池波正太郎の「剣客商売」をたしなむ~特別長編・春の嵐 その7~ | 池波正太郎・三大シリーズをたしなむ

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小説家・池波正太郎の代表作「剣客商売」「鬼平犯科帳」「仕掛人・藤枝梅安」(三大シリーズ)の原作の解説や見どころを紹介しています。
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池波正太郎の「剣客商売」をたしなむ

~特別長編・春の嵐 その7~

 
みなさん、こんにちは。管理人の佐藤有です。
さて、これまで6回にわたり紹介してきた、特別長編・春の嵐も結末に突入しました。謎多き頭巾の侍・戸羽平九郎がもたらした秋山家への試練や真の黒幕、平九郎を討つべく動き出したそれぞれの活躍と、決着まで、怒涛の展開に目が離せません。
 

剣客商売・特別長編 春の嵐のこれまでのあらすじ

天明元年の師走から、江戸では「秋山大治郎」を騙る頭巾の曲者による斬殺事件が相次いで起きました。当初は辻斬りの仕業と思われていたこの事件は、時の老中・田沼意次や、松平越中守定信にも影響し、双方の家来衆にも被害が及びます。
 
事件は評定所で扱われることとなり、秋山大治郎は事件の度に評定所へ出頭し、取調を受けます。同時に、大治郎が田沼老中の娘婿であることから、秋山家は被害を被った越中守からも目を付けられてしまいます。
 
しかし、評定所での綿密な取り調べや、弥七・傘屋の徳次郎(傘徳)の懸命な捜索により、一連の事件の犯人が戸羽平九郎と判明し、御三卿・一橋家と繋がっていることが判明します。
 
頭巾の曲者こと戸羽平九郎と一橋家の関係や、田沼・松平家を窮地に陥れる目的は何か、一橋家の監視が目を光らせる中、小兵衛は田沼老中との密談を経て、全ての事件を終わらせるべく、戸羽平九郎に勝負を挑みます。
 
以下からは、春の嵐 最終章「老の鶯」のあらすじネタバレです。
 

剣客商売・春の嵐のあらすじネタバレ⑦

あらすじ1)
小兵衛が島田町の又六の裏長屋にいる頃、人気のなくなった鐘ヶ淵の隠宅では、何者かが周囲をうろついていました。
 
その人影は、亀島橋の御用聞き・彦太郎手先・松吉であり、彼らの縄張りは、松平越中守上屋敷のすぐ近くでした。
 
しばらく様子を見ていた弥七は、隠宅の見張を手先に任せた彦太郎の尾行、松平上屋敷から出てきた家来・2人と合流した彦太郎は、南天馬町三丁目の蕎麦屋「山田屋」の二階座敷に上がるまでを見届けて、又六の裏長屋に向かいました。
 
彦太郎と合流した侍・2人の正体について、小兵衛はいつか三冬と共に撃退した家来衆と推測し、橋場での醜態が小兵衛から広まるのを恐れた口封じと思われます。松平家からの報復は小兵衛の想定の範囲内であり、おはると身重の三冬を関屋村へ避難させていました。
 
夜に入り、小兵衛・弥七は、浅草田圃にある一橋控え屋敷で見張る傘徳と合流し、表門の見張に入ります。
 
小兵衛の心境は、戸羽平九郎を倒す決意と、相手は相当な遣い手と見抜いて自分が負けるかもしれないと、複雑な感情を秘めていました。
 
一連の事件を通じて、平九郎は単なる殺人鬼ではなく、真剣を用いた戦いの駆け引きにたけていると見抜き、できれば人目のつかないところで勝負をしたいものの、まずは平九郎の姿を捉えることが先決でした。
 
その時、表門が開き、内部から立派な身なりをした、一橋家の家来と思われる侍が出てきます。みるからにたくましい体つきのその侍も相当な遣い手と見え、さっそく傘徳が尾行に入ります。
 
傘徳とは、浅草・駒形堂裏にある元長で待ち合わせをし、見張を切り上げた小兵衛・弥七は、一足早く元長へ向かいます。
 
犯人が平九郎と判明するも、小兵衛には、何故、彼が江戸を離れることになったのか、自分たちを殺そうとする目的が分からずじまいでした。
 
あらすじ2)
傘徳が元長に来たのは、夜がふけてからのことで、尾行に入った侍は、道の途中で酒を買い求め、中ノ郷・法恩寺のそば、横川の土手を背にしたわらぶき屋根の剣術道場に入っていったとのこと。
 
この道場は、安永7年(1778年)の秋に、秋山父子が中ノ郷の道場にたむろする無頼者たちの挑戦を受け、10余名を切り倒した場所でした。
 
事件後、道場は空き家となっていましたが、一年半ほど前に、一刀流・佐田国蔵が借り受け、門人14、5名に稽古を付けていました。
 
そこで、翌朝、小兵衛は中ノ郷の道場に向かうと、四谷道場時代の門人・原田勘介と再会します。原田とは、短い付き合いでしたが、稽古熱心な姿を好ましく思っており、小兵衛は道場の敷地内に入ることなく、法恩寺の門前にある料理屋「菱屋」に入ります。
 
一方、傘徳は元長で待機し、鐘ヶ淵の様子を見に向かった弥七は、隠宅の台所から何者かが侵入した痕跡を発見します。
 
部屋は荒らされた形跡がないため物盗りによる仕業ではなかったものの、部屋の至るところに犯人の足跡が残されていました。
 
その頃、菱屋にいる小兵衛は、原田に連れられてきた佐田国蔵と対面します。以前から小兵衛の噂を聞いていた佐田は、小兵衛との対面を喜びます。
 
4年前に起きた道場の事件についても、佐田は聞かされていたものの、何やら血生臭い事件とのみ聞かされ、秋山親子による仕業であることを知らない模様でした。
 
小兵衛は、一連の事件を隠しながら、佐田の道場の門人に一橋家の家来衆が通っていないか、それとなく聞き出します。
 
佐田や原田は、すぐさま門崎敬之助の名を上げ、昨晩も酒をもって佐田と晩酌を楽しんだことを打ち明けます。同時に、その晩は、戸羽平九郎も来ていたものの、門崎は、気味悪いとの理由から平九郎と関わる事を嫌がっていました。
 
一方、平九郎の方は、門崎を気に入っており、控屋敷に滞留中は、囲碁や酒の相手をさせていましたが今夜からは寺嶋村の料理茶屋「大むら」へ滞留することとなり、門崎も気が晴れたとのこと。
 
大むら屋は、鐘ヶ淵の隠宅からも近く、風雅な茶屋から大身旗本はもちろん、大名もおしのびで通う知る人ぞ知るお店でした。
 
その後、駒形の元長に戻った小兵衛は、二階で弥七から鐘ヶ淵の件を聞かされ、夕暮れには傘徳が戻ってきて、弥七・傘徳は、寺嶋村の大むら屋へ下見に向かいます。
 
また、小兵衛たちに二階座敷を貸し出す元長の亭主夫婦は、事情を聞かされていないだけに、3人の動向を不思議に思います。
 
翌朝。朝日が昇りきらないうちに小兵衛と弥七はある場所に向かい始め、傘徳は橋場の大治郎の元へ連絡を入れ、再び元長に戻り待機します。
 
昨夜、大むら屋の下見に訪れた弥七・傘徳は、庭の奥の離れ屋に滞留する戸羽平九郎の居場所をつきとめていました。迂回して畑道から竹藪を抜け、大むらの奥庭に忍び込み、もっとも奥まった場所にある離れに滞留する平九郎は、障子の戸を開けたまま、頭巾を脱いで酒を楽しんでおり、その様子は、以前から通いつめているなじみの客のように見えました。
 
そして、翌朝の七ツ(午前4時)。小兵衛・弥七が大川橋を東へ歩く頃、大むら屋の離れから着流しに大小を帯した平九郎が現れます。頭巾はしておらず、庭の西側から垣根を越えてどこかに去っていき、しばらくしてから、小兵衛一行が到着します。
 
日が昇り始めて、大むら屋の母屋では人が起き始める中、小兵衛は粟田口国綱の鯉口を切りながら、平九郎がいると思われる離れに近づき、様子を見守る弥七には、脂汗が噴出していました。
 
小兵衛が離れの戸を開けたことで、いよいよ平九郎との戦いが始まると思いきや、小兵衛は静かに戻りはじめます。どうやら離れの戸はすでに開け放たれており、弥七の場所からは小兵衛が開けたかのうに見えていました。
 
また、昨日の出来事から平九郎は再び訪れると察し、2人は急きょ、鐘ヶ淵に向かいます。
 
しかし、鐘ヶ淵にはすでに平九郎が到着しており、打ち破った戸が締め直されたことから、隠宅に人がいるとみて襲撃を試みるも、今日も内部は無人であり、平九郎は予定を替えて橋場の大治郎道場を目指します。
 
その頃、小兵衛一行は、寺嶋新田の道を斜めに突っ切り、法泉寺の横道から大川橋の堤の道へ近道をします。ほんの少し前、平九郎が法泉寺門前を過ぎており、もし、小兵衛が近道を思いつかなければ、両者はすれ違うことはなかったでしょう。
 
鐘ヶ淵では、前回と同様に隠宅の戸が蹴破られ、内部には足跡が残されていました。足跡は、つい先ほど付けられたものであり、昨日の足跡は、様子を見に来た弥七によって取り除かれ、戸も直されました。
 
朝日が昇り始めると同時に、鳥のさえずりも聞こえ始めた頃、平九郎の襲撃を今夜とみた小兵衛は、ひとまず元長に戻り始めます。
 
あらすじ3)
大治郎道場に向かっていた平九郎は、浅草寺の境内にいました。今日も、鐘ヶ淵に小兵衛がいなかったことから、すっかり殺意が失せてしまった平九郎は、橋場に向かうことをやめ、浅草の広小路から田原町をいき、上野山下を目指し、途中で酒を飲みながら、約1刻後に団子坂に出ました。
 
その頃、団子坂では豆腐売りの声が聞こえ、杉本又太郎道場から芳次郎が現れ、豆腐を買い求めていました。
 
すると、そこへ平九郎もさしかかり、坂をのぼり本郷通りに向かう侍を見た芳次郎は、すぐさま福田屋のお松を巡る恋敵と見ます。
 
芳次郎は、豆腐の代金と心づけを渡すと、道場へ豆腐を渡すように指示し、そのまま平九郎の尾行に入ります。
 
団子坂を登りきり、本郷通りに出た平九郎は、祖父・戸羽休庵の墓がある肴町の福厳寺に立ち寄り、午後まで滞在します。
 
その後、千駄木の坂を下り、根津の岡場所・福田屋に入ったところまでを見届けた芳次郎は、すぐさま道場に戻り、又太郎に報告します。
 
一方、道場では、杉本夫妻が交替で芳次郎の行方を捜しまわっていましたが、平九郎の居場所を突き止めたことで、次の行動に出ます。
 
岩森の監視を任されていた杉原秀は、小兵衛へ報告に向かい、芳次郎は福田屋へ、又太郎は芳次郎との連絡のため道場に待機し、その妻・小枝も万が一に備えて身支度を整え始めます。
 
小兵衛と弥七は、浅草・駒形堂裏の元長へ到着し、その様子を亀島橋の彦太郎と手先・吉松に目撃されます。
 
小兵衛の動向を探る彦太郎は、元長の見張を吉松に指示し、自身は松平越中守定信の屋敷へ報告に向かいます。
 
駕籠を使って鐘ヶ淵に向かっていたお秀は、隠宅に小兵衛がいないと知ると、法泉寺まで駕籠を使い、堤を下りた先にある渡し舟でむかった先は、橋場の道場で、大治郎から小兵衛の居場所を聞き取ったお秀は、今戸から山之宿に伸びる大川に沿って走り去り、駒形を目指します。
 
そして、お秀が元長に到着した直後、彦太郎と松平家の家来衆・10人が浅草・御米蔵通りを駒形へ進んでいました。
 
外では雨が降り始め、お秀から報告を受けた弥七・傘徳は外出した直後に、松平家の一行が到着しました。
 
一方、元長では小兵衛が身支度を整えており、長次は駕籠を頼みに一旦は外に出るも、刀を抜いた侍集団に驚愕し、すぐさま引き返します。
 
雨音が鳴り、駒形堂には人気がなく、長次と入れ替わるように外に出た小兵衛は、性懲りなく刃を向ける家来衆を一喝します。
 
松平家の家来衆は全部で10名で、そのうち6人は、前回、小兵衛・三冬に懲らしめられた者たちでした。
 
一刻を争う事態から駒形の方は、お秀に任せることとし、根津を目指す小兵衛は去り際に家来の2・3人を斬りつけていきます。また、お秀も根岸流手裏剣の蹄を武器に応戦、的確な飛ぶ道具の襲撃に家来衆は、苦戦を強いられます。
 
雨は半刻ほどでやみ、根津の福田屋へ町駕籠が待機していました。
 
頼んだ客人は、戸羽平九郎で、当初は福田屋に泊まる予定でしたが、雨がやんだことで急きょ、帰ることにしました。
 
福田屋の筋向いの蕎麦屋「枡屋」の二階座敷では、傘屋の徳次郎と、不二屋の芳次郎が見張につき、芳次郎は総門を出る駕籠の尾行に入り、傘徳は弥七へつなぎをつけに行きます。
 
町駕籠は、宮永町から鉤の手の道を曲がり、七軒町を経由して不忍池のほとりへ出ます。
 
町屋に灯りが入った頃、町駕籠は人影が絶えた場所にさしかかり、稲妻の光と同時に、粟田口国綱を抜きはらった小兵衛が立ちふさがります。
 
小兵衛は、駕籠かき2人をその場から離れさせ、弥七・傘徳の誘導のもと、池のほとりの柳の木陰に待機させられます。
 
そして、雷鳴と同時に戸羽平九郎が姿を現し、叩きつける雨の中、刀を嚙合わせる音と火花を散らしながら、2人の戦いが勃発します。
 
すると、稲妻の光と共に、平九郎の背後から芳次郎の短刀が襲いかかるも、すぐさま身を躱します。しかし、芳次郎の短刀を躱したことで小兵衛に隙を与えてしまい、平九郎は頸筋の急所を斬られ、絶命しました。
 
あらすじ4)
雨は翌朝も続き、六ツ半(午前7時)、浅草田圃にある一橋控屋敷に荷物をのせた荷台が止まります。笠と雨合羽を羽織った3人の正体は、小兵衛・弥七・傘徳であり、故人の遺言で遺体を屋敷に届けに来たと伝えます。
 
門番が知らせに行った隙に3人はその場を離れ、家来衆・5人が駆けつけた時には誰も居ませんでした。
 
そして、座棺の中には、変わり果てた戸羽平九郎が納められており、凄腕の剣術遣いの死に呆然と立ちくすみ、その様子を雑木林に身を潜める弥七・傘徳が目撃します。
 
その後、屋敷から出てきた家来の尾行に出た傘徳は、神田・駿河台に屋敷を構える四千石の旗本・浅野帯刀へ一橋家の家来が入っていき、後に浅野が駕籠を使って浅草の控屋敷に入ったのを見届けます。
 
後日。小兵衛を屋敷に招いた田沼老中は、一連の事件について、野心家の一橋治済が自分に恨みを持つ田沼・松平越中守を失脚させるために起こした結果だと見ており、腐敗の一途をたどる幕藩体制に危機感を募らせていました。
 
季節は、桜から新緑の燃えるころに移り変わり、どこかで老いの鶯が鳴いていました。
 
-特別長編 春の嵐 終-
 

剣客商売・春の嵐の登場人物

原田勘介:小兵衛が鐘ヶ淵に隠棲する1年前に入門した三十俵二人扶持の御家人。手筋は悪かったが、
       稽古熱心な一面が小兵衛に気に入られていた。本編では、佐田道場前で、11年ぶりの再会を
       果たす。
 
佐田国蔵:中ノ郷・横山町に道場を構える一刀流の遣い手。出自は、信州の郷士で、修行のために江戸
       に上京。1年前に現在の道場を借り受けており、以前、血生臭い事件があったことは聞かされ
       ていたものの、小兵衛が関与していたことは知らない(詳しくは、2巻「辻斬り」を参照)
 
浅野帯刀:戸羽平九郎と一橋家のつなぎをしていた四千石の大身旗本。屋敷は、神田・駿河台にあり、
       平九郎の死の報告を受け、急きょ、一橋控屋敷に向かう。
 

剣客商売・春の嵐の読どころ

小兵衛が死を覚悟した一戦
これまでにも、小兵衛が死を覚悟した戦いは何度かありましたが、今回は、犯人の特定すら難しいという難航を極めた一戦となりました。
 
いわゆる殺人鬼とも言い切れない、不気味な雰囲気を漂わせる戸羽平九郎と、事件を闇に葬るべく人目のないところで、ひっそりと倒したい小兵衛の覚悟と緊張が、稲妻を通じて伝わります。
 
主謀者・一橋治済の目的
「春の嵐」で起きた事件は、田沼意次・松平定信を失脚させるべく仕組まれた、一橋治済の陰謀と判明しました。
 
今回の事件について田沼は、自分を失脚させることで、松平定信へ中央政権を任せようとしたのではと推測します。しかし、松平の幕政への参入は、彼の有能さを見込んだわけでなく、田沼より屈服させることはたやすいと判断したためです。
 
また、世間でも知れ渡っている松平定信の気性の激しさは、一橋治済にとっていくらでも隙を見いだせることができ、時がきたら幕政から引きずり下ろし、自分が将軍の実父として陰から幕府を動かしていこうと目論んでいました。
 
そのため、様々な事情で敵対関係となった田沼・松平は、一橋治済にとってやっかいな存在であり、彼らが幕政に関与する限り、例え息子が将軍に就任できても、その威光をもって幕府内で自由にふるまえないことが、不満の種となり、今回の事件に発展したでしょう。
 
菓子屋の次男坊・芳次郎の活躍
戸羽平九郎の討伐の成功の影には、杉本道場に住み込み中の不二屋の芳次郎の活躍がありました。
 
序盤こそ、岡場所の娼妓に振られたことが原因で死を思い立った芳次郎でしたが、又太郎の道場での生活や、話が進むつれて逞しさを見せるようになります。
 
そして、「老の鶯」では、江戸を発つ直前だった戸羽平九郎の居所を突き止め、事件解決に貢献しました。
 
不二屋では、妾の子として周囲から蔑まれてきた芳次郎でしたが、又太郎との出会いは、芳次郎の新たな能力を見いだすきっかけとなり、「春の嵐」は、芳次郎の成長も描いた物語と言えるでしょう。
 
松平定信と南湖公園
「剣客商売」では、秋山家との対立関係から悪役感が強調されている松平定信ですが、白河藩では名君や楽翁として親しまれ、日本最古の公園・南湖公園の造園は広く知られています。
 
1924年(大正13年)に、国の史跡・名勝に指定された南湖公園は、「士民共楽」という思想のもと作られ、庶民も楽しめる開放型庭園として、現在の福島県白河市に作られました。
 
自然の地形を生かした珍しい趣向が施された南湖公園は、季節の花々や、湖を悠々と及ぶ鳥やボート遊びはもちろん、東の関山、西の那須山を背景に取り入れた景観が美しく、四季の移ろいを感じられる憩いの場所です。
 
また、南湖公園内は、松平定信を祭神とする南湖神社が鎮座しています。神社は、松平定信を尊敬する実業家・渋沢栄一の支援により1922年に創建されました。神社の前には松平定信(楽翁)像が建てられており、神社の目印となっています。
 
名物は、南湖だんごで、味付けは小豆あんとみたらしが基本ですが、近年では黒蜜きなこやずんだみその味付けを提供するお店も増えています。また、南湖神社近くに位置する翠楽苑・松楽亭では、抹茶と和菓子をお供に、日本庭園を楽しめます。
 
ちなみに市内在住の管理人のおすすめのお店は、食事処「湖畔亭」です。南湖公園に立ち寄ると言えば、大半は湖畔亭での食事がメインであり、市の名物・白河ラーメンはもちろん、お蕎麦や丼ものなど、メニューの豊富さがうれしいお店です。湖畔亭では、季節限定でそば団子も提供しており、食後のデザートにおすすめです。
 
南湖公園の行き方は、JR新白河駅・白河駅から福島交通・白河循環線を利用して、南湖公園バス停で下車します。また、公園内には専用駐車場も設けられています。
 
*南湖公園には、デートに訪れたカップルがその後別れるというジンクスがあるそうです。
 
また、南湖公園の最寄り駅である白河駅の北側は、城山公園として整備されており、松平定信ゆかりの白河小峰城が復元されています。
 
地元では小峰城と呼ばれており、東日本大震災時には、石垣の大半が崩壊する甚大な被害を受けましたが、2019年に石垣修復の完了が宣言されました。
 
小峰城は、映画「武士の一分」のロケ地にも使用され、天守閣に通じる御門前は、おすすめの撮影スポットです。
 

剣客商売を味わう

今回は、特別長編・春の嵐から、自宅でも作れる料理・2品と、それらの登場回を紹介します。
 
1品目 秋山家のごちそう(出典:「除夜の客」より)
 
材料
鶏肉、ねぎ、だしの素、こんぶ、薄口しょうゆ
 
作り方
①鍋に水をはり、昆布を入れて火にかける
 
②鶏肉は一口サイズの削ぎきりに、ネギは斜め薄切りにする
 
③鍋が沸騰してきたら、だしの素、薄口醤油で味付けをし、②の材料を入れて火が通るまで煮込んだら完成。
 
*シメは、鍋に余った汁を、細きりにした大根と炊いたご飯にかけまわして食べるとおいしい。
 
劇中では、母親の快気祝いとして又六がもってきたカモ肉と、おはる特製のだし汁を煮立たせて、そこへカモ肉とネギを入れながら食べています。
 
鐘ヶ淵での団らんを楽しんでいたその日の夜は、戸羽平九郎による事件のはじまりであり、秋山家の試練を知らせる一品でしょう。
 
2品目 おかかのおにぎり(出典:「老の鶯」より)
 
材料
かつおぶし、しょう油、白米、のり、
 
作り方
かつおぶしにしょう油をまぶし、白米で包み込みながら握り、のりをからめて完成
 
*おにぎりを握る前に、白米に白ごまをふりかると、風味が出て美味しいです。
 
 
朝から夕暮れにかけて一橋控屋敷の見張をしていた傘徳は、朝餉を済ませてから、何も口に入れておらず、小兵衛から差し出されたおにぎりのおいしさに、つい気が抜けてしまいました。
 
傘徳が食べたおにぎりは、又六の老母がこしらえたもので、お供には、濃く淹れたものへ塩をひとつまみ加えた熱い緑茶が良いでしょう。
 

剣客商売~特別長編・春の嵐~まとめ

シリーズ初となった特別長編ということで、ブログの方もこれまでとは異なる手法で書かせていただきました。
 
長編ものと言えば、なかなか物語が進展せず、作品によっては退屈さを覚えるものもあるでしょうが、全7回にわたって紹介してきた「剣客商売10巻 春の嵐」は、ほどよい展開の早さや読者の興味を掻き立てる仕掛けの数々で、夢中になれる1冊です。
 
さて、次回からの剣客商売をたしなむは、再び短編もので構成された「11巻 勝負」に突入します。11巻では、我が子の誕生が間近に迫った大治郎の剣客としての決断が迫る「勝負」や、初孫の名前を巡り、小兵衛の以外な一面が描かれた「初孫命名」など計7編が収録されています。
 
秋山家に新しい家族が誕生したことを機に、久々の「剣客商売のおさらい企画」も考えており、過去の投稿で予告した「剣客商売の父と子」や、劇中に登場する料理屋などを紹介できればなと考えています。
 
さて、本日も長くなりましたが、最後まで読んでいただき、ありがとうございましたほっこり