私は幼い頃から映画が好きで、その始まりは小学生にもならない時、年の離れた従兄に度々連れていってもらった洋画専門館で観た映画。かすかに記憶に残っているのはジョニー・ワイズミュラー主演のターザン映画だ。

 

木の肘掛けに茶色い革を張った使い込まれた椅子に座り、ブザーが鳴って薄暗くなると目の前の緞帳がするすると開き、カタカタカタ…と映写機が廻り始める。真っ暗ななか、突然音楽が響き眩しい画面が現れる。そしてМGМのライオンが首をかしげてひと声吠えると日常を離れ非日常の世界へと引き込まれてしまう。そんな儀式と共に訪れる興奮に私は夢中になった。

 

その従兄が洋画好きだったせいでよく連れていってもらったが、漢字も読めない年頃で字幕しかない映画。会話なんてほとんど分からない映画でもなぜか楽しかった。その映画館「セントラル」の裏手には街なかを流れる清流があった。

 

その映画館の想い出は常に、水中で長い水草(みずくさ)が流れに添ってたなびく透明でキラキラ光る美しい水面(みなも)と絶えることのない涼しげな水音と共にある。