こんにちは!
嬉しい水曜休みの春分の日、午後から雨って本当ですか?

もう1週間も前の観劇記録です。
 
3月12日マチネ、そぼ降る雨の中、久々の日生劇場。
 
ブロードウェイミュージカル
カム フロム アウェイ」を見ました。
 
    

最初にこのミュージカルを知ったのは数年前のトニー賞授賞式のパフォーマンス。
その年の最優秀演出賞受賞作品、911起因の物語という背景、また、舞台となっているニューファンドランド島が大好きな映画「シッピング・ニュース」のロケ地でもあるということで勝手に親近感を抱いており、いつかこのミュージカル見たいなあ…と漠然と思っていました。
ずっと機会がないままバンデミック期に突入。
長いロックダウンを経て、2021年、ブロードウェイ再開後の公演が何とAppleTVで配信されると聞いて歓喜、即視聴してまず大感動。
とはいっても複雑な構成なので、何度か見てやっと全貌を理解することが出来ました。

2001年9月11日の全米同時多発テロで目的地に着陸出来なかった38機の航空機が、ニューファンドランド島のガンダー国際空港に緊急着陸。

ガンダーは1940年代から大西洋横断飛行の給油所として使用されており、大型航空機を扱う能力があり、またヨーロッパからの航空機はカナダ中部の主要空港を避けるように指示されたために着陸地として決定されたそう。

38機の乗客約7000人が、空港近くのコミュニティで歓迎を受け、数日後に無事帰路に就くことが出来たことは、911を取り巻く様々な報告の中でも幸せな物語の1つとして知られています。

このミュージカルはその中の1機の乗客たちの不安と、彼らを迎えた島民の混乱とホスピタリティを、たったの12人のキャストのみで描き上げています。

 
昨年3月頃に日本版初演の情報解禁があって、キャストが発表になった時はびっくり。
日本で演るんだ!&このキャストで?
作品力があるんだからここまでキャスト揃えなくても...とも思いましたが、古典でもなく大作でもなく、日本ではあまり知られていない小規模作品、でもこのキャストが一同に会するのであれば、チケットは絶対に売れる。
たくさんの方に見てもらえて、広く周知されればこんな嬉しいことはありません。
劇場が日生なのは今でも広すぎると思うし、昨今の大劇場チケ代高騰モードもあり、やっぱり高額設定のチケット代には切なさも覚えましたが、やはり一度は見たいとファーストクラスではありませんが、前方席を押さえました。

いつにも増して前置き、長過ぎますね!

【キャスト】

乗客ダイアンその他 安蘭けい
乗客ニックその他 石川禅
ゲイの乗客ケビンTその他 浦井健治
ガンダーのバス運転手ボブその他 加藤和樹
新人レポータージャニスその他 咲妃みゆ
動物愛護団体ボニーその他 シルビア・グラブ
ケビンTの恋人ケビンJその他 田代万里生
町長クロードその他 橋本さとし
機長ビバリーその他 濱田めぐみ
乗客ハンナその他 森公美子
世話係リーダービューラその他 柚希礼音
ガンダーの警官オズその他 吉原光夫

スタンバイ:上條駿、栗山絵美、湊陽奈、安福毅

開演前は撮影可能です。
割と前のほうの席だったけど、やっぱり少し遠いです、日生劇場。

 

以下、あくまで個人の感想です。

思い込み、勘違い多々あると思います。

登場人物は100人ほどになるそうですが、それを12人の俳優が次々に演じ分け、進行していきます。

メインの役よりもサブの役の比重大きな人、メインの役が中心で他の役はアンサンブル的にくるくる変わる人、様々なパターンがあります。

シンプルな舞台上で、椅子やテーブルを動かすことによって、町のダイナー、飛行機内、様々な場所が現れます。

盆が回り躍動感を表現、小道具、衣装などによる工夫に溢れる舞台演出に目を見張りながら、時にはシリアスに時には笑いを交えて、物語はテンポよく進みます。

 

ブロードウェイ版配信で、キャストの役どころや立ち位置、展開を把握していたので、難なく舞台に没入。
ああ、この人がこの役だとこうなるんだ!と、配信版との違いを新鮮に感じながら思いきり楽しみました。
冒頭のwelcome to the rock♪からもう感涙!
これ、生で見たかった。
肩を揺らし、足を踏み鳴らすシンプルなアクションがあの迫力のコーラスと一緒になると、これから始まる怒涛の物語を彷彿、心が湧き立ちます。
 
まずはガンダーの日常と、あの日の衝撃。
それから数日に起こった非日常テンションの出来事が、各方向から暇なく迫ってきて心揺さぶられます。

様々な立場の人々の様々な感情を受け取りつつ、その場ごとの演出を味わい、ミュージカルの可能性を思い知るノンストップの100分。

 

配信を見てから、いろんな国のカンパニーの映像をチェックしてましたが、やっぱり日本版の皆さん、かっこ良過ぎます。
とにかくシュッとしてらして、全員隙がないなあと思いました。
ゆえにか、このミュージカルのひとつの肝でもある島民の土着感、緩やかさのようなものはあまり感じられなかったのが私的には、唯一残念でした。

目まぐるしく変わるシーンの複雑な動線を見事に熟して、膨大な台詞を発し、歌も歌って踊って、もちろん本当に大変なのにこちらに違和感持たせないのはやはり凄いし、よく知っている俳優さんばかりなので、全く立ち位置を見誤る事がなく、全シーンで引き込まれたのは間違いありません。

長いソロあった濱田めぐみさんと森公美子さんの歌唱は歌唱を越える機微が滲み、心震えました。
特に女性機長ビバリーの自叙伝的ソロは小気味良く希望に満ちていて、配信版でも何度も繰り返し見た名場面。
めぐみさんのあのいつもながらの憑依の歌唱に痺れます。
そして、それを後ろで見つめる他のキャストの暖かい表情がまた泣ける。
女性陣のコーラスにも心躍りました。
押し出しの強い役が多い印象の森公美子さんの抑えた演技もまた心に残りました。
安蘭けいさん&石川禅さん中年カップルの瑞々しいデュエットも素敵でした。
吉原光夫さんの存在感はやはり凄いし、久しぶりにダンスも見た!
今まで見たことなかった柚希礼音さんの肝っ玉マダムっぷりも楽しかった。
不思議なのは、配信版ではとても強い印象で残った役が、日本版では薄かったり、またその逆があったり。
やはりキャストの持つ力、個性で役の雰囲気が変わるの面白いなあとあらためて思いました。
こうしてキャストのいろんな顔が見られるのもこの作品の醍醐味。

状況が整い、まだ混乱の残る中、乗客は飛び立ちます。
残った人々、去った人々の心に去来する様々な感慨、寂寥感、その後日談シークエンスのたまらない切なさを生で味わえたのも嬉しかったです。

席に着いてからすぐ感じた、観客のこのミュージカルに対する前のめりな思い、というか期待。
舞台始まってからの大きな笑いや拍手、カテコの大喝采に至るまで、客席を流れる熱い空気を常に感じられ、私も大きな昂揚感に包まれました。
もちろん結果的には作品力、加えて、これだけの俳優が集まったことで放たれるパワーの賜物だと思います。

私は何度も配信版で見てからの観劇でしたので、かなり入り込めたし楽しめたのですが、初めてこの舞台で観劇された方の感想、興味津々です。
また、後方席や2階席からご覧になった方は見え方どうなのかな?

きっと、この公演終わった後も、違った形で再演されると思われる「カム フロム アウェイ
いろんな個性の俳優さんで見てみたくなる作品ですが、この豪華キャストで見られるのは今期だけかもしれません。
見る事が出来てよかった、素晴らしい初演です。