーズの3人はスクールメイツの出身だから、スター予備軍であり、ジャニーズJr.的要素もあったように思う。バブル崩壊、リーマンショックの制作費削減で絶滅危惧種のようになってしまった。
グループ全盛で複雑なカット割り
楽曲最大の変化は、曲がアップテンポになり、早口になったことではないかと思う。これにより演出上でもカット割りが複雑になった。モーニング娘。AKB 48、乃木坂46など人数が多いグループが増えて、この変化に拍車をかけた。カメラもフロア3台に手持ち1台、クレーン1台が当たり前になった。かつては1冊の台本で済ませていたが、現在は「MC台本」(しゃべり中心)と「歌台本」(歌詞中心)2冊に分けているらしい。確かに別々に打ち合わせをするので、この方が合理的なのだろう。歌詞テロップはサザンオールスターズの「勝手にシンドバッド」(1978)以降急激に普及したと言われる。さもありなん、である。
「テラハ」打ち切りに思うこと
「テラスハウス」(フジテレビ)が打ち切りになった。「レツヤン」でもアイドルに恋愛の噂が立つと客席から物が投げ込まれることがあったと思い出した。作り物(ドラマ)でない恋愛がそこにあるように見せる「演出」の妙。これを理解した上で楽しむのが流儀なのだろう。SNS時代になってインターネット上の「つぶやき」が、現実世界の石礫(いしつぶて)になってしまったようだ。