テレビを10倍楽しむ。クイズ編

 

 

和気藹々だった「連想ゲーム」

新型コロナウイルスによる肺炎で岡江久美子さんが亡くなりました。名番組「連想ゲーム」(NHK)のレギュラーでした。これほど和気藹々とした収録も珍しく、本番は編集なしの一発通し撮り。リハーサルは肩慣らしを兼ねて、キャプテンの加藤芳郎さん、中田喜子さんが予備の問題を出していました。なかなか正解に至らない時、ゲストにおデコを押しつけ「念」を送るなど、馬鹿馬鹿しいほど真剣でした。この「連想ゲーム」は後で触れることにします。

 

 

フジ視聴率3冠の立役者

今回はクイズ番組を見ていきます。悩ましいのは何をもって「クイズ番組」と言うかです。

クイズの要素を入れているバラエティ番組が多いからです。クイズ形式はテレビを見ている人に参加意識を持たせるには有効な演出となります。フジテレビで「なるほど!ザ・ワールド」(1981-96)が始まった時、クイズか、紀行か、バラエティか、どう分類するか、かなり悩みました。この番組のヒットから海外の異文化をおもしろ・おかしく紹介する番組はテレビの一分野となりました。

こうした番組が生まれ、フジテレビは1982年から12年連続で「3冠王」(ゴールデン=19〜22、プライム=19〜23、全日6〜24。3時間帯の視聴率)となりました。「1強3弱1番外地」と業界では言われました。名誉のために言いますが、現在のテレビ東京の急伸ぶりは目を見張るものがあります。

 

 

クイズ先進国アメリカに学べ

余談を挟みますが、アメリカ旅行をした時、日本とそっくりのクイズ番組を放送していてびっくりした人も多いと思います。ほとんどアメリカの方が「元祖」です。クイズ番組のフォーマット開発に関してはアメリカが先進国なのです。「連想ゲーム」もアメリカC B S「password」をヒントにしています。また番組名は控えますが、演出を優先するためにスタジオの隅に「正解」がセッティングされていることもありました。解答者はいかに面白い間違いを言うかが「腕」となり、バラエティ色が強くなります。アイドルがクイズ番組に出ないのはご想像の通りの理由です。

 

 

出世番組という都市伝説

閑話休題。フジ1強に立ち向かったのは現在トップに立っている日本テレビでした。秘密プロジェクトを立ち上げます。上層部の指示は「新しいクイズ番組を開発せよ」と言うものでした。そこで1週間分、全キー局の視聴率の動向を分析したのです。日テレはどんな名作でも「作品」ではなく「番組」と言うようになりました。「テレビ屋」のプライドを示したのです。こうして生まれたのが、クイズとはかけ離れた「進め!電波少年」(1992-98)でした。テレビ屋よりも電波屋の方がしっくりきますが。ここから日テレの躍進が始まります。

 

なぜ躍進のカギがクイズ番組にあると日テレ上層部は考えたのでしょう。ヒントはN H K「連想ゲーム」(1969-91)にありました。NHKには「連想ゲームを担当すると出世する」と言う都市伝説がありました。まず年度始めに1回セットを新しくするだけで使い回しが利く、M Cは局アナで足りる、編集をしないので収録時間が短い、何処となく教養の香りがする、ゲストのタレント性に依存しない、以心伝心の要素がありそれほど難しくない、問題は誰でも作れる。これで視聴率もいいのですからNHKにすれば「クイズの王道」です。都市伝説も生まれるわけです。普通、クイズの問題は「クイズ作家」に依頼するので緒経費込みで1問5万円と言われます。

 

現在、クイズ番組が増えてきました。不況下のテレビを救えるのか、注目しましょうか。