日産キックス試乗

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日産キックス試乗記

日産キックスに一般道路と高速道路に乗る機会があったのでその感想を。

成り立ち
この車は海外では既に4年前から販売されており、国内軽視のゴーン体制下では売れ筋のでさえ
日本へ導入させていなかった。
Jukeの国内導入見送りが決まり、キックスの海外e-Power進出をきっかけに日本国内でも
販売すると決まった。
よって新規開発車ではなく、新型車と言いながらもその技術的バックボーンは8年以上前の車である。
ベースはBプラットフォームを持つノート。
新しいCMF(Common Module Family)の採用は見送られた。
国内導入に際してフロント、リアの意匠変更が行われ、インパネも少し手を入れた。
その結果、スタイリングはリフレッシュされ、古さを感じなくなっている。
SUVらしいラキッド感があり、僕は好きな方だ。
Specは以下の通り。
全長×全幅×全高 4290×1760×1610mm
車両重量 1350kg
定格出力 70kW(95PS)最高出力 95kW(129PS)/4000-8992rpm
最大トルク 260N・m(26.5kgf・m)/500-3008rpm
1.6リッターエンジンの出力と、2.5リッターのトルクってところ。


触れてみて
シートはサイズが小さい気もするが、悪くないと思う。腰があり、掛け心地も良い。
反対にリアは座面が小さく、腿のサポートが少し甘い。この辺りは広く見せるための手段かもしれない。
シートを一番下に降ろしてもステアが少し低い。コマンドポジションで座らせるのであれば、

もう少しステアを上に上げられるようにすべき。
パッケージングとしては問題ない。キャビンが大きくとられており、視界も良い。この辺は昨今の

クーペチックのSUVよりは数倍よろしい。
リアの空間も充分で、HPが高く、膝裏が浮くことなく、真下にすとんと下せる。
こういったパッケージングの作りこみは日産の生真面目さが表れていると思う。
評価高い。
質感は国内導入の見直しのためか知らないが、ソフトパッドの使用で値段相応で悪くない。
変なギミックが無く、シンプルで操作性も高い。
訳分からない330iの操作系と比較するととても気持ち良い。
やはり車のインパネはこうでなくてはいけない。

走ってみて
公道に出る。
この車に期待するのはやはりe-Powerによる中低速のトルクの厚さ。要するに加速度の変化が
期待値を超えるかどうかだ。
アクセルを強く踏むとそこそこの加速度の変化を味わえる。はっきり言えば思ったほどではない。
ぐっと引っ張られる(こいつはFF)ような強い感じは無かった。
ただ上り坂では意外と力強く感じた。この辺が普通のガソリンエンジン車とは異なる所。
極低回転でも引っ張っていく様は正にモーターである。
但しエンジンの存在はやはり感じられ、頻繁に止まったりかかったりする。
その際のマナーが悪く、煩わしく感じる。
また強くアクセルを踏み込んだ後などはアクセルを離しているにもかかわらず勝手にエンジン回転が
高まり、チャージを行うこともあり、自分の感覚や意思とは関係なくエンジンが動いているのは少し
気持ち悪い。また、その際にステアに変な振動が伝わったるすることもある。
慣れの範疇だが、エンジンはあくまでも発電機という事が実感させられる。

ステアフィールはそんなに悪くなかった。パワステも変な制御が見受けられず、素直であった。
もちろん、Direct感も少なく、ステアが気持ち良い部類の物ではないが、普通に街を流している分には
適当と思える。
乗り心地についても不満ない。突き上げ感もなく、変な柔らかさもない。重心が高い車ではあるが、
フラフラもしておらず、嫌なロールもない。
うまいところでチューニングしてあり、殆ど文句なしだった。
静粛性に関しては程ほどか。このクラスを考えれば十分だと思った。

高速道路でも好印象は変わらない。
速度を上げると多少のピッチングが出てくるが、特に醜いものではない。
110キロぐらいからアクセルを踏むとさすがにモーター故に苦しくなるが、通常走行であれば
不満は無いだろう。
街中での走りとあまり変わらず、TOYOTAの車のように豹変する事は無かった。
こういったところはやはり日産車作りの良さであり、腐っても鯛といったところかな。
プロパイロットはちゃんと機能した。
330iで少し慣れていることもあり、違和感は少なかったが、やっぱり好きにはなれない。
直ぐにOffにした。

降りてみて
ほぼ大絶賛のように書いているが、あくまでも実用性と言った点での感想だ。
車の魅力は走れば良いだけではなく、やはり何かしら魅力が無ければいけないと僕は思う。
この車の最大の魅力は恐らくe-Powerなのだと思うが、こいつの評価は悪くないが、騒ぐものでもない
と言ったところが率直な感想だ。
まず、思ったよりもモーターによる低中速の加速度の変化が低い。トルク不足とは決して思わないが、
ダウンサイジングターボエンジンと比較すると強い加速度が得られない。
回せば回すほどにその感覚が強くなる。
また、エンジンが頻繁にかかったり、止まったりするのも鬱陶しい。
TOYOTAのHEVはエンジンの存在がアクセルを強く踏んだ時以外分からないぐらいだが、

このe-Powerは存在感を主張し過ぎだ。
制御、エンジンマウントなどの問題だと思うが、もう少しエンジンの主張を抑えるべきだと思う。
そしてこの車の大きな問題は質感だ。
公道に出て50メートル走った時に感じたことを大事にしているが、この車からは何も感じなった。
Body自体の剛性感は低くないので、変な安っぽさは無い。
ステアフィール、エンジン、駆動系のフリクション、足回りのフリクションなどから質感は総合的に
得られるものだと思うが、キックスからは何も上質なものを感じなかった。
いやいやこのクラスのSUVに質感を求めるか?と言いう意見もあると思うが、少なくともこの車は
NAVIなど付ければ車両価格300万円を超える車である。
そう考えるともう少し走りの質感が高くても良いと思うのだ。
Golfでも同じ値段でTSI コンフォートラインが買える。
Golfは乗った途端に「うわ!良い車だなこりゃ」と口に出るようなフリクションのない走りと力強い
エンジン、質感の高さがある。
そういったことをキックスには一切感じなかったのだ。
ただ、何となく走らせてしまうような感覚がある。
何故だろうか。。
考えみればキックスはアメリカで200万円ぐらいから売られている。
Optionが無い素のグレードだと思うが、それでもかなり安い車だ。
国内販売のキックスはe-Power Unitを国内で生産し、タイまで輸出し、その後タイで組み立てる。
それから再度日本へ輸出する仕組みで作られており、意外とそういった事情から高めに設定
されている可能性もある。(国内向けはプロパイロットなど運転支援装備も標準だが。)
この車に不満は無いが、走らせる事において「魅力ある」とは全く思えなかったのが本音だ。

車の試乗ではその直前に乗った車でかなり印象が左右される。
BMW 330iと比較したらそれはキックスは分が悪いだろう。
でもそれはGolfだって一緒だ。
今回、ここまでキックスの走りには質感の高さは感じられなかったのは意外だった。
ただ道具として、生活の足として使用するに際しては良いパッケージング、不満のない足周り、
適度な加速感、モーターによる走りの新鮮さは魅力に映るだろうし、買っても後悔無いと思う。
ただ、FMC前のGolfに乗ってみてから買うのも良いかなと思う。

 

意外と好きだったりするスタイリング。

ラギット感もあり、Sportyでもある。 Packageingは真面目。

国内導入に当たって、かなりCostをかけた結果でもある。

インテリアのデザインも高評価。配色も良いし、質感もそこそこ。

使い勝手も悪くない。必要なものが整然と整理して置かれている。論理的なところも

評価が高い。

ステリングにあるスイッチは小さく、ボタン同士がくっついていたこともあり、使い難かった。

要改善点だ。


質感について
車の走りの質感の差異とはなんぞや?
それをどう感じているか説明するのは難しいのだが、例えば、高級AudioのAMPのVolumeを
回した際の気持ち良さを上げてみる。
今のAudio製品のVolumeはリモコン対応が多いこともあり、回すとフリクションたっぷりでゴム感が強く、
微妙な調整がし難い。回すとゴリゴリした感じもあり、いつもがっかりする。
それに比較して20万ぐらいするAMPのVolumeはしっとり感があり、微妙な調整も可能で、
回すこと自体に心地良さを感じる。
これは誰にでも分かる感覚だと思う。
こういったような感覚を車を運転し、走らせる事で分かる事もある。
何となく乗るのではなく、走らせる事に集中し自分の操作に対する車の反応を感じるように
心がけると、自ずと質感の違いも感じられるようになると思う。
まあ、一番分かり易いのは20年前の使い古した車と最新の車と比較することなんでしょうけど。