以下盛大にネタバレしています!
あくまで個人の感想です、間違い勘違いも多々あると思います。
よろしくお願いいたします。
勝手に思い込んでいた作品像と本編とのギャップに戸惑った初日の私はどこへやら、2回目からは俄然前のめりで小池修一郎先生ワールドと主演古川雄大さんの魅力を吸収。
観劇ごとに、共演の皆さま方の輝ける個性やいつも見ているミュージカル作品とは別角度の舞台の粋を噛みしめ反芻、楽しむことが出来ました。
説明ソング多っ!と、初日はほとんど入ってこなかった曲も、ゲネプロ動画等の効果もあり、メロディをしっかりとらえ口ずさみ、脳内Lupinソングの日々。
テーマ曲とも言うべきJe m'appelle lupin♪はキャッチーなメロディをベースに、心浮き立つ合いの手や魅惑の振り付けとのシンクロで、何度でも繰り返し再生したいナンバーに。
主要人物がフィナーレに向かい意気込みを掛け合う北斗七星の先に♪のゴージャスな構成は後半の白眉。
美しいヴァルメラ氏の扮装で古川さんが愛しい人への想いを歌う白いバラのような君♪
真彩希帆さんのソプラノだけじゃない歌唱力の凄みを思い知るアデュー、昨日までの私に♪など、単独で聴いても耳と心に残る名曲が数々。
女性アンサンブルの渾身のコーラス原始女性は太陽だった♪は圧巻、その後、歌姫アネットに扮した古川さんが嬉々として軽快に歌う恋の相手は自分で選ぶ♪
小西遼生さんシャーロック・ホームズが2幕の口開けにライバル、ルパンへの思いをたぎらせる永遠のライバル♪なかなかに壮大な展開のバラッドも毎回楽しみでした。
立石俊樹さん演じる敵役ボーマニャンのソロ、世界をこの手に♪は悪役冥利に尽きるであろうヒールな世界観に満ちた一大ナンバー。
私たちに馴染み深いどこか懐かしさを覚えるポップなナンバーが揃っているのは、ドーヴ・アチアさんの作曲に加えて太田健さんの編曲の妙が効いているのでしょうか。
まさにそれが小池先生のこのLupinワールドにフィットしているの、今さらながらに見事です。
この日の席は2階A席だったので、ほぼ古川さんにオペラをロック状態でした。
マジバン博士の声色、素晴らしい古川さんのおじいちゃん演技「ギックリ腰かもしれん!」ここの台詞、毎回微妙に変わるのが楽しみでした。
美貌の実業家ヴァルメラ夜会登場時の女性たちへの「おいで」、ジェーブル伯爵とダンス時の「柔らかい手だ」「働いたことがないものでね」のやり取りの呼吸、ジェーブル伯爵邸で長椅子の縁に腰かけるポーズ、続々とときめくポイント。
もちろん、真風さんジェーブルとのお互いを引き立てあう軽やかで華麗なダンスも目が潤う。
新聞記者エミールに変装時はいなせな身のこなしや目つきが魅力。
この回、エミールがホームズにサインもらうくだりで
清史郎イジドール「ホームズマニアなんですか?」古川エミール「いや記念にね」のところ、
イジドール「ルパンマニア...ホームズマニアなんですか?」エミール「...そうだよ!」に台詞変更。
その後の楽しそうなエミール古川さんの表情、忘れられません。
清史郎くんにつられてなのか、意図あってのアドリブなのか、客席沸きました。
クラリスに自分の出自を語る「俺の来し方を教えよう」シークエンスでも、古川さんラウールに釘付けでしたが、来し方ソングに溢れる情感に加えて、クラリス「ラウール」ルパン「そう、呼びたいのか?俺をそう呼んだのは母だけだ」
ここのタメも毎回変わる、行間に滲む驚きと喜びがたまらない。
あと、長椅子に腰かけての足の組み替えがもう視覚的にありがとうございます。
CANCANアネット時は、狙いすませたビジュアルに加えての上腕二頭筋チラ見せ、早着替え逃走後の色づいた頬、別れ際のクラリスへのキス、いくらなんでも高揚し過ぎの伯爵夫人との謎解き会談からのタンゴ、拷問時の明らかなサービス胸筋、傷だらけ破れシャツで過去の女性遍歴を吐露しつつ愛を誓う明日を信じて♪、ラストのプロポーズまでのキスと抱擁...
そこかしこに仕掛けられたの古川さんトラップに酔う。
そしてこの方、出ずっぱり、喋りぱなし、動きっぱなしなのに、滅多にミスをしない。
台詞が明瞭に入ってくるからストレスがなく、ちょっと噛んだね?さえもない、歌の音程は外さないし、ダンスやアクションは力みもないし緩みもない、本当に凄いと思うのです。
気負いの無さは素の古川さんに通じる部分でもあると思うのですが、与えられた役割を完璧にこなし、さらにその上に自己の魅力をしっかり滲ませ、いや上乗せして見せてくださるの毎回脱帽、どうしたって惚れ直します。
この回は特に歌声の艶と安定感とそこはかとなく漂ってきた外連味をも堪能、私自身の曲の定着もあって、全古川さんナンバーで胸を震わせました。
加えて、他のキャストの皆さまも毎回ワクワクの存在感。
やっぱりこの回の真風涼帆さん伯爵夫人、素敵でした!
まずビジュアルが大好き、醸し出されるキリリとスタイリッシュな雰囲気にも惹かれます。
禁欲的でノーブルなダンスも逆にセクシー、指先まで計算され尽くしたアクション、メリハリある演技にも前回に引き続き持っていかれました。
ラストのボート上での独白にはやっぱり客席から大きな反応、高笑いで捌ける時の大きな拍手、舞台の醍醐味です。
宝塚時代には機会がなかった真風さんのパフォーマンスを拝見できたのも嬉しかったです。
章平さんの各シーンでのもの凄い存在感、抑えた演技から溢れ出す非現実的な個性に痺れました。
この役を全うしての次の章平さんの役付きに興味津々です。
真彩希帆さんの魅惑の歌声はもちろん、全体を見据えた演技の素晴らしさにも心打たれました、まさしくカンパニーの華。
小西遼生さんホームズの説得力は期待していた以上で、何せビジュアルがこのワールドにおいて、理想のホームズ。
少し鼻にかかった良く通る声と、ストイックな演技が的確に置かれた台詞を引き立て笑いを誘います。
この回はとにかく、皆さま何もかも滑らかで絶好調、初日に感じた硬さも微塵もなく、それぞれの役割をそれぞれの力量十二分に発揮することでエンタテイメントとして仕上げ、幸せな時間を与えてくださった。
ラスト、ルパンの盛装でメインテーマを歌いマントを翻す古川さんの姿、何て頼もしくて美しいのだろうかとシンプルに目を潤わせつつ、ここまで登り詰めた古川さんの心情を勝手に推測して同調、感極まった帝劇千秋楽の夜。
カテコ、駆け足で登場する加藤清史郎さんイジドールと同時に、曲が北斗七星♪に変わるとこ、大好きです。
ゆっくりと現れ、一瞬笑ったかと思えば安堵のような複雑な表情を浮かべる古川さん。
ご挨拶では満面の笑み、「日々の活力、生きる上での彩りとなる作品。あと50公演、ハッピーを届け最後まで高みを目指す。」という端的で力強い言葉で締めくくられ、万雷の拍手と喝采の中、最後のマント翻しを失敗して少年のようにはにかみ「もう1回」とやり直す古川さん。
最後の最後に「本当に本当に心の底からありがとうございました!暗いので気を付けて、帰るまでがルパン」といつもの素朴で優しい送り出しで締めくくる古川さん。
まるで夢のように楽しい東京千秋楽公演が終わりました。
終演後は、同行の友人と帝劇地下のお店で閉店まで千秋楽の興奮をぶつけ合い、帝劇「Lupin」の名残を惜しみました。
「家に帰るまでがLupin」どころか、日付変わってもLupinでいっぱいな我々ですが、公演は御園座、梅芸、博多座、ホクトホールと続きます。
主演古川さんはじめ、シングルキャストの多いカンパニー、皆さまどうぞ健康で、大千秋楽まで完走されますように、心から祈っています。
博多座のLupinの設え、今から楽しみです!
これは帝劇のもう一箇所のシルクハット。