ここ数日、夜になるとユーチューブでジャズを聴いている。20代、東京の学生時代に、国分寺に住んでいたとき、工学院大でバンマスをやっているH君と出会い、彼の部屋でジャズをよく聞いた。当時、大学祭に出演した女性ボーカリスト、笠井紀美子の魅力的な声に惹かれたのと、新宿ピットインでピアニスト・山下洋輔のフリージャズという洗礼を浴びたのがきっかけで、よく聴くようになった。

 

 関西で新聞社を転々としたが、出会いに恵まれて、野外のジャズコンサートに行く機会も多々あった。琵琶湖、合歓の里、万博お祭り広場など仲間と行き、楽しんだ。琵琶湖はオールナイトだった。

 学生時代の仲間が、ときに京都に遊びに来て、荒神口角にある「作家の倉橋由美子の『暗い旅』に出てくるジャズ喫茶シアンクレールに案内してくれますか」といわれたとき、「よく調べているな」と驚いた。

 シアンクレールは1956年に開店した京都草分けのジャズ喫茶であり、学生運動で亡くなった立命館大の学生、高野悦子の『二十歳の原点』にもでて来ると彼に聞いた。彼女は学園闘争に疲れ、恋に破れて自死している。

 

 ジャズといえば、いろいろと思い浮ぶことが多い。最近聴いているのは、ジョンコルトレーン、マイルスデイビス、キースジャレット、マルウォルドロン、ハンクジョーンズ、チックコリア、フレディハバード、渡辺貞夫など、昔聴いた曲が多い。

 20代、30代、ジャズの専門誌『スイングジャーナル』を、特集ページを見て不定期ながら買って読んでいたが、いま、この雑誌はない。廃刊になって久しい。

 

 そこで、古本屋にいけば、何かあるのではないかと今日訪ねると、1冊あった。1996年1月号。目次の隣に見開き大の写真がありロンカーターがでていた。

 これといったものはない。ページをめくっていて、ビルク・ロウの連載「ジャズ・アネクドーツ」の翻訳者に、作家の村上春樹の名があるのには驚いた。第10回目はチャーリー・パーカー。これを村上春樹が訳している。訳文は6ページあり、その最後に訳者短信があった。「昔僕がジャズの店をやっている頃」の一文から、若い頃、神戸でジャズ喫茶をやっていたことを思い出した。

 

 村上春樹は、韓国に多くのファンがいる。ハルキストである。しかし、春樹がジャズ好きであることは韓国のファンも知っているであろうが、韓国のジャズプレーヤー、ジャズ喫茶についての情報に接したことがない。

 これは韓国に行ったとき、調べたいものだと思っている。「韓国で、ジャズを聴く」。私にとって未知の世界を探訪して、韓国事情を明らかすること自体、意義があるのではないか。ただし、これに関しては既に先駆者がいるはずである。その人たちの教えに導かれたいものである。