倍音奏法
ピアノは、猫が弾いてもボールペンで弾いても音は変わらない、なのでどのようなタッチで弾こうがピアノの音色を変えることは出来ない、と昔からの論争があります。研究者のいるピティナでさえも現在この問題に明確な回答が得られてないようです。
でも実際、ピアノ発表会、コンクール、演奏会で多くの演奏を聴くと色々な個性で溢れているのが分かります。「なんでこんなに違うんだ」という感想を良く聞くことがあります。
少し視点を変えて考えてみると「猫」や「ボールペン」と「ピアニスト」の音を比べる実験には致命的な欠陥があることが分かります。
ベストな状態でポーンを単音を鳴らしたとき奏者によって音色はさほど変わらないのは紛れもない事実です。
しかしポーンと単音を鳴らして「革命のエチュード」を弾きましたとか、「月光」です、とかいうことはなく同時期または連続的に音が流れていくのがピアノ演奏だということは、誰も否定できないのではないでしょうか?
また単音でさえ猫に弾かせるのは実際難しく、不可能だと言えます。猫に鍵盤の上を歩かせたら肉球で他の音もなって滅茶苦茶な騒音となるでしょう。また爪で鍵盤を引っ掻く音も出てくると思いますので単音でポーンといい音を出すこと自体が難しく猫にピアノを弾くことは出来ません。
ボールペンの場合は、材質が固いため鍵盤を叩くとプラスティックの当たる固いノイズが音色に含まれる為、単音であったとしても人が指で弾いた音と違う音色になります。
そもそも音色ってなんだろう?と考えたとき音色を決定するのは材質や強弱、音の波形、ノイズといった様々な要素があるからです。
ピアノは小さいオーケストラとも呼ばれ楽器の王様だと言われています。ピアノの中には何百本もの弦が張られておりこれが曲のなかで共鳴し合い音色に様々な変化を与えます。つまり倍音です。ピアノはこれが非常に多い。
バンパーペダルを底まで踏むと全ての弦からバンパーを離すことが出来ますが実際の演奏ではペダルを一番底まで踏むことは非常に少ないです。
上級者であればあるほどハーフペダル以上に浅く頻繁にペダルを踏みかえることが多いのではないでしょうか?この状態ではバンパーは完全に弦から離れず薄く触ったり離れたりの運動を繰り返します。
また指で鍵盤を保持した時、バンパーペダルを一番底まで踏んだ時よりバンパーが少し上に上がることも音色を変える重要な要因です。
指だけでレガートを掛けたときペダルを踏んだ時と同様な効果が得られるのはこのためです。(指ペダル)
このように弦の倍音効果を最大限に利用しながら弾く奏法を「倍音奏法」と呼びたいと思います。
ペダリング、レガートの掛け方、音の保持、強弱、リズムなどピアノ演奏に影響を与える要素は相当数にありその組み合わせは天文学的数値になるでしょう。
アコースティックのバイオリンを弾き方によってオルガンの音を出すことが出来ないようにピアノの音は所詮、ピアノの音です。ですが1cm程度の狭い幅の中に無数の組み合わせが存在し錯覚の力によって人間はこれを感知することが出来る、ということが音色の違いの本質だと思います。
ピアノの音は誰が弾いても一緒、だからピアノなんで誰でも弾ける、誰もが弾いても同じと悩んでいる人がこの記事をみて少しでも回答になれば幸いです。
 
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