池波正太郎の「剣客商売」をたしなむ~剣の師弟の巻~ | 池波正太郎・三大シリーズをたしなむ

池波正太郎・三大シリーズをたしなむ

小説家・池波正太郎の代表作「剣客商売」「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」(三大シリーズ)の原作の解説や見どころを紹介しています。
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池波正太郎の「剣客商売」をたしなむ

~剣の師弟の巻~

 
みなさん、こんにちは。管理人の佐藤有です。
 
久しぶりの投稿となりましたが、「池波正太郎の剣客商売をたしなむ」は、今回から11巻の内容に突入します。
 
そして、本日は、秋山小兵衛が四谷道場の後継者にと目をかけていた元門人との再会と、苦渋の決断を描いた「剣の師弟」を紹介します。
 

剣客商売・剣の師弟のあらすじネタバレ

あらすじ1)
新緑がむせかえるような、爽やかなある日のこと。
 
秋山小兵衛は、駒込の外れに住む雲弘流の遣い手・平内太兵衛宅から、鐘ヶ淵に戻る道中、どこか深い木立に迷い込んでいました。
 
もうすぐ生まれる孫のことや、おはるに手を焼いていることを考えているうちに、道を間違えたようでしたが、この先は駒込・上富士前町に出られると見た小兵衛は、ひとまず前に進むことにし、あたりが夕闇につつまれかけている頃、遠くから人の叫び声が聞こえました。
 
現場では、短刀を持った町人風の男を相手に、侍2人が対峙しており、彼らは、その身なりの良さから主人持ちのように見えつつも、刀を使い慣れていないせいか、町人風の男の周囲をうろつくばかりで、一向に進展がありません。
 
一方、町人風の男は、このような光景になれているようで、短刀を右手に、左手で裾を上げて侍たちを圧倒し、去り際に侍1人を斬りつけて、どこかに去っていきます。
 
3人の滑稽な様子をすっかり見物していた小兵衛でしたが、侍たちは怪我の応急処置にも手間取っており、つい見かねて侍の止血を代わりにしてあげました。
 
侍たちは、染井村の近くに下屋敷を構える七千石の大身旗本・阿部壱岐守道直の家来であり、どうやら先ほどの町人を討たなければならない、事情があったようでした。
 
これ以上深入りにしないようにと、小兵衛は木立を向けた先・上富士前町へ向かい、通りすがりの町駕籠に乗って、湯島同朋町の旧浅野幸右衛門宅に向かいます。
 
旧幸右衛門宅には、元門人の植村友之助と下男・為七が住んでおり、ここ3ヶ月ほど友之助が顔を見せなかったため、何かあったのではと心配していました。
 
そして、六ツ半(午後7時)、湯島天神前で駕籠を下りた小兵衛は、三冬の安産を祈願すると、裏門外へ出て、煮売り酒屋「浮山」に入ります。
 
中は、常連客で溢れており、豆腐と酒を注文した小兵衛は、隣の客人と酒を酌み交わしながら、雑談を楽しんでいると、さきほどの町人風の男が浪人風の男を連れて店に入ってきます。
 
2人は店の奥の部屋に入っていくも、小兵衛は、浪人風の男が、四谷道場時代の門人・黒田精太郎と気が付きます。
 
黒田は、植村友之助と同様に、小兵衛が道場の跡継ぎにと考えていた門人でした。その頃、大治郎は大原の辻平右衛門先生の元へ旅立っており、何かと身の回りの世話をしてくれた黒田を可愛がっていました。
 
しかし、突然、黒田は道場を出ていき、神田・紺田町二丁目の医者・菅井九甫宅へ押し入り、菅井夫妻と医生1人を斬殺、百数十両ものの大金を盗む事件を起こし、江戸から逃亡してしまいます。
 
この事件は、菅井家の下男下女の訴えによって判明し、その後、黒田家はお取り潰しとなり、当主・三右衛門はまもなく病死し、兄・平内もその後消息不明となりました。
 
また、被害を受けた菅井九甫は、高利貸しも行なっており、生前は、黒田も金を借り入れていたと言われていましたが、町奉行所の取り調べでは、黒田の証文は見つかっておらず、この事実は、小兵衛は勿論、黒田の父・兄も初耳でした。
 
あの凄惨な事件から、十数年がたった現在、黒田は41,2歳になっており、着流しと羽織に立派な大小を差した出で立ちからは、浪人とは思えない贅沢な身なりに見え、浮山を後にした小兵衛は、その後、店を出てきた黒田一行を尾行します。
 
そして、本郷春木町二丁目の旅館・楠屋与兵衛方に入っていくのを見届けた小兵衛は、向かいにある臨済宗の寺・麟祥院の惣門下で見張に入るも、何かを思いついて上野・北大門町へ向かい、文蔵の元を訪ねます。
 
黒田精太郎の目撃から3日後の夕暮れ。鐘ヶ淵には北大門の文蔵と四谷の弥七が報告に訪れていました。
 
まず、阿部家下屋敷では、一晩おきに博奕が開かれており、そのあたりは傘徳に探りをまかせていました。
 
一方、楠屋は、麟祥院門前の茶店「井筒」の亭主・寅吉の協力を経て、文蔵が見張についていました。
 
黒田は、日に一度は外出をし、日暮れ近くに浮山に入り、その後は上野山下をふらついた後、一刻ほどで楠屋にもどってくるそうな。一方、浮山で見かけた町人風の男は、黒田と行動を共にしていないことから、別の場所にいるとみます。
 
2人には、怪しげな町人の連れとして、黒田の見張を頼んだものの、これでは一向に埒があきません。また、黒田の滞在する楠屋は、紹介人が必要な高級旅館のため、まずはその人物について探りを入れる方が賢明だと判断します。
 
しかし、その怪しげな連れが、黒田精太郎であることは、2人に打ち明けなかった小兵衛でしたが、これ以上黙っているわけにいかず、ついに黒田と自分の関係を打ち明けます。
 
黒田による菅井宅での事件は、江戸中に知れ渡り、文蔵や弥七もその事件を耳にしていたものの、まさか小兵衛の門人だったことは初耳であり、まして黒田の逃亡から2年後に四谷道場に入門した弥七は驚きを隠せずにいました。
 
あらすじ2)
その頃、楠屋の二階奥座敷にて、黒田精太郎と、先日小兵衛が見かけた町人風の男が何やら話込んでいました。
 
まず、町人風の男は、藤川の仙助といい、博奕などあらゆる手段を用いて強請りをかけながら世を渡る、無頼者でした。
 
一方、黒田の方は、素性がばれることを恐れて、「山口房五郎」と名乗っていました。楠屋へ黒田を紹介した人物は、大坂の心斎橋の北詰にある大旅館「津国屋庄兵衛」であり、黒田は、津国屋からある依頼を受けて、半月前に江戸で来ました。
 
津国屋と楠屋の関係は、数年前に楠屋の主人が上方見物にて津国屋に宿泊したのが縁となり、去年の春には、津国屋が江戸見物の際に楠屋を利用していました。
 
黒田は、津国屋の紹介で楠屋に滞留できたものの、その目的は、津国屋からある仕掛けの依頼を遂行するためでした。一方、仙助の方も、以前、津国屋の主人の厄介になっていたことがあり、あることで阿部家の下屋敷の探りに出ていたものの、そこの侍たちに怪しまれ、小兵衛が目撃した事件に発展しました。
 
黒田が江戸に来た理由は、津国屋の件だけでなく、かつての師・秋山小兵衛に会うことでした。しかし、江戸中を騒がせたあの一件は、仙助も知っていると思われ、そのことが明るみに出ることを恐れて、黒田はあえて山口という別人を装って、仙助と接触していました。
 
その後、楠屋から仙助が出てくる様子を、茶店井筒から、文蔵の下っ引が見届けるも、まさか黒田の元を訪ねてきたとは思わず、そのまま見過ごしていました。
 
それから間もなく、鐘ヶ淵では、小兵衛・弥七・文蔵が、傘徳から阿部下屋敷に関する報告を聞かされます。
 
阿部家下屋敷では、1日おきに賭博場が開かれ、巣鴨の藤兵衛が牛耳り、阿部家の上位の家来が彼とくっつき、20年にわたっていかさまをして大金を巻き上げていること、巣鴨の藤兵衛はすでに70歳を越え、現在は右腕の貝野の太平次に任せているとのこと。
 
巣鴨の藤兵衛は、王子権現の門前町から巣鴨・駒込にかかる盛り場を仕切る香具師の元締で、物売りから見世物興行にいたるまで、あらゆる利権を一手に掴み、配下は200名を超えるとも言われています。
 
傘徳は、その夜から茶店・井筒に泊まり込みながら、黒田の見張に入り、翌朝五ツ(午前8時)に、楠屋から仙助の家に移動する黒田の後を、傘徳と井筒の亭主・寅吉が尾行し、二刻後、寅吉は北大門の文蔵の元へ知らせを入れます。
 
黒田は、深川・黒江町の万徳院の手前の切り込んだ突き当りに入っていき、それらを見届けた寅吉・文蔵は、湯島に居る小兵衛の元へ向かいます。
 
その後、小兵衛一行は、馴染の蕎麦屋「翁蕎麦」の二階の一間を借り切り、黒江町の例の家の見張りに入ります。
 
その日は、下女と思われる人物が買い出しに出てきたのみでしたが、翌日の昼近くには、藤川の仙助と思われる人物が出てきて、弥七と傘徳が尾行に入ります。
 
小兵衛は、大治郎宛に2,3日、鐘ヶ淵に帰らないけど心配しないようにと、手紙をしたため、翁蕎麦屋の小僧に使いを頼みます。
 
あらすじ3)
翌々日の暮れ六ツ(午後6時)
 
根岸では、足袋問屋の主人・丸屋勘蔵が妾宅から浅草福井町三丁目にある本宅に帰る所でした。
 
妾宅には、丸屋の元奥女中で、妾となったおしまと6歳になる娘が住んでおり、勘蔵が帰る時間帯を見計らって、浅草から町駕籠が来ました。
 
丸屋の妾宅は、和泉屋吉右衛門の根岸の寮より奥まったところ、金杉新田の外れにあり、手代1人に付き添われながら、勘蔵を乗せた駕籠は、人気のない竹林に入り込みます。
 
その時、曲者が手代に当て身を食らわせ、刀を引き抜きます。
 
曲者は、着流しに絹の覆面を身に着けており、駕籠かきがその場を去り、勘蔵が外に顔を出した瞬間、刀が振り上げられます。
 
その瞬間、どこから脇差しが飛んできて、曲者の左肘を斬りつけます。
 
脇差の主は小兵衛であり、曲者の正体は仕掛けを頼まれた黒田精太郎でした。
 
安全な場所へ逃がされた丸屋勘蔵は弥七に救助され、藤川の仙助は、文蔵・傘徳が相手をしていました。
 
思わぬところで師匠と再会した黒田は動揺するも、何かを想ったのか、小兵衛と対峙する決意を固めます。
 
同時に小兵衛も、弟子の道を誤らせてしまった責任から、黒田を討つ覚悟を決め、藤原国助二尺三寸一分の鯉口を斬り、黒田を成敗します。
 
死の間際、覆面を剥がされた黒田の表情は、これまでの思いつめていた表情から穏やかになり、小兵衛に看取られながら最期の時を迎えました。
 
あらすじ4)
町奉行所の取調を受けた藤川の仙助によると、丸屋勘蔵の暗殺は、大坂の大旅宿・津国屋庄兵衛からの依頼だったことが判明します。
 
津国屋は、大坂の町奉行所が一目置く悪と言われており、丸屋勘蔵の暗殺を持ちかけた人物は江戸のものと言われています。
 
丸屋内では、良き主人として振舞う勘蔵でしたが、商売上での評判はあまり良くないそうで、人の恨みを買っていた節があったとも噂されています。
 
一方、黒田が江戸に来た理由は、津国屋の依頼に加えて、阿部下屋敷の賭博場を牛耳る貝野の太平次の斬殺もありました。
 
仙助の話によると、黒田は過去に太平次から大金を巻き上げられたことがあり、そのお金は当時の黒田にとって血のにじむような大金だったとのこと。
 
そのお金は、おそらく町医者・菅井九甫宅から奪ったもので、その目的は女ではなかったとも言われています。
 
しかし、黒田精太郎が死んでしまった以上、事の真相は闇に葬られ、小兵衛は、黒田の胸の内に気付いてやれなかったことを後悔していました。
 
その頃、阿部家では、評定所から厳しい警告を受け、巣鴨の藤兵衛に関与する者、奥用人・家来4名に切腹の命令が下されました。
 
彼らは、藤兵衛の博奕場として下屋敷を提供していたのみならず、私腹を肥やしており、奥用人の佐々木某に至っては、400両の大金を受け取っていたそうな。
 
また、事件の発端となった大坂の津国屋の件も、幕府から大坂の町奉行所へ知らせが入るも、いつの間にか、その件はうやむやにされてしまいました。
 
そして、小兵衛によって一命を取り留めた丸屋の主人・勘蔵は、翌年の春、深川の料亭の宴席で不可解な死を遂げます。死因は、吸い物に混入された毒薬と判明するも、犯人は分からずじまいでした。
 
-剣の師弟・終-
 

剣客商売・剣の師弟の登場人物

黒田精太郎:秋山小兵衛のかつての門人。出自は、百石取りの御家人・黒田三右衛門の次男。かつて  
        は、植村友之助と並ぶ、四谷道場の後継者にと目をかけられるも、ある事件をきっかけに江
        戸から逃亡。以降は、山口房五郎の偽名を名乗り、大坂・津国屋の依頼を受け、十数年
        ぶりに江戸に上がり、小兵衛の手で討たれた。
 
菅井九甫:神田・紺屋町二丁目に住む町医者で、妻と医生と共に黒田に斬殺された。生前は、高利貸し
           も行なっており、黒田が菅井夫妻を襲った要因は、高利貸を巡る問題とみられるも、現
           場には黒田の証文はなく、真相は不明。
 
井筒の寅吉:本郷春木町にある高級旅宿・楠屋の向かいにある麟祥寺門前の茶店の亭主。北大門の文
        蔵と通じており、彼の捜索を手伝う。
 
黒田三右衛門:幕府の御家人で、普請方の下奉行や畳奉行を務める。誠実な働きぶりから、上司からの
          評判も良く、次男の一件は、これまでの働きぶりを考慮され、お取り潰しで済む。事件発
          覚後、間もなく病死し、長男・平内は消息不明となる。
 
藤川の仙助:黒田(山口)を先生と呼ぶ江戸の無頼者。阿部下屋敷の侍2人を相手に、小刀で対峙する
        など刃物騒ぎに手馴れている模様。かつて、大坂・津国屋の厄介になったことがあり、それ
        が縁で、黒田の世話を担う。
 
阿部壱岐守直道:七千石の大身旗本。染井村に下屋敷が巣鴨の藤兵衛の博奕場にされていることに気
            が付かなかった。評定所から厳しい警告を受けてようやく下屋敷の一件を知り、佐々
            木用人を始めとする家来衆に、切腹を命じた。
 
巣鴨の藤兵衛:20年にわたり、阿部下屋敷の博奕場を牛耳る香具師の元締で、高齢となった現在は、右
          腕の貝野の太平次に博奕場の切り盛りを任せている。
 
貝野の太平次:巣鴨の藤兵衛の右腕で、阿部家の博奕を取り仕切る。博奕場では、いかさまを使って、
          出入りする者から大金を巻き上げており、その件を黒田に恨まれ、後に斬殺された。
 
丸屋勘蔵:浅草福井町三丁目の足袋問屋の主人。根岸の寮に、妾おしまを囲っており、彼女の存在は
       本宅でも認められている。ある人物の依頼から、黒田に命を狙われるも、小兵衛によって救助
       される。しかし、翌年春には、商売上の恨みを持つ人物の手で毒殺された。
 

剣客商売・剣の師弟の読みどころ

老剣客・平内太兵衛の再登場
長さ六尺の大剣を操る剣士・平内太兵衛は、4巻「約束金二十両」で登場した雲弘流の遣い手です。
 
ある少女との約束で金二十両を用意するべく、雲弘流の居合による立ち合いを披露しました。当初は、聞きなれない流派と、通常ではあり得ないような大剣に大治郎・三冬は、太刀打ちできなかった一方で、小兵衛だけが、太兵衛の雲弘流の立ち合いを見抜きました。
 
その後は、小兵衛の計らいによって太兵衛は約束金二十両を用意することができ、彼と約束を交わし少女・おもよは、その資金を元に染井稲荷の茶店の権利を買い取りました。
 
おもよは、小女を雇いながら茶店を切り盛りする傍ら、時折、太兵衛の身の回りの世話をしに来ていました。
 
その日は、おもよからお酒が届けられており、小兵衛の来訪を喜ぶ太兵衛は、2人で酒を酌み交わしたり、庭にむしろを引き、そこへ2人で横になりながら、初夏の日差しと共に昼寝をするなど、平穏なひとときは、立て続けに起きる物騒な事件に疲弊する小兵衛にとって至福の時間だったでしょう。
 
弟子に恵まれない小兵衛
秋山小兵衛の弟子は、これまでにも何度か登場していましたが、弥七を除いて他の剣士たちは、お世辞にも小兵衛の門人とは言い難い者ばかりで、毎回のように師匠の手を煩わせています。
 
しかし、四谷道場の門人には、後継者として小兵衛が目をかけていた者もいましたが、その1人、植村友之助は、激しい稽古が命取りとなり、剣の道を断念せざるを得なくなりました。
 
一方、黒田精太郎は、剣の筋が良いだけでなく、大治郎が大原の辻平右衛門先生の元へ旅立ってからの小兵衛の身の回りの世話を担っており、小兵衛の黒田への可愛がりは、古参の門人たちが嫉妬を覚えるほどでした。
 
自分では分かっているつもりでも、あの凄惨な事件が起きるまで愛弟子のことを何一つ分かってあげらなかった不器用さは、今の小兵衛では考えられない光景だったでしょう。
 
また、弟子に恵まれなかった点で言えば、三冬の剣術の師匠・井関忠八郎もその例であり、血生臭い事件を経て、道場は解散を余儀なくされました。(1巻「井関道場・四天王」を参照)
 
小兵衛や井関忠八郎とは対照的に、弟子に恵まれた剣客も少なからずおり、辻平右衛門先生や、小兵衛の弟弟子・金子孫十郎信任、そして、秋山大治郎も忘れてはいけません。
 
大治郎道場は、規模こそ小さいものの、飯田粂太郎・笹野新五郎・杉本又太郎と、優秀な門人に恵まれており、父・小兵衛を超える道場になる日も遠くはないでしょうか。
 
黒田精太郎の最期の願い
数十年前、江戸中を震撼させた菅井夫妻の斬殺事件の動機は、噂では女のために大金が必要だったと言われましたが、真相は闇に葬られました。
 
これは、管理人独自の考えですが、黒田が大金を求めた理由は、遊郭などに売られたある女性を身受けするためだったと思われます。
 
黒田の事件の真相はここまでとして、本題に入りましょう。
 
小兵衛と再会してから息を引き取るまでの黒田の動きに着目すると、門人時代には一番にかわいがってくれた小兵衛の期待を裏切るような結果を招いたことに対する罪悪感があったと見られます。
 
そのため、津国屋の用件とは別に、小兵衛に会いたいと思い立ったのは、かつての師匠に討たれることで、自分が犯した罪を償おうと考えており、それらは黒田精太郎の最期の願いだったでしょう。
 
黒田の願いは、丸屋勘蔵の襲撃で運よく果たされることになり、小兵衛の手で討たれ、師匠に看取られながら息を引き取ります。
 
しかし、剣術の道を誤った自分の死を悲しみ、声を上げて泣いた師匠の姿は、黒田にとっても想定外の結末となりました。
 

剣客商売~剣の師弟~まとめ

かつて自分の後継者にと目をかけていた弟子を自分の手で討つことになった苦悩や、自分のいたらなさが、道を誤らせる結果を招いてしまったと、黒田精太郎との一件は、小兵衛にとって暗い影を落としていったでしょう。
 
さて、次回の剣客商売をたしなむは、我が子の誕生が間近くに迫った大治郎と、彼との試合で任官がかかるある剣客との戦い、秋山家の新たな家族の誕生を描いた「勝負」を紹介します。
 
本日も最後まで読んでいただき、ありがとうございましたほっこり