かつて朝鮮日報で活躍した、韓国を代表する言論人、李圭泰(イギュテ)の『韓国人の意識構造』正・続編2冊を繰り返し読み、日本と韓国の違いについて、考えた。李圭泰は、韓国人の美点と欠点を、容赦なく批判しているので、いろいろと参考になる。1970年代に書かれた古い本ながら、いまだ通用するものが多くある。そこで、韓国の特性を考えたい。日本にはないが、韓国にはある、という韓国的なものを挙げると何があるか。

 

 韓国は「恨(ハン)の国」、という言葉はよく聞く。もう一つある。「パリパリ精神」である。その意味は、急げ急げの精神となろうか。韓国の友人と付き合っていて、彼らが概して、行動的であり、はっきりものをいう姿勢には感心してしまう。

 戦後、長く続いた軍事政権の後に文民政権が生まれ、「日本に追いつけ」「日本を追い越せ」と努力を重ねて、韓国は急速に経済発展を遂げた。「パリパリ精神」の賜物である。その間、金大中大統領時代、IMF危機が表面化したが、それも見事に跳ね除けた。特色ある国づくりをめざし、ITで世界を引っ張る国ともなった。

 

 以前、釜山から福岡に来ていた韓国人留学生に、「パリパリ精神」を賛美する話をしたところ、「そうでしょうか」という怪訝な顔をされた。韓国では、幼いころから習い事を強いられ、人より上を目指せとばかりに、過酷な受験戦争に巻き込まれる。その息苦しさに、カナダやアメリカ、はたまたオーストラリアやニュージーランドなどに移民する人が後を絶たないと聞く。

 その留学生は「急げ、急げの空気に気疲れしてしまい、自分を見失しかねない危険性もあります。少し余裕がほしい。留学には、そのような目的もあります」と話してくれた。

 

 韓国には、受験戦争が終わると、徴兵制がある。分断国家につきまとう悲劇ともいえる。遊び盛りの青春期に、約2年間を軍隊生活に縛られるのである。避けては通れない。そして、就職戦争。近年、ソウルの名門大学を卒業しても、なかなか思うように就職できないそうだ。韓国も就職難の時代にある。非正規社員は、日本よりも多い。日本と同じように自殺大国で、若者の自殺も増えている。

 

 こう悲観的なことをいうと、韓国は息苦しい国のように思えるが、韓国人は、いたって楽観的である。「ケンチャナヨ」と笑い飛ばして、走り続ける。IMF危機のとき、政府の呼びかけに応え、国民は貴金属類を放出したりして、国の復興に協力した。

 韓国は、一気に日本と肩を並べ、一部の分野では日本を抜き去っている。世界的企業になったサムスンに象徴されるように…。  

 しかし、今日の韓国経済は失速しており、成長神話は長く続かない。

 将来、日本同様に、韓国にも少子高齢化社会が大きな課題として立ちはだかる。中国もそうである。労働人口が、これを支えるには、大きな負担が伴う時代が確実に訪れる。成長神話に取りつかれるのもいいが、日韓の二国間で、近未来に備えて共に学び、協力し合えるところは協力する姿勢が必要ではなかろうか。