偽善
とある休日の朝、早い時間にいつものように散歩に出かけた。
心地良い季節、時間帯であり、気持ち良く歩いていた。
いつも大きな公園に入り横切っていくのだが、白いステッキを持った人が目に入った。
若い男性だった。
弱視の方であるのは間違いなく、公園内には黄色いプレートが無いため、道順を見失ったようだ。
そこで声をかけてみた。
「どこまで行きますか?」
「駅の方までです」
「なら僕もその方向なので、一緒に行きましょう」
二の腕を掴んでもらって一緒に歩きだした。
「今日はどこまで行くのですか」と聞くと
「高田馬場までです」
「あら、遠いですね。何しに行くのですか?」
「ドラムのオーデションを受けに行くんですよ」
「えー!凄いなー」と驚く。
スティックを持つ手にまめができるほどやっているそうだ。
「お兄さんは何か楽器をやらないのですか?」
「あ、たまにギター弾くよ。アコギだけど」
「どんな音楽をやるんですか?」
「アリスとか、、知ってる?」
「”あなたは 稲妻のようーに 私の心を~”」と大きな声で歌い出した。
僕の知っている障害者の方は得てしてこのように元気であることが多い。
「あーそれそれ。良く知っていますね」
「僕も好きなんですよー」
と会話している間に駅のエレベーターに着いたので、「この辺で大丈夫?」と聞くと
「もう大丈夫です」との返事。
「オーデション、頑張ってね」
と言って手を振って別れた。
手を振っても意味ないか。
何故か彼に元気をもらったようで、気分が良くなり、散歩を続けた。
と、途中で湧き上がる思い。
この高揚感は明らかに人助けにしたことによる満足感であり、その人を助けたいと言う気持ちよりも
自分の心を満たしたいと言う欲求のなせる行為だったのではないか?
自分を責める必要も無いのだが、へそ曲がりの為か、いつもこのように自分の心持ちを考えてしまう。
以前、本社がまだ六本木にあった頃の話。
本社付近は坂道が多く、先輩と帰宅途中、車椅子の方がその坂道を一生懸命手で漕いで
登っているのを目にした。
すかさず「すいません」と言って先輩から離れ、車椅子の方の所に行き、押して本社の入り口まで
連れて行った。
先輩の所に戻ると「君も良くやるね~」と言われた。
その場で特に気にする事は無かったが、当時の記憶がよみがえった。
“人の為に善い”と書いて偽善。
僕の行為は結局"偽善"なのだろうか、と少し考えてみたけど良く分からない。
心理学や、宗教の本を読んでも特段、何か答えがある訳でもなかった。
とは言え、相手も助かり、自分も喜べるなら一石二鳥で悪い事は無いかもしれない。
この偽善に苦しむのはそもそも人間の業の一つ。不善の心と言えるのならば煩悩とも言い換えることが出来る
だろう。
煩悩なるものを滅尽し、解脱できたのは仏陀のみかもしれない(自称解脱者ならたくさん存在する)。
所謂悟りを開いたと言うべきだろう。
キリストもそうかもしれない。
良く分からないが、ムハンマドは預言者(神の声を預かり、語る者)だから違うのかな?
よって、自分のような人間が人助けで満足したって特段変な事でもなく、恥ずかしがることも無いのだろう。
“偽善を感じる“事は自分の中に内在する悪を認識できた結果であり、その行為に対する善か悪かの判断は
時と場合、立ち位置や経験、もっと言えば天気、気温、様々な状況にも左右される。
それを対極的な立場から判断できる人はいない。
いるならそれは神に近い存在だろう。
人の行う”善”は全て”偽善”と考え、その都度自分の行為を振り返ることで何か真実のようなもの
に近づいていくのかもしれない。
所詮、ちっぽけなボンクラ人間なんだから、素直に思った通りに行うことが大事で、そこでとやかく考えて
行動に移せない方が、全てにとって不利益であり、非生産的な行為なのだと思う事にしよう。
おまけ
とある駐車場で
G20とE30。
E30は1982年に登場。サイズは全長/全幅/全高:最大 4,360 mm/1,680 mm/1,380 mm。
何と小さいことか。居住性は高くないけど、このサイズで一生懸命に考えられたPackagingだった。
7代目のG20は全長/全幅/全高:最大 4,720mm/1,825mm/1,475mm。
得たものも大きいが、失ったものの方が大きいように思う。
こっちは会社の駐車場
G20の購入の際にはジュリアももちろん候補だった。
クイックな動きとAlfaらしからぬ剛性感、まともなドライビングポジションには驚いたが、5500rpmで頭打ちになるエンジンと、
信頼性への不安(まるっきり新規開発)、Naviが付かない、変なインテリアデザイン、リアの居住性を考えてG20を選択した。
Alfaの営業と話すとつい話に引き込まれるので要注意。
世界的に不振なこの会社。トナーレで息を吹き返したようだが、車の出来具合がねぇ。。。
全てBEVにすると言っていたが、どうなるんでしょ。