ヨーロッパの代表的な王家、ハプスブルク家のゲーザ・フォン・ハプスブルク大公を迎えて、10月11日(開演午後6時)、福岡シンフォニーホール(福岡市、アクロス福岡)で、来日講演とコンサートが開かれる。これを上田聖子さん(ミュージカル作曲家、音楽監督)と一緒に企画した武石理恵さん(イーアイエス社長、英国エコノミスト誌の日本語版発行)から声が掛かり、昨日、PRのためのマスコミ各社を回った。
ゲーザ大公は、オーストリア皇帝フランツ・ヨーゼフ1世とエリザベート皇后の血を引く直系で、ザクセン王国(旧東ドイツ南東部)最後の王の孫である。スイスのフリブール大学で博士号を取得した美術史学者でもある。
ハプスブルク家はオーストリア系とスペイン系に分かれ、中欧に650年間君臨した帝国を築き、崩壊した1918年まで存続した。
武石さんは30年来、ニューヨークで知り合ったゲーザ大公と交際があり、「福岡でミュージカルをやりたい」という上田さんの提案に、ハプスブルク大公なら私、呼べるわ」と武石さんが招聘を発案して、実現にこぎつけた。
ゲーザ大公は23年前、九州国立博物館建設は始まったときに福岡を訪れ、講演もしている。
現在85歳、居住地のニューヨークから来日し、東京と福岡で講演する。もちろん、これにウィーンミュージカルコンサートがセットになっている。
ハプスブルグ家はもとは、スイス北部の貴族の家系である。1273年、ルドルフ1世が神聖ローマ皇帝に選ばれて以来、勢力を拡大し、15世紀から神聖ローマ帝国位を独占してきた。
ハプスブルク家は戦争ではなく、婚姻によって領土を増やしていった。これが王家の誇りおようである。その象徴がスペイン王国である。
1479年、カスティリァ女王とアラゴン王の結婚によって誕生したスペイン王国。両王の間に生まれた娘とオーストリアのハプスブルク家フィリップが結婚したことで、ハプスブルク家はスペインとオーストリアに分かれた。
そして、1580年にはポルトガル王位をも継いで、アジア貿易を支配下に収める。これによって、全世界に領土を獲得した、「太陽の沈まぬ国」スペインが誕生する。
日本にも交易船が訪れ、交流が始まるが、長くは続かなかった。植民地帝国と見られたスペインを、日本は排除したからである。
ハプスブルク家の直系子孫の来福で、歴史的に私が興味をもつところは、この部分である、「ハプスブルク家には、日本の間もあり、蒔絵のコレクションには見るべきものがあります」(武石さん)
ゲーザ大公の講演では、一族の知られざる秘話が紹介されると武石さんがいっていたが、「戦争は他家に任せておけ、幸いなオーストリアよ、汝は結婚せよ」という家訓のごときこの言葉が象徴するように、ハプスブルグ家が領土を増やしていったのは婚姻戦略であった。ここの話にも興味が湧く。
天神(福岡市中央区)にある武石さんの事務所で、ゲーザ大公から贈られた分厚い数冊の図録を見たが、「これはまさに博物館」という印象を抱くほどの、ハプスブルク家の数々の遺産が紹介されていた。
来日するゲーザ大公は美術史学者であることから、その美しさと価値を歴史を踏まえ、解説している。貴重な図録製作には、武石さんもからんでいるとのことだった。
「平和への希求と文化の祭典」と銘打った、ゲーザ大公来日記念講演とコンサートである。
「21世紀の今、平和を望む私たちは、平和の中で生まれた美術、芸術、音楽をハプスブルク家の直系であるゲーザ大公からお聞きする機会が得られました」と主催者は述べている。
この10月11日の催しは、ネット上のホームページでも見ることができる。興味ある方は、来場を。おそらくケーザ大公にとっては、最後の日本講演になるのではないだろうか。