ひずみポップス | スガ シカオという生き方 ~history of his way~

スガ シカオという生き方 ~history of his way~

1997年デビュー、2011年フリーランスとなった音楽侍スガシカオさんの記録。
本名:菅 止戈男。戈(ほこ)を止める=争いを止めることが「武」の本義であるという孔子の著から取られた名前に込められた思い、それに恥じない生き方の足跡。

音も詞も気持ち悪くなるぐらいの「生々しさ」と「ひずみ」と「不条理」と「閉塞感」を抱えているのにここまで「ポップミュージック」として見事に成立してしまうとは、プリンス以来の快挙ではないか。
スガシカオの新作「TIME」は人畜無害病に冒された今のシーンで間違いなく「浮く」だろうが、それこそが「TIME」の新しくて格好いい証しなのである。



2004年 ORICON STYLE №45-1271
(アルバム「TIME」発売時インタビュー)

―ただでさえ「日本人に馴染みにくいファンクを、しかも新しいポップスとして届けるか」をテーマに掲げてたんですが、今回はまさにその方針に徹したようなアルバムに。

スガ「普通にやってるとそうなっちゃうんで。でもアルバム作ってる最中にちょっと怖くなってきてですね、“このまま俺は、メディアや音楽界から疎外されてしまうんじゃないか」と。それで凄いブレーキが途中でかかってしまい。自分でも聞いたことのないないものが出来上がってきちゃったんで、“このアルバム大丈夫かなー”“普通の人はついてこれんのかなー”みたいな心配が(笑)で、“こりゃいかん!”と思って、急きょ「JUNE」というポップな曲を作りました(笑)」




―自分でも止められなかったほどの今回の表現衝動は、どっから生まれたんですか?

スガ「なんかね、「SMILE」を作ってた時に今回の音の意識はあったんですよ。でも形にするのがいっぱいいっぱいで、新しいスタイルを作りあげるほどの余裕もなくて・・・。
でも、今回は調子も良くて本気でトライしてみようと思ってやり始めたら・・歌詞とともに空間が歪んでく感じというんですかねー。鳴ってる音全部が歌詞、みたいな。楽器だけじゃなくて、人間の声みたいなキャラクターを持ってる音が全体を作ってて・・・で浮遊感というかファジー感というか。「僕が今まで聞いてきたものの中にない!」ってもんが作りたかったから、まずは第一段階成功みたいな。」

―にしても、いまだかつて聞いたことがない音楽だと思うよ、つくづく。

スガ「僕はこのアルバムは、「こんなもの聴いたことがない」という評価が得られれば、ほかに何もいらない。
他の日本の音楽とあまりに違うからさー。その自覚はあるの、ちゃんと。類似のジャンルも無いし、類似の傾向持った人すらいないからさ・・・そこ負い目感じてるんですよ。作ってる時は感じないんですけど、でもリリースするときに、たとえばこのoricon Style パラパラめくっても、「僕、ここに載ってもいいんですか?」って本当に思うわけ。(笑)」

―「オンリーワン」を成し遂げた」優越感とか、フロンティアスピリットの成果とか誇れません?

スガ「その評価を頂いただけでも僕はこのアルバムを出した意味があります!手ごたえは凄いあります。でもまぁ・・手ごたえは凄いけど・・・人に受け入れられる自信は全くない(笑)」