日銀利上げ、PB黒字化、新札発行。「失われた20年」清算に向かうのか

 

政策金利0.25%。住宅ローンに「金利がある世界」復活

日本銀行の植田和男総裁は、2024年7月31日、金融政策決定会合後に記者会見し、現在0~0.1%としている政策金利を0.25%ほどに引き上げると発表した。8月1日から。利上げは3月以来。国債の買い入れは月6兆円程度から月3兆円程度に半減させる計画だ。銀行預金、住宅ローンなど「金利がある世界」に踏み込む。「ゼロ金利」が常態化していたため若い人は面食らうかもしれない。

金利が上がれば普通、物価上昇は落ち着く。日米の金利差も縮まるので円高ドル安に振れることが予想される。円が高くなれば東京証券取引所の株式市場は調整局面に入るかもしれない。一方、米国FRBは現地時間、同日、政策金利を据え置くことを決めた。利下げはお預けとなった。

 

基礎的財政収支黒字は健全性でなく物価高が原因

その2日前、内閣府が「基礎的財政収支」(PB=プライマリーバランス)が2025年度一般会計で8000億円程度の黒字になりそうだと発表した。国債発行分を引いた歳入が、国債の利払い・買換え費用を引いた歳出を上回る。つまり借金なし(税収だけ)で政策経費が賄える、健全財政と言うわけである。ただ、実現不可能とずっと言われてきただけに降ってわいたような話ではある。

この根底には急激な物価上昇があるらしい。物価が上がると、商品が高騰するので利益率はともかく(原材料費も上がってしまう)売上は伸びる。法人税はともかく消費税の納付額が多くなるのは間違いない。同じ税率でも歳入は膨張する。一方、歳出は「ゼロ・シーリング」といって各部門とも前年より予算の額面が増やせないようになっている。額面が同じなら物価上昇分だけ歳出が削減されたことになる道理だ。国の政策経費が収入源になっている施設などはかなり厳しいと推察される。

 

澁澤さんこんにちは。新札発行の真意を考える

7月初旬、新札が発行され約1カ月、普通にお目にかかるようになった。お札はおおよそ20年ごとにデザインを変える。偽札防止のためだが、実はタンス預金をあぶりだす役割もある。例えば、いま銀行や商店に聖徳太子(肖像)の1万円札を1000枚くらい持ち込んだら、額面通りに使えることは法律で決まっているのだが、「このおカネどうされました?」って聞かれること間違いなしだろう。タンスに入れておいただけで脱税したわけでも、盗んできたわけでもないないわけで「痛くもない腹を探られる」というやつだ。心理的に早く使ってしまおうと思わせるわけである。

海外メディアの報道をみてみると「日本の紙幣は美しい」と言ってはいるが、世界はキャッシュレスの方向で、「いまさら新紙幣とは時代錯誤」といった論調もあった。

 

 

財務省、固定資産税のつぎは流動資産税なんてね

「金利がある世界」になれば日銀が抱え込んでいる国債(580兆円)の利払いも多くなるし、物価が落ち着けばまた財政赤字は膨らむだろう。財務省が「固定資産税」があるのだから、「流動資産税」もありかな、なんて思いつくかもしれない。そうなればタンス預金が狙われるだろう。

 

「日銀利上げ」「PB黒字化」「新札発行」、の三題噺。お後はよろしかったでしょうか。