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をもひでたなおろし

2024年に還暦を迎えた男のブログ

半ば落ち込んだ気持ちを抱え、僕は福岡の実家に戻った。

戻ったのはいいが、会社を辞めてきた「浪人」の立場だ。実家に戻ったとはいえ

両親の冷たい視線に耐えなければならなかったのでかなり参った。

オヤジは煩く言わなかったが、母の方が僕の立場に我慢出来なかったようで

特に一文無しで帰って来たことを厳しく咎められた。言われることはいちいち尤もなので

黙って小言に耐えるしかなかった。

 

そんなある日、新聞の地方版を読んでいた母が、僕に声を掛けた。

求人広告を指さしながら、履歴書を書いてここへ行け。という。

今とは違い、多少景気が悪くてもそれなりに選り好みをしなければ仕事は

直ぐに見つかっていた。当時の僕にとって(いまでも多少なりともそうかもしれないが)

母は絶対だったので、履歴書を書き上げ、広告に載っていた面接会場であるホテルへ行った。

 

大袈裟にホテルで面接をやってるにしては、応募者はそれほどいなかった。

会議室に通され、今思うとそれほど仕事な出来そうにない苦虫を嚙み潰したような顔をした

オジサンが4人、正面に座っていた。履歴書を見ながら、「商業高校卒業なら、少し

畑違いじゃないかな。」という質問をされた。ここでも就職先について失敗しているにも

関わらず、僕は面接に行った会社について予備知識を全く持ち合わせていなかった。

失敗に懲りてないない。と言われればそれまでだが、今度は母のお眼鏡に適った仕事である。

色々考えても仕方がない。得意の出まかせ口八丁で面接を凌いだ。

 

それから数日して、案外早く答えが出た。採用である。

商業高校卒は畑違いではなかったのか?案外いい加減な面接だったのな。と僕は独り言ちた。

とにかく1週間後から来てくれという。母は「選り好みできる立場じゃないでしょ」と

これもまた至極ごもっともの御言葉だったので、僕は自動的にその会社に転職する

ことになった。

 

さて、昔から僕を知っている人たちは僕がどんな仕事をしているのか?

理解している人は殆どいなかったので、良い機会なのでここで少し説明しておきたい。

 

僕の行った会社は「検査」を生業としている左程大きくない会社だった。

北九州には新日鐵(現日本製鉄)の城下町でそこの下請けや孫請けという

小さいものから大きな会社まで「協力会社」と呼ばれる会社がいくつも存在した。

僕はその中のひとつに引っかかったのだ。

 

仕事の内容は、「鋼の溶鋼の迅速分析」という普通の人には全く縁のない仕事である。

少し簡単に説明すると……

 

「鋼の溶鋼分析」とは、溶解状態にある鋼(溶鋼)の化学成分や微量元素を正確に測定し

品質管理や製品特性の最適化を行うための一連の分析技術を指します。

 

鋼の成分(例えば、炭素、マンガン、シリコン、リン、硫黄など)の精密な測定により

最終製品の機械的性質や耐食性、靭性などを予測・制御できます。

必要な元素の調整や添加材の選択により、求める特性をもった鋼を生み出すための

基盤となります。これにより、製造工程全体の生産性向上や、品質の一貫性が保たれるのです。

 

1.高温状態の溶鋼から迅速にサンプルを取り出し、冷却することで、分析前に化学反応や

成分変化が及ばないようにすること。

2.サンプルは固体に戻された後、必要に応じて粉砕や溶解、溶媒処理などの前処理が行われ

分析しやすい状態に整えます。

 

溶鋼の化学・物理的性質を測定するため、さまざまな分析手法が用いられています。

現場での迅速な分析方法としては…

 

光学放射分光分析 (OES)

  •  溶鋼中の各元素の放出光を測定し各元素の濃度を算出する手法。

慣性ガス融合法:

  • 特に炭素や窒素の定量に用いられる技術であり、溶鋼中のこれらの成分を正確に求める。

   

これらの手法を適切に組み合わせることで、精度の高い成分分析が可能となります。

 

日本では、溶鋼分析に関する詳細な手順や許容差、試験方法がJIS(日本工業規格)によって

定められています。例えば…

  • JIS G 0320: この規格は、鋼材の溶鋼分析方法について定めており、サンプリング方法、試験条件、化学成分の測定方法など、鋼の化学成分を決定するための基準が記載されています。
  • JIS G 0321: こちらは鋼材の製品分解分析方法及び許容変動値についての規格で製品ごとに求められる化学成分の正確な変動範囲や、分析の許容誤差が示されています。

これらの規格に準拠することで、鋼の品質が世界的にも一貫した基準に沿って

管理されることになります。

(GoogleCopilotより抜粋)

 

どうだろう、説明しても1発ではわからないだろうが、要するに「鍋のカレーの味見をする」

ようなものだと理解してもらえばよい。ついでに玉ねぎや人参やじゃが芋が鍋の中に

どのくらい入っているかを確認するための仕事。である。

 

母にどんな閃きがあったのかは、わからない。ただこの仕事が殆ど「一生を左右する」

モノになるのだから、何がキッカケでどんなふうに転ぶのか、人生はわからないものだ。