BMW M340i xDrive 試乗

 

MC後の最新のM340i xDriveに乗ってきました。

Specのおさらい

全高1,440mm 全幅1,825mm 全長4,725mm 車両重量 1,730kg

最高出力 387ps/5,800rpm 最大トルク 51.0kg・m/5,000rpm

価格 約1,082万円

4WDのみの設定で、直列6気筒エンジン搭載。さすがに重く、1700Kgを超える重量級。

 

眺めてみて

フロントがすっきりして、MC前のゴチャゴチャ感が消えた。

見栄えは悪くない。

ただヘッドライトの下端がまっすぐになりE46へのオマージュが早々と消えてしまった。

こういう神経が分からん。

リア周りはバンパーの形状が変わり、リアのエアの巻き込みを少なくしている印象。

MC前は巻き込みが大きく、少なからず空気抵抗に影響があったはず(巻き込むと

負圧が生じ、車を引っ張る方向に働く)。

その証拠にいつもリアに埃がくっついていた。

グリルの形状も若干変わっているのかもしれないが、不明。

全体的に大きな変更はなく、エクステリアにはあまりお金をかけていない。

 

触れてみて

乗り込みます。

シートは例のごとく、安革でゴワゴワ。

耐久性は高いかもしれないが、今時こんな型押し、安物革を使っているのが理解できない。

長く乗ると、お尻が痛く乗るのは経験済み。

ポジションはばっちり。

目の前にはMercedesから拝借した板状のメーター、ディスプレイ。

BMWは物理スイッチを無くす方向だそうで、空調ボタンが今回消えた。

次いでにシフトレバーも親指と人差し指でつまむものに変更。

流行りに追求しないわけにはいかないのだろう。

板状ディスプレイもシフトレバーの小型化も何も進化したとは思えないし、かえって

使いにくいだけ。

ここまで落ちぶれるとは思わなかったが、常に新しいものを求めていかないとメーカーの

求心力が低くなるとの恐れがある。

良いか、悪いか、と判断している暇は無いし、悲しいかな、アイデアもない。

これが我々の考えるBestである、と言ったかつての姿勢は全く見られない。

まあ、このメーカーの姿勢に関してはもう期待しても無駄だが。。。

 

M340iのインパネ。インパネ上半分を作り替えている。金型は高かっただろう。横長ディスプレイが鬱陶しいが、

大きくなければダメらしい。地図が横長に表示されてもあんまり意味無いと思うけど。

MC前のインパネ。多少正気を保っていたが、まあ、似たり寄ったりで基本的にはNG。

 

走ってみて

一度思い切り空吹かしする。

「ブオン!」と懐かしい直列6気筒の回転感。

この重厚感は何となく高性能を感じさせる。

慣れないシフトレバーの操作についてインストラクションを受け、Sports Pro、

Manualシフトに設定。

例の50メートル インプレッション。

うん、特に変な感じは無い。フリクションが少ないとか、エンジンがスムースとか、

剛性感の高さとかは想定内。

特に感銘を受けるものは無かった。

ステアフィールは420iのような違和感はなく、僕の330iと似たような感じ。

適度な反力もあり、大変好ましい。

最初に感じたのはフロントの重さ。

僕の車よりも100㎏重いが、その多くがフロントの集中していることもあり、その"重り"が

効いている感じ。

4WDの影響かと思ったが、街中を普通に走っている分にはフロントへのトルク配分はゼロに

近いはず。

単純に頭が重いのだろう。

330iの首都高速などでの異様な回頭性の良さはフロント周りを固めただけでなく、単純に

4気筒エンジンが軽いことも要因だった。

乗り心地は良くなっている。

特に低速域のハーシュネスが低減されている。

大きなギャップ等には角のある突き上げ感はあるが、それ以外はマイルドになった。

かなり批判されたので、改めてきたのでしょう。

 

さて、期待のエンジンはどうか。

とりあえず奥まで踏む。

速い。

387PSは伊達ではない。 0-100kmhは4.3秒と言うので、これは明らかに4WDの恩恵だ。

このジャーク感は久しぶりだ。

回転感は4気筒とあまり変わらず、ワクワクするようなものではない。

エンジン音もあまり室内に入ってこないし、作った音もおとなしめだ。

上まで回しても炸裂するような加速感は無いし、至ってジェントルな印象。

M340iのエンジンとして考えると刺激が少ない。

車が「回してくれよー」と言ってこない感じ。

どこでもいつでもレスポンス良く反応してくれるのだが、何となく大排気量のエンジンが

お行儀よく回っているとでもいうか。。

このエンジンに直列6気筒の気持ち良さを期待すると裏切られる。

なにも不具合は無いし、滑らかに回るし、ターボラグも感じないのだが、無味乾燥な印象がある。

僕が昔から表現していた「重いムービングパーツが油の中でしっとり回っている」ような

感覚は薄かった。

敢えて言うと黒子的であり、手に入るのは”速さ”だけのように感じてしまった。

(TOYOTAの速い車みたいな。。)

中々良かったのはAudio。

harman/kardon サラウンド・サウンド・システム(464W、16スピーカー、9チャンネル・

サラウンド)

といったものが付いており、かなり音が立体的に出てきて驚いた。

一つ一つの音もきれいだし、中低音もしっかり出ていた。

ここまでクリアだと、だれでも感動するはず。

ちゃんと聴くとサラウンドの影響か、音の分離が明確すぎて、まとまりが悪いこと。

如何にも輪郭がはっきりしすぎていて、作られた音のように感じてしまう。

僕はしっとりとした落ち着いた音が好きなので、このsysemあまり好きな方ではない。

なんせ、Tapeの時代が一番好きなくらいなもんなんで。。

でも純正としては中々良い音でした。

 

降りてみて

MCによる車の進化はあまり感じなかった。

乗り心地が進化したぐらいで、使い勝手を悪くしたインパネになったことを考えると

MC前の今の方がまだ、まし。(低レベルの比較なのが情けない。。)

エクステリアに関しては、基本的にどの車もデビュー直後の方がデザイナーの意図や、

表現したかったことが反映されており、僕は好ましいと思っている。

MCのデザインはその時の流行りや、趨勢に影響され、変化のための変化であることが多く、

あまり好きではない。

期待の直6はこれまで僕が乗ったBMWの中で一番印象が薄いものだった。

出来の良い国産車のエンジンとそう変わらない印象で、何かが際立っているとか、気持ち良いとか、

声を上げたくなるような気持ち良さもなかった。

ただスムースで、奇麗に振動なく回るだけ。

BMWにそんなエンジンを求めていたわけではない。

ある意味、M3も似たような方向で作られていた。

M系に乗って初めて「走れー!回せー!」と車が語り掛けてこない車だった。

M340iも同様。

刺激は”速さ”のみで、僕のレベルではこの速さを楽しみに変えるだけのSkillがない。

S字のコーナーがあり、そこをけっこうな速度で走ってみたが、ステアの正確性も高く、

ロールも少なくすんなりと走り抜けた。

安定感抜群で、不安要素はゼロ。

凄い走りだが、車の動きが掴みにくい。

良い車であり、ここまでのレベルの車を作り出すには大変な技術だと思うのだが、ドライバーへ

語り掛けてくるようなものが相当薄まっているように思う。

いつの間にかコーナーを抜けている印象。

そのためか、降りた後の車の印象がとても薄いのだ。

比較するものではないが、M2 コンペで走った時は4輪の動きや、車の挙動が手に取れるような

印象があった。

ディーラーに戻って最初の一言は「楽しかった!」だった。

M340iがこういった車である必要は無いし、目指してもいないのだが、その要素や片鱗を

感じさせても良いのではないだろうか。

あまりにも高性能なのかもしれないが、BMWを好きでこれまで乗り続けてきた人には

”変わった”と感じられるに違いない。

 

この車の一番の問題は価格だ。

車の評価はあくまでも相対評価だが、その一部に価格も大きく含まれる。

1082万円。

1000万を超えるような車であれば強烈な個性が必要だと思う。

この車にはそこまでの個性は無く、いつかどこかで聞いた「柔らかな高性能」な車に過ぎない。

僕の感覚ではせいぜい750万円というところ。

 

営業さんがこれからもBMWが変わっていきます。凄く変わるはずです。と言ったことを思い出す。

考えてみればもう昭和のUserはターゲットにしていないのだ。

昔はこうだった、良かったと懐古するような人をもう相手にしていない。

新しい価値観を理解してくれる次の世代をターゲットにしている。

今のBMWを理解できなければ、他へどうぞ、と思っているに違いない。

確かにこれだけの高性能な車を提供できるメーカーは少ない。

そこは素直に感心する。

先日乗ったクラウンクロスオーバーとは比較にならないぐらいに良い車でした。

ただこれまでの車作りとは何かが違う。

BMWの新しい価値観や方向性について市場がどう反応するのか知らぬが、昨年の

売り上げをみると大方間違っていないようである。

(販売台数は少なくなったが、売り上げは大きく伸びた。2022年通期の決算だと

純利益は49%増と伸び、2年連続で増益を達成。販売台数はBMWブランドだと

210万0692台だった。前年比5.1%減)

値上げの効果だと思うが、車作りの方向性は正しいという事でしょう。

すると僕のM 340iへの印象は、時代に取り残されたおっさんの戯言なのでしょう。

 

すっきりとしたフロントは良いと思うが、バンパーの造形の為か、オーバーハングが長く見える。

E46のオマージュは消えてしまった。

リアはあまり変えていないが、バンパーの処理を変えて巻き込みを抑えているはず。でも変に回り込んでいる

ようでもあり微妙か?

 

最後に

暑かった日だったためかエアコンが効かなかった。

20度まで下げても同様。

エアダクトの位置が下がり、面積も小さくなったことが原因なのか?(横長になったが)

まさかとは思うが、この冷えない状況は以前のBMWのようだと思ってしまいました。