テレビを10倍楽しむ。視聴率編
視聴率はイワシの頭?
テレビの視聴率を調べているのは電通の子会社「ビデオリサーチ」社です。番組を販売している広告代理店が、視聴率を調べているわけで、なんとなくモヤモヤします。1960年代には外資系の「ニールセン」という視聴率調査もありましたが、2000年に地上波調査から撤退しました。視聴率表を買ってくれるところが少なかったからです。調査自体の品質より、使う人が多いほど便利になる「(インターネット業界の)プラットホームの法則」と同じような道理で、いまはビデオリサーチ社の独占になっています。ビ社と契約しているのは企業はテレビ局、マスコミなどです。それがメディアを通じて私たちの知るところとなるのです。視聴率は「イワシの頭も信心から」みたいな不思議な数字。あくまでマーケティング用の統計であって、単に「数字がいい」からと言って番組の質を担保するもではないことを知っておく必要があります。
タイムとスポット
テレビのスポンサーには大きく分けて2種類。「タイム」と呼ばれる番組提供型と、「スポット」という隙間投入型があります。
タイム(提供)
「タイム」は1クール(13回が一般的)の番組制作費を出して提供スポンサー(複数社の場合と1社提供がある)になり、番組内でCMを流します。4月、10月の改編期は別枠別料金になります。
スポット
「スポット」は番組と番組の間に流すCMです。「5分番組」はまさにスポットC Mを流すためにできたわけです。番組が増えるほどスポットを入れるスペースが増えます。前後に空きが出来るのです。スポットの契約には「のべ視聴率」(G R P)という指数を使います。
「タイム」は企業イメージを高めるため、「スポット」は個別の商品を売るために使うのが常道とされますが、そこはスポンサーの考え方で違ってきます。
のべ視聴率(G R P)の達成(スポットCMの契約方法)
スポンサーと局が200G R Pで契約した場合(例)
A局は視聴率16%、12%、6%の3番組があるとします。
(16%×5本)+(12%×6本)+(6%×8本)=200GRP
B局は視聴率8%、6%、3%の3番組です。
(8%×10本)+(6%×12本)+(3%×16本)=200GRP
15秒のスポットCM19本で200GRPを達成するA局に対し、B局は38本も必要なのです。
(GDPが高い方が商品の認知度が上がり、小売店の売り場確保などに有利になります。予算としては東京キー局(関東圏200GRPで2000万円が相場だそうです)。
細かい計算式はどうでもいいのですが、視聴率の高いA局の方が低いB局より効率的に利益を上げることがお分かりいただけると思います。視聴率は「利益率」と直結しているのです。
ここまでは1962年から始まったビデオリサーチ社の「世帯視聴率」(家単位)のお話でした。
さて、今年4月からビ社は世帯視聴率と並行して、より細分化した「個人視聴率」調査を全国展開します。いままで都市部だけで採用されていた方法です。テレビを見るとき「ピープルメーター」という測定器についた自分用ボタンを押す原始的な方法で、誰が見ていたかわかります。テレビ1台を家族全員で見る時代から、ひとり1台の時代に。パーソナル視聴に対応するためです。これはスポンサーの要望によるものでしょう。
NHKは地上波とネットの同時配信を一部の番組で始めました。民放は同時配信とはいきませんが番組の見逃し配信をネットでしています。パソコンやスマホによる視聴はサーバーにアクセスするので、電波よりも視聴者の捕捉が簡単とも言われます。ネット配信の分野ではニールセン社も健在で視聴動向を調べています。
視聴者の階層
C(子供)=男女4―12歳 T(ティーンエイジ)=男女13−19歳
M1=男20−34歳 M2=男35−49歳 M3=男50歳以上
F1=女20−34歳 F2=女35−49歳 F3=女50歳以上
これが広告代理店の使うマーケティングの年齢層区分です。
「フジテレビはF1を取り込んでいる」とかよく言われていました。
恋愛至上主義のドラマ群「月9」大ヒットで女性の心をとらえたフジテレビは民放の雄として君臨していました。スポンサーは購買力があるF1の支持を喜ぶのです。フジテレビが斜陽気味になっても「F1のフジ」のチャンネルイメージは続き、業績が急落しなかった際はグライダー効果などと言われました。
スポンサーにとっては、どの層が見ているかは大変重要です。
T B Sは人気時代劇「水戸黄門」を2011年に終わらせました。時代劇はお年寄りのファンが多く日本酒のメーカーなどにとってはピッタリなのですが、若い人があまり見ないのです。時代劇のレギュラー枠(再放送は除く)はNHKの大河ドラマだけになってしまいました。テレビ朝日は看板番組「相棒」がシリーズを重ね、見る人の年齢層も「持ち上がり」気味でした。若い人向けに同じコンビもの刑事ドラマ「ケイジとケンジ」を後継として企画したのですが、東出昌大のスキャンダルで台無しになってしまいました。